カーターを追い出して約1年が経った。
その間、ミラーのギャングもカーターも、あのドゥークー伯爵も全く動きがなかった。
何事もないのが一番だけど、静かすぎて怖い。何が怖いって、ミラーを出禁にしてから客層が良くなった。ギャングや海賊がいないだけで、店の雰囲気は大きく変わった。
そして今日も、いつも通り営業している。
今日はコルサントから離れ、ミッド・リムの惑星に停泊していた。
「サム様、お客様がお呼びです。」
「何かあった?」
「いえ、サム様と直接話したいそうなんです。」
アズに案内されてテーブルへ行くと、少し良い服を着た女性がいた。見た感じ、どこかの会社の重役だろう。良い会社かどうかは分からないけど。
「お待たせ致しました。オーナーのサマンサ・ホーガンです。何か不都合でもありましたか?」
「いいえ、違うわ。貴女と商談がしたいのよ。」
「商談、ですか。」
「ええ。私は共和国に燃料資源を卸していて、彼の共和国軍にも提供しているの。そこで貴女が元ジェダイだと聞いて、こうして来たのよ。」
「何が言いたいんですか?」
つい冷たく言ってしまった。なぜなら、この店でジェダイだったことをわざわざ言ってくる客は、あまりいない。普段言われない分、実際に言われた時に嫌な気持ちになる。
それでも彼女は気にすることもなく、話を続ける。
「今は戦争中よ。少しでも銀河を良くするなら、貴女は戦場に、船は共和国に献上した方が良いんじゃないかしら?」
「私は何年も前からジェダイをやめています。今更戻れません。」
あくまで接客の顔で応対した。腹が立つけど営業用の笑顔を見せ、丁寧にお断りする。当たり障りなく、だ。
しかし、私の反応は不服だったようだ。
「自分の立場を分かってるの?」
「どんな立場ですか?ジェダイ?この店のオーナー?それとも一般市民ですか?私の店に身分や立場は関係ありません。あるのは店主の私と、平等な客だけ。納得してもらえないなら、ここには来ない方がいい。」
「貴女……!!」
「どうぞお引き取りください。」
女性はナイフとフォークを叩き置き、無言で店を出て行く。
彼女はかなり怒っていた。そう、あの感情は怒りと、憎しみだ。ひどく重い。
でも、私はそれ以上に憤っている。この店に来るなら、私のルールを守ってもらわないと困る。〈ホーガ・フォレスト〉は私の居場所であり、私の聖地なのだから。
軽く見られたことが、心に引っ掛かった。
「アズ、閉店したらミーティングするよ。カリにも伝えて。」
「畏まりました。」
アズが裏方に戻り、私は出て行く女性を見届ける。今までもあったけど、逆恨みは恐ろしい。思い通りにならなければ、襲ってくるチンピラもいた。
だが、今回は違う。
本当に共和国繋がりならいいけど、どこかのギャングが差し向けたのなら、警戒しないといけない。あの反応だと、後者の線が濃厚だろう。“ネズミ”は、あの人だけではないかもしれない。
「じゃあなサム!」
「気を付けてね。」
常連が帰り、私は店を閉める。
カリと一緒に片付けをして、傍らでアズにお茶を淹れてもらった。ひと段落した後、私達はカウンターでティータイムに入った。私がブルーマカロンを用意して、心身共に休息する。
最近は営業前のように店が順調で、カリと一緒に休める時間はなかったんだ。
紅茶を飲みながら、私はあるリストをカリに見せる。
「何これ?」
名目はティータイムだけど、実はミーティングも兼ねている。
見せたリストは、要注意人物一覧だ。海賊のホンドーから始まり、パイク・シンジケート、最近ではミラーのギャングが追加されている。もしもの場合に備えて、こうしてリスト化している。
「要注意の人達。私の判断で入ってる奴もいるけど、何かある前に警戒しておいて。」
「ミラーも?でも、あの人はサムに何もしてないよね?」
「感覚的に関わりたくないと思ってね。」
「今までもずっとこんな感じなの?」
「そうだよ。」
その時、店の入口が騒がしくなった。
「何かな?」
「見てくる。」
立ち上がった瞬間、アズが転がってきた。その後、ミラーが乗り込んでくる。もちろん、後ろにはギャングを従えて。
噂をすれば何とやら、だ。
「私のドロイドに何するの?」
「邪魔をするからだ。」
「看板が消灯してるのが分からないわけ?」
「関係ない。お前を引き摺り下ろし、この船を戴く。」
「私が黙って渡すと?」
「お前は俺の取引を拒み、カーターを見逃すという俺への借りがある。これ以上譲ることはできない。」
ミラーがそう言うと、後ろの手下達はブラスターを構える。
何も動かない私とは反対に、カリはライトセーバーを起動させる。
「小娘、形成は不利だぞ。」
「私達はフォース感応者だよ。」
「カリ、ライトセーバーを収めて。」
「どうして!?襲撃されてるんだよ!!」
「フォース感応者といえど、普通の人間と変わらない。相手はギャングの人間多数。中には手練れもいる。死人が出るよ。」
誰が死ぬかなんて言わない。
こういう場面は何度もあったけど、今回は事情が違う。今は守るべき妹分がいる。カリに怪我はさせられない。
いくつもの執着と、僅かな良心、感情による判断。アンバランスな要素で、この結果を招いた。中立を崩したのは、間違いだった。
責任は、私にある。
カリだけは守りたい。
私にできることは、1つしかない。
サムは独身を貫くべきか否か?
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早く結婚しろ。
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ダメ、独身でいろ。
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