【完結】退職(無断)したので、飲食店やります。   作:夭嘉

22 / 109
見る目は人それぞれ

カーターを追い出して約1年が経った。

 

その間、ミラーのギャングもカーターも、あのドゥークー伯爵も全く動きがなかった。

 

何事もないのが一番だけど、静かすぎて怖い。何が怖いって、ミラーを出禁にしてから客層が良くなった。ギャングや海賊がいないだけで、店の雰囲気は大きく変わった。

 

そして今日も、いつも通り営業している。

 

今日はコルサントから離れ、ミッド・リムの惑星に停泊していた。

 

 

「サム様、お客様がお呼びです。」

「何かあった?」

「いえ、サム様と直接話したいそうなんです。」

 

 

アズに案内されてテーブルへ行くと、少し良い服を着た女性がいた。見た感じ、どこかの会社の重役だろう。良い会社かどうかは分からないけど。

 

 

「お待たせ致しました。オーナーのサマンサ・ホーガンです。何か不都合でもありましたか?」

「いいえ、違うわ。貴女と商談がしたいのよ。」

「商談、ですか。」

「ええ。私は共和国に燃料資源を卸していて、彼の共和国軍にも提供しているの。そこで貴女が元ジェダイだと聞いて、こうして来たのよ。」

「何が言いたいんですか?」

 

 

つい冷たく言ってしまった。なぜなら、この店でジェダイだったことをわざわざ言ってくる客は、あまりいない。普段言われない分、実際に言われた時に嫌な気持ちになる。

 

それでも彼女は気にすることもなく、話を続ける。

 

 

「今は戦争中よ。少しでも銀河を良くするなら、貴女は戦場に、船は共和国に献上した方が良いんじゃないかしら?」

「私は何年も前からジェダイをやめています。今更戻れません。」

 

 

あくまで接客の顔で応対した。腹が立つけど営業用の笑顔を見せ、丁寧にお断りする。当たり障りなく、だ。

 

しかし、私の反応は不服だったようだ。

 

 

「自分の立場を分かってるの?」

「どんな立場ですか?ジェダイ?この店のオーナー?それとも一般市民ですか?私の店に身分や立場は関係ありません。あるのは店主の私と、平等な客だけ。納得してもらえないなら、ここには来ない方がいい。」

「貴女……!!」

「どうぞお引き取りください。」

 

 

女性はナイフとフォークを叩き置き、無言で店を出て行く。

 

彼女はかなり怒っていた。そう、あの感情は怒りと、憎しみだ。ひどく重い。

 

でも、私はそれ以上に憤っている。この店に来るなら、私のルールを守ってもらわないと困る。〈ホーガ・フォレスト〉は私の居場所であり、私の聖地なのだから。

 

軽く見られたことが、心に引っ掛かった。

 

 

「アズ、閉店したらミーティングするよ。カリにも伝えて。」

「畏まりました。」

 

 

アズが裏方に戻り、私は出て行く女性を見届ける。今までもあったけど、逆恨みは恐ろしい。思い通りにならなければ、襲ってくるチンピラもいた。

 

だが、今回は違う。

 

本当に共和国繋がりならいいけど、どこかのギャングが差し向けたのなら、警戒しないといけない。あの反応だと、後者の線が濃厚だろう。“ネズミ”は、あの人だけではないかもしれない。

 

 

「じゃあなサム!」

「気を付けてね。」

 

 

常連が帰り、私は店を閉める。

 

カリと一緒に片付けをして、傍らでアズにお茶を淹れてもらった。ひと段落した後、私達はカウンターでティータイムに入った。私がブルーマカロンを用意して、心身共に休息する。

 

最近は営業前のように店が順調で、カリと一緒に休める時間はなかったんだ。

 

紅茶を飲みながら、私はあるリストをカリに見せる。

 

 

「何これ?」

 

 

名目はティータイムだけど、実はミーティングも兼ねている。

 

見せたリストは、要注意人物一覧だ。海賊のホンドーから始まり、パイク・シンジケート、最近ではミラーのギャングが追加されている。もしもの場合に備えて、こうしてリスト化している。

 

 

「要注意の人達。私の判断で入ってる奴もいるけど、何かある前に警戒しておいて。」

「ミラーも?でも、あの人はサムに何もしてないよね?」

「感覚的に関わりたくないと思ってね。」

「今までもずっとこんな感じなの?」

「そうだよ。」

 

 

その時、店の入口が騒がしくなった。

 

 

「何かな?」

「見てくる。」

 

 

立ち上がった瞬間、アズが転がってきた。その後、ミラーが乗り込んでくる。もちろん、後ろにはギャングを従えて。

 

噂をすれば何とやら、だ。

 

 

「私のドロイドに何するの?」

「邪魔をするからだ。」

「看板が消灯してるのが分からないわけ?」

「関係ない。お前を引き摺り下ろし、この船を戴く。」

「私が黙って渡すと?」

「お前は俺の取引を拒み、カーターを見逃すという俺への借りがある。これ以上譲ることはできない。」

 

 

ミラーがそう言うと、後ろの手下達はブラスターを構える。

 

何も動かない私とは反対に、カリはライトセーバーを起動させる。

 

 

「小娘、形成は不利だぞ。」

「私達はフォース感応者だよ。」

「カリ、ライトセーバーを収めて。」

「どうして!?襲撃されてるんだよ!!」

「フォース感応者といえど、普通の人間と変わらない。相手はギャングの人間多数。中には手練れもいる。死人が出るよ。」

 

 

誰が死ぬかなんて言わない。

 

こういう場面は何度もあったけど、今回は事情が違う。今は守るべき妹分がいる。カリに怪我はさせられない。

 

いくつもの執着と、僅かな良心、感情による判断。アンバランスな要素で、この結果を招いた。中立を崩したのは、間違いだった。

 

責任は、私にある。

 

カリだけは守りたい。

 

私にできることは、1つしかない。

 

 

サムは独身を貫くべきか否か?

  • 早く結婚しろ。
  • ダメ、独身でいろ。
  • その他(活動報告や感想へ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。