【完結】退職(無断)したので、飲食店やります。   作:夭嘉

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普通の人になりたい

翌日。

 

マスター・ヨーダが予定通り来店した。

 

しかし私達は店の席ではなく、部屋で話すことになった。ドアにロックをかけ、アズも記録できないように店に置いてきた。

 

まず、マスターはテーブルにいくつかのものを置く。

 

そして一通り話を聞き、マスターは私の答えを待つ。

 

 

「こんな責務、私には無理です。」

「だが、託せるのはお前しかおらんのじゃ。」

「いいえ、私には不相応です。なぜ私なんですか?もっと他に適任はたくさんいます。」

「何かあった時の為に、こうするのが一番なのだ。引き受けてくれんか?」

「授業だけでなく、こんなことまで……私がジェダイをやめた罰ですか?」

「………何かあったのか?」

 

 

私は、昨夜のカリとのことを話す。他に相談できる人もいない。良い答えは期待してないけど、きっかけにはなるかもしれない。

 

 

「若いお前が生き延びてきた理由が分かる気がするのぅ。」

「何が問題なんですか?」

「サマンサもカリも正しい。ただ、視点が違うだけじゃ。子供の想像力は、大人の狭い視野に勝る。カリは良い面と悪い面両方を見ておる。」

 

 

意味が分からず、私は疑問符を浮かべる。

 

 

「サマンサ、アドバイスをやろう。悪い面だけでなく、良い面も見るのじゃ。カーターはお前の為に尽くした。本当に信用だけで見放すのか?」

「カーターを許せと?」

「許すことは、相手を受け入れるも同義じゃ。よく考えよ。」

 

 

そう言って、マスター・ヨーダは船を去っていく。

 

預け物を残して………

 

できれば持って帰ってほしかった。こんな大役、私には無理です。やっぱり、これは何かの罰のような気がする。

 

着払いで送り返してやろうかな。

 

 

「サム様!大変です!」

「え、なに、」

「怪しい女が……!」

 

 

止めようとするアズを押し切り、ヴェントレスが店に無理矢理入ってくる。初めて実物を見た。迫力と圧がすごい。

 

オモテナシシナキャダメ?

 

 

「イラッシャイマセ」

「歓迎する気はないだろう?」

「バレてたかぁ。それで、私の暗殺?」

「殺されたいのか?」

「まさか!」

 

 

私は平穏に店をやりたいだけ。だから戦場にも立たないし、ジェダイにも戻らなかった。オビ=ワンを助けに行ったら死にかけたから、戦場には立たないと決めたんだ。

 

 

「アズ、私は大丈夫だから、奥に行ってて。」

「しかし、」

「“お客様”は殺しに来たんじゃないみたいだから。」

「………畏まりました。」

 

 

アズは命令に従い、奥へ入っていく。

 

2人きりになり、ヴェントレスは私を足元から見極めるように見てくる。

 

もしヴェントレスが殺しに来たのなら、マスター・ヨーダが彼女に気付いていたはずだ。マスター・ヨーダが帰ってすぐに入ってきた辺り、目的は恐らく観察だろう。

 

シスの関心が向いてるというドゥークー伯爵の言葉は、どうやら本当らしい。

 

 

「こんな奴が危険だとは思わないね。」

「それはあんた達の勘違いだよ。私は戦争に加わる気はないし。ジェダイ・オーダーにも釘を刺してるからね。」

「我々に加わる気もないんだろう?」

「当たり前じゃん!私はこの店が大事なんだから!」

 

 

ヴェントレスは何も言わず、椅子やテーブル、カウンターをじっくり見て回る。それから、カウンターの中も見る。そして、嘲笑うように私に視線を向けてくる。

 

 

「随分と年季が入っているようだね。こんな馬鹿げたことに何の意味がある?」

「失礼な。私はジェダイみたいに優しさのない人間になりたくないし、シスみたいに心のない人間になりたくないから、やりたいことをやってるだけ。」

「それが何になる?」

「柵のない関係で人と繋がれる。この店に、共和国も分離派も関係ない。良いことだよ。」

 

 

私がそう言い切ると、ヴェントレスはまた馬鹿にしたように笑う。

 

 

「そうかい?だが、アタシには縋っているように見えるね。お前はジェダイとして見られないことに安心感を得たいだけだ。」

「それの何が悪いの?当たり前の感情だと思うよ。」

「お前………つまらない人間になりたいってのかい?」

「やっと分かった?」

 

 

私はつまらない人間になりたいと思ってきた。店が大事なのは本当だ。でもそうすることで、ジェダイの粛清から生き残れる確率が上がる。

 

重要なのは、シスの関心を得ないこと。

 

僅かな関心の今なら、まだ間に合う。

 

 

「ああ、よーく分かったよ。」

 

 

安堵してカウンターのグラスを手に取ろうとすると、後ろで嫌な音が聴こえた。

 

振り向くと、手に取ったグラスを落としてしまった。

 

 

「なんでライトセーバー起動してんの?」

「これだけ執着のある店だ。破壊すれば、暗黒面に踏み込むんじゃないかと思ったのさ。」

「ちょっと待って、」

「止めても無駄だ!!」

 

 

赤い刃がカウンターを傷付けようとして、私は咄嗟にライトセーバーを起動させて止める。

 

その行動に、ヴェントレスは大して驚かずライトセーバーを収めた。

 

 

「え、何…?」

「ジェダイに戻りたくないと言いながら、なぜライトセーバーを起動させた?」

「それは…破壊させないように………」

「ライトセーバーがジェダイの証明ではないが、今のはお前がまだジェダイであるという証明だ。」

 

 

ヴェントレスはフードを被ると、出口へ向かっていく。

 

 

「お前は脅威じゃないということは分かった。だが、危険な存在に変わりはない。もしジェダイに戻ることがあれば、禍いが降り掛かるだろう。」

「禍い?私に脅しは効かないよ。」

「脅しじゃないさ。気を付けることだね。」

 

 

彼女はそう言って、店を出て行った。

 

ヴェントレスはドゥークー伯爵経由で、私が授業をやっていることを知っているだろう。カリのことも、恐らく知っているはず。禍いとは、カリのことだ。

 

二度とジェダイには戻らないとは言っても、ヴェントレスの言葉は信用できない。

 

しばらく警戒は解けないな。

 

いや、まずはカリと話し合おう。

 

 

サムは独身を貫くべきか否か?

  • 早く結婚しろ。
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