【完結】退職(無断)したので、飲食店やります。   作:夭嘉

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己の価値

その日の夜。

 

カリの部屋のドアを、恐る恐るノックした。

 

 

「何?」

 

 

感情の篭っていない声が、部屋の中から返ってくる。

 

 

「カリ、話があるの。」

「………いいよ。」

 

 

カリはそう言って、ドアを開ける。

 

 

「ありがとう。」

 

 

中に入って、カリの隣に腰を下ろす。

 

カリの心を読もうとするけど、何も読み取れなかった。

 

 

「カリ、ごめんね。」

「何が?」

「私はマイナス面しか見てなかった。でも、マスター・ヨーダに言われたよ。良い面も見ろって。もっと前を見る。だから………」

「いいよ。」

「え?」

「私も言い過ぎた。もっと慎重になるよ。大切なことを教えてくれてありがとう、マスター。」

 

 

カリのマスター呼びに、なぜか嫌な気持ちはしなかった。

 

それは、心からの感謝の気持ちだったから。

 

私はジェダイじゃない。だからカリとも師弟じゃない。まだ特別な絆はない。

 

でも、小さな友情がある。

 

 

「それでね、サム。私にちゃんと教えてほしいの。」

「教える?何を?」

「ジェダイの技を教えて。」

 

 

意図が掴めない。ジェダイをやめたのに、なんで私に教えを乞うのか分からない。最低限の知恵だけで良いのに。

 

 

「カリ……」

「マイナスのことじゃないよ。私はマイク達がピンチになったら助けたいの。セオ達も、きっと私達を助けてくれると思う。もしお互い助けが必要になった時、ジェダイの教えは役に立つと思うの。」

「本当にやるの?」

「うん。」

 

 

カリの目に、迷いはなかった。それが未来の為になると信じている。自分にも、マイク達にも。もっと言えば、私の為にも。

 

 

「分かった。やろう。」

「ありがとうサム!」

 

 

カリはそう言って、私に抱き付いてくる。

 

私より大人っぽいのに、仕草は子供だ。まぁ子供なんだけども。もっと子供らしくいてくれてもいいくらいだ。

 

 

翌日。

 

営業前に少し訓練をして、予定通り開店した。

 

今後、これが日課になる予定だ。ジェダイじゃない私達には、たくさん時間がある。急いで訓練することもない。

 

 

「ねぇ、サム………」

「どうしたの?」

 

 

カリに言われて奥のテーブルを見ると、見覚えのある奴がいた。

 

私は無言で近付き、伝票を叩き置く。

 

 

「あんなことがあったのに、よくも平然と来られるね?」

「俺に非はない。」

「わざわざ店に押し掛けてきたのは悪意を感じるけど?ジェラルド・ミラー?」

 

 

カーターに金を貸したミラーが、客として座っていた。

 

店にいたカーターも悪いけど、外で捕まえることもできたのに、わざとらしく店の中で問題を起こしたミラーが嫌いだ。それこそ営業妨害だ。常連の賞金稼ぎや傭兵が来なくなったら、ミラーのせいだ。

 

 

「本当にジェダイじゃないんだな。」

「だから違うって言ってるでしょ。帰ってくれる?」

「実は頼みがあるんだ。」

 

 

ミラーはギャングとしての顔ではなく、真剣な表情で個人的なことだと言う。

 

 

「私が聞く義理は?」

「貸しがあるだろ。」

「助けっていう意味でならね。あんたに助けが必要なようには見えない。」

「いや、俺じゃない。ギャングのことだ。」

 

 

私は反対側に座り、話だけは聞くことにした。

 

 

「それで?」

「用心棒として雇う気はないか?」

「………」

 

 

ミラーの提案に、私は溜め息を吐いて背凭れに寄り掛かる。

 

用心棒のことは、一瞬だけでも考えたことはある。

 

店をオープンしたての頃は、まだ私のルールも浸透していなくて、かなり苦労した。共和国にも申告していない店でもあったから。誰の助けも借りられなかった。借りてもギャングやシンジケート、海賊しかいない。

 

でも彼らの手は借りなかった。

 

もし借りたら、自分の価値を下げることになるから。

 

それに、見返りも必要になる。

 

 

「私に利点はないよね?」

「ああ、ないな。だが、近頃は物騒だろ?共和国軍がいるせいで、まともに商売もできねぇ。俺のギャングを雇えば俺達は儲かるし、この店も守れる。利害は一致するはずだ。」

「しない。店の評判に関わる。」

「なぜそこまで拘る?」

「あんたには関係ない。私は10年も1人でやってきたの。今更手を借りる必要があると思う?」

 

 

私がにっこり笑うと、ミラーは無理だと悟ったようだった。

 

 

「お前と仲良くするのは無理みたいだな。」

「私と仲良く?無理無理。元ジェダイとか関係なく、私は善悪の振り分けはっきりしてるから。」

「そうか……残念だ。」

「分かったら、二度と来ないでね。」

 

 

アズを呼び、ミラーを出口まで送らせる。

 

ちょっと良心を見せるとこうなる。カーターのことはどうなろうと知ったことじゃない。でもカリの心を守る為に、カーターを助けると決めた。

 

その結果がこれだ。対応が、日に日に厳しくせざるを得なくなってる。戦争は営業にも影響を来している。

 

フォースの意志を感じる。

 

これは、私がジェダイをやめた報いかもしれない。

 

私の決断が間違ってないと信じたい。

 

 

サムは独身を貫くべきか否か?

  • 早く結婚しろ。
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