回廊まで歩いてきたのに、オビ=ワンとかれこれ30分も会話がない。
時間をくれと言うから割いたのに。
「サム」
回廊から静かなバルコニーに上がり、オビ=ワンはようやく口を開いた。
「すまなかった。」
「え、いきなり何?」
「アナキンに言われたんだ。ずっとジェダイとして生きた私と、聖堂を去ったお前とは価値観が違う、と。」
「………」
まぁ、アナキンの話なら聞いて当然だろう。パダワンだし、友人だった私より一緒にいる時間は長い。だからアナキンの話は聞くし、彼もオビ=ワンをよく知ってる。
「呼び戻すべきではなかったな。」
「は……?」
オビ=ワンの発言に、耳を疑った。考え方が変わったのは分かる。あのオビ=ワンが、私の意思を尊重してくれた。
でも、呼び戻すべきじゃなかった?
戻ると決めたのは、誰でもない、この私だ。
「ねぇ、決断したのは私なの。あんたが悔いることじゃない。私の決断を、あんたのせいにしないで。」
「………すまない。」
「また謝った。」
「すま……もう言わないぞ。」
笑ってやると、オビ=ワンはなぜか安心したような顔をする。
「何?」
「やっと心穏やかになったな。」
「そんなことはない。今後が不安すぎるよ。」
「今後?」
「店の経営。」
「あぁ……」
ヴォスから聞いていたのか、オビ=ワンは納得する。
戦争が始まったからには、いつもの営業は無理だ。やりにくくなるのは別として、売上が心配だ。多くは求めない。維持費と生活費になればいいだけ。
極端に売上が落ちたら、私は打ちのめされるだろう。
「友人として手を貸すと言ったのは私。だから授業はやる。でもこっちの仕事に報酬はない。」
「ジェダイだからな。」
「私ジェダイじゃないし。………。」
「サム、馬鹿なことは言うなよ。」
「何!?正当な権利でしょ!給料が欲しいって普通は思うからね!!」
それこそ、ジェダイ・オーダーはブラック企業だ。親会社が共和国だとすれば、ジェダイ・オーダーはお抱えの武装宗教集団だ。私がいた世界のお寺さんだって、お布施代とか、きちんとした報酬をもらってるのに。
「お二人共、仲直りしたってことですか?」
オビ=ワンと2人して声の主を見ると、アナキンがドアから顔を覗かせていた。
「喧嘩していたわけじゃない。」
「そうそう。ちょっとしたすれ違いだからね。」
「そうですか。解決して何よりです。」
「それでアナキン、何の用だ?」
「あぁ、マスターではなく、サマンサに用です。」
「私?」
アナキンに付いてくるように言われて、私は彼の後ろに従う。
私にしか解決できない問題だという。ジェダイの問題であり、ジェダイには無関係の問題でもあるという。
向かいながら、アナキンは私に説明をする。
「今日の授業で、喧嘩している子供はいませんでしたか?」
「あー、セオドアとマイクかな。」
「問題はその2人だけじゃない。カリもだ。もっと言えば、あの6人の問題です。」
訓練エリアの部屋の1つに着くと、子供達6人と、マスター・プロがいた。子供達はみんな正座していて、マスター・プロに怒られたようだ。私が部屋に入ると、セオドアとマイクは目を逸らす。
「え、何?どういうこと?」
「スカイウォーカー、マスター・ケノービとクリストフシスへ向かえ。」
「はい、マスター。」
アナキンはそう言って、さっさと言ってしまった。
「ホーガン、2人の喧嘩の話は聞いたか?」
「いいえ、私の管轄外なので。なぜですか?」
「喧嘩の原因はお前だ。」
「何ですって?」
私が状況を把握できずにいると、カリが口を開く。
「私、マスター・ホーガンのパダワンになりたいと思ったんです……」
「なんで!?」
「授業を受けると聞いて、公文書館でデータを見てたら、楽しそうだなって。」
「全然楽しくないよ………」
「そう言ったら、マイクがマスター・ホーガンはジェダイには戻ってないって。でも、セオドアは掟を除けば規定はないって言って、2人は喧嘩に、」
「ちょっと待って!!」
カリの説明にストップをかける。
なんで10年もオーダーにいなかったのに、私のパダワンになりたがるんだろう。尊敬すべきジェダイは他にたくさんいる。そもそも、私に師事するべきじゃない。
「あんた達、私はジェダイじゃないの。元ジェダイ。オーダーからは除籍されてる。」
「ホーガン」
「何ですか?」
「復帰に伴い、一応在籍扱いにされている。」
「すみませんよく聞こえなかったのでもう一回言ってもらえます?」
オーダーに在籍している!?
つまり、将来的にオーダー66の標的にリストアップされるわけで、死亡フラグが立ったわけだ。仮に生き延びても、データが残ってたら再編された帝国にも追われる。しかも、アナキンはもうパドメと結婚しているから、彼がダース・ヴェイダーになるのは確定している。
唯一の逃げ道は、オーダーの除籍。
それなのに、在籍扱いにされた?
「マスター・プロ、すぐに評議会で私を除籍してください。」
「そんなに嫌か?」
「嫌です。」
マスター・プロは溜め息を吐くと、了承してくれた。部屋を出て行って、私は子供達と向き直る。これは一から説明しないといけない。
「じゃあ、よく聞いてね。」
私は子供達に、1つずつ説明する。
まず、基本的に私は店がメイン。だからオーダーには戻らないと告げた。次に、戦場には出ないということ。店をやっているからには、どっちの戦力にもならないつもりだからだ。
最後に、ジェダイに戻らない最大の理由は、パダワンを持たないこと。
弟子を育てるということは、ジェダイとして育てるということ。私はジェダイじゃない。ジェダイとしての生き方を拒んだ私に、ジェダイを育てられるはずがない。
そう懇々と説明した。
「分かりました……」
子供達は、納得したみたいだった。
1人を除いて。
「じゃあ私もジェダイやめます。」
カリの言葉に、他の子供達は困惑する。
「カリ!気は確か!?」
「正気じゃない!!」
一番困惑しているのは私だ。
私のパダワンになりたいから、自らもジェダイをやめる?
頭のネジどこで落としたの?
サムは独身を貫くべきか否か?
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早く結婚しろ。
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ダメ、独身でいろ。
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