ドゥークー伯爵はいない。
あの男は、私1人でどうにかできる。
門を通り抜けると、中は地獄絵図だった。これが、戦争だ。戦争は悪い影響しかない。
「クソッ!!」
衛兵の1人が生き延びていて、バトル・ドロイドに囲まれていた。
私は走り、衛兵を囲っていた3体のB1バトル・ドロイドを切り倒す。すぐに彼を起こし、沸いて出てきたドロイドから逃げるように玉座の間へ走った。
息を切らせる彼にブラスターを渡し、私は進軍してきたドロイド分隊にグレネードを投げ付ける。
一瞬静かになり、また彼を引っ張って扉の影に隠れる。
「見失ッタ。次ダ。」
「ラジャラジャ!」
バトル・ドロイド達が去っていくと、衛兵の彼は安堵していた。
「ありがとう。まさかジェダイか?」
彼は私のライトセーバーを見て眉を顰める。
「違う、元ジェダイ。人を追ってきたんだけど、ちょっと巻き込まれただけ。敵の司令官がどこにいるか分かる?」
「1人で行くのか!?」
「司令官さえ捕まえられればいいの。連れが追って行ったはずなんだけど……」
「もしかして、デヴァロニアンの娘か?」
「え、どこ?」
「司令官を追っていった。あ、おい!」
彼を置いて、私は男とレスを追いかける。
私の勘が間違っていなければ、レスはライトセーバーを持っている。ただ、場数はそんなに踏んでいない。私の不意を突いて押し飛ばすくらいはできていたけど、戦闘は慣れていないはずだ。
一番の問題は、この戦場で正しい判断ができるかどうかだ。
私でさえ戦場に関わりないのに、レスでは尚更心配だ。
「敵ヲ発見!殺セ!!」
食堂を抜けようとしたら、別のドロイド分隊と遭遇してしまった。
あちこち走り回っているけど、司令官は見つからない。
「ヤメテエエエエエエ!!」
ドロイド分隊のリーダーを切り倒し、更に奥へ走る。
回廊に差し掛かると、バトル・ドロイドが倒れている数が増えてきた。倒されているバトル・ドロイドは、ブラスターではなくライトセーバーで破壊されている。恐らくレスだろう。
玉座の間に辿り着き、私は吹き飛ばされたブラスト・ドアを潜る。
そこには、王を人質にするあの男がいた。
レスはライトセーバーを突き付け、男と睨み合っていた。
「どうやらあの小娘は失敗したようだ。」
「残念だけど、カリは元々良い子だから。」
妃は泣きながら衛兵に庇われていて、あとは王を救い出すだけのようだった。
だが、男は王を解放する気はないだろう。
「王を解放して。」
「レス、言葉じゃ無理だよ。」
「っ!?サマンサ!ならどうするんですか!?」
「あんたの考えていることは想像付く。全部を変えることはできないよ。」
「ちょっと!何やってるんですか!?」
レスの制止を無視して、私は前に出る。
「止まれ!王が死ぬぞ!」
「私はジェダイじゃない。だから難しい交渉はしないよ。でも、あんたにチャンスをあげる。」
「チャンスだと!?」
「王諸共死ぬか、大人しく私に捕まるか。どっちか選んで。」
私の言葉に、誰もが視線を向けてくる。
そりゃそうだ。王も巻き添えにすると言っているんだから。もちろん本気じゃないけど。
「サマンサ!正気ですか!?」
「正気だよ。何より、この星で王は人質に値しない。」
「そんなはずないでしょ!」
「いや、彼女は間違っていない。」
レスの反論に、王本人が私に肯定する。
「何だと……?」
「この星の主権は民だ。私は国事にしか関わっていない。」
「自分の価値を下げるつもりか!?」
「私と民は平等なのだ。勘違いするな。ミス、やりたいようにやれ。」
「ありがとうございます、陛下。」
全員がヒヤヒヤしているだろう。
私はさりげなく、視線を上げる。その先には、シャンデリアがある。ガラスで作られた、美しい細工の照明だ。
誰もその視線に気付くことはなく、私はライトセーバーを起動させる。
「下手な真似をしてみろ!本当に王が死ぬぞ!」
「私はここから動かないよ。」
「は……?」
私はライトセーバーをシャンデリアに向かってぶん投げて、手をヒラヒラさせて見せる。
「自ら武器を捨てたか!愚かな、っ!?」
手の平を見せたのは、男の気を引く為だ。
次の瞬間、私と王を掴む男の間にシャンデリアが落ちてきた。ガラスが飛び散り、男は咄嗟に自分だけ守ろうと片腕で身を守る。
私はこの瞬間の為だけにシャンデリアを落としたんだ。
王をフォースで横に薙ぎ倒し、瞬発的に隠し持っていたブラスター・ピストルで男の利き手を撃つ。
「しまっ……!」
男は王を離してしまい、その隙に王は全力で私達の方へ走ってくる。
私は男に銃を撃たせないように、力の限りフォース・プッシュする。男は玉座に横っ面をぶつけ、痛みに踞った。これを機に、衛兵は男の身柄を拘束する。
「ドロイドを止めて。」
「っ……」
「死にたい?」
「………ボタンを押せ。」
通信機のボタンを押してやれば、男は嫌々ながらバトル・ドロイドを停止させた。
男が衛兵に連れていかれ、ようやく戦いが収束した。レスは胸を撫で下ろし、追い付いてきたさっきの衛兵も安堵していた。
負傷者が運ばれ始めた頃、王が声をかけてきた。
「ミス、名を教えてくれ。」
「サマンサ・ホーガンです、陛下。」
「デヴァロニアンの少女は知り合いかな?」
「はい、レスと言います。」
私に続き、レスが王にお辞儀する。
「礼を言わせてほしい。助けてくれて感謝する。しかしホーガン、嘘が上手いな。私の価値を下げるとはな。」
「嘘なの!?」
「レス、ああでもしないと奴は油断しなかったから。陛下も嘘に乗りましたよね?」
「左様。生き延びる為に、君に懸けたのだ。」
「えぇ…」
レスは私と王の会話に引く。
確かに嘘だった。でも、全部が嘘じゃない。君主が民と平等なわけない。主権は間違いなく民だけど、王は民とこの星を治める責任を抱いている。
「では、本題に入ろう。この星は今も中立だ。共和国に加わる気はない。君達は共和国の者として来たのか?」
「いいえ、私とレスは身内を追ってきたんです。」
「………この場にはいないようだな。」
「陛下、」
「察するに、きっかけはその身内なのだろう?」
私とレスは、すぐに頷けなかった。
王はその身内が引き起こした戦いだと、気付いている。私がさっき、カリの名前を出してしまったから。王宮を襲撃したことは、許されることじゃない。発端が何であれ、カリも咎められる。
「だが、良い機会だ。ドゥークー伯爵を迎え撃つ覚悟ができた。」
「え……?」
「前々からしつこかったんだ。中立なのは変わらない。これを機に、国軍を強化しようと思う。」
「あの、」
「ドゥークー伯爵側でないのなら不問だ。君達も共和国の者ではない。君達のいざこざと、我々のいざこざが偶然重なっただけだ。」
つまり、王は許してくれると言っている。不運が重なっただけ、と。カリが間違いを犯していないことが幸いした。
今度は私が安堵した。
「感謝します、陛下。」
「構わん。助けてもらった礼だ。」
「僭越ですが……陛下、私達は行きます。」
「何を急いでいる?」
「いろいろ事情がありまして、レスも……あれ?レス?」
私と王がレスの方を向くと、いつの間にか消えていた。王が衛兵に聞いても、誰も見てないと言う。通信機でカーターに聞いても、船には戻ってないと言われた。
レスに逃げられてしまった。
「知り合いではないのか?」
「それが、無理矢理連れ出されまして………私もよく知らないんです。カリの為に付いてきただけで、どこの誰かは分からないんです。」
「不思議なものだ。事情とやらはさて置き、今回の幸運は君のお陰だ。何かあれば、いつでも来てくれ。少しは助けになるだろう。」
「ありがとうございます。」
王と妃、衛兵達に挨拶して、私は王宮を後にする。
きっと今頃、聖堂ではちょっとした騒ぎになっているだろう。何しろテンプル・ガードを押し退けてきたんだから。評議会が説教してくる図が目に浮かぶ。
あとは、レスのことをどう説明するかだ。
まずカリのことも話さないといけない。
「遅かったな。」
「カリは?」
「礼もなしか。カリは起きてるよ。」
シャトルに入ると、カリは私に気付く。でも、すぐに目を逸らされた。感じるのは、罪悪感。
「取り返しのつかないことをした。この星にも、サムにも………」
「カリ、聞いて。責められるべきは私だよ。あんたを1人にした。」
「サムは悪くないよ。私が勝手にやったの。自分のことしか考えなかったから、サムを傷付けた。ごめんなさい。」
「私は大丈夫だよ。それに、もうカリを1人にしない。約束するから。」
そう言うと、カリはまた抱き締めてくる。
なんだかんだ言っても、カリは子供だ。この子は暗黒面の怖さを知らない。いつかその怖さを知ることになるだろう。
今はまだ、暗黒面の怖さを知らなくていい。
いつか来るその日まで、私が守り続ける。
────────
一方、某所では……
「上手くいった?」
「ママって容赦ないね。」
「最初から言ってたじゃん。」
「そうだけどさ〜」
サマンサ達から、かなり遠く離れた〈ホーガ・フォレスト〉で、レスと彼女の母親は談笑する。
「すぐに変わる?」
「時間はかかるけど、いずれ変わるよ。」
「ママ、ホッとした?」
「まぁね。ありがとう、レス。」
レスは年相応の、子供らしく母に笑顔を見せる。
その時、母親のコムリンクが鳴った。
「ゲッ……提督からだ。」
「えっ!?今切断した!?」
「出たくないもん!レス!後は頼んだ!」
「ママは!?」
「店があるって言っておいて!」
「ママのバカ!!」
レスは母親に頼まれ、渋々〈ホーガ・フォレスト〉を発った。だが、その顔は幸せそのものだった。大好きな母の為、レスは笑顔で舵を握る。
そして、あらゆる変化が起きた。
1つ確かなのは、サマンサもカリも、レスも、皆が同じ感情を抱いているということ。
彼女達は────────
サムは独身を貫くべきか否か?
-
早く結婚しろ。
-
ダメ、独身でいろ。
-
その他(活動報告や感想へ)