翌日、なぜかケイレブが1人で来店した。
「マスター・ホーガン、先に会計をお願いします。」
「その呼び方やめてくれる?」
カウンターの隅に座ったケイレブが、大きな声でマスター呼びしてくる。周りの客が私を見てきて、思わずケイレブを睨んだ。客はすぐに視線を戻したけど、かなり不快だ。
ケイレブ、マジで迷惑。
「サマンサでいい。ちょっと待って、子供はお酒ダメ。」
カーターがケイレブに酒を渡そうとして、辛うじて阻止する。
子供、お酒ダメ、絶対。
「いいじゃねぇか。俺もガキの頃ギャングで振る舞われたぜ?」
「カーター!!」
「はいはい分かったよ。」
カーターはグラスを持って退散していく。
「はい、代わりのドリンク。あと、追加の料理ね。」
「どうも…」
「んじゃ、ごゆっくり。」
「待ってください!聞きたいことがあるんです!」
私は溜め息を吐き、ケイレブの反対側に座る。
「聞きたいことって?」
「最近一部のクローン達の間で、マスターが今も“傷物”なんじゃないかって言われているんです。評議会にも問題ないと判断されているのに、何が問題なんでしょうか?」
どうやら、ケイレブはマスターが貶されたのが納得できないらしい。マスターは事実を受け止めるかもしれないけど、まだパダワンの、それも子供のケイレブには難しいかもしれない。
「クローンにも感情はあるからね。仲間が大勢死んだことで、ショックを受けてるクローンもいると思う。要は感情の問題だよ。」
「貴女はどう思ってるんですか?」
「私は……ただ単に心配してる。ほら、頭で分かってても、心の奥で消化できなかったこととかあるでしょ?」
現に、ミラーのことがそうだ。それがカリを追い詰めてしまって、一時は取り返しのつかない状態になりそうだった。カリと一緒に乗り越えたけど、あの時は本当に苦しかった。
何が、とははっきり言えない。
私も普通の人間じゃなくて、元ジェダイだ。外の世界を知っただけ。カリも同じだ。だから私達は躓いた。
「大事なのは、マスターの気持ちだよ。」
「……そうですね。貴重な意見ありがとうございます。」
「ケイレブ、可愛いね。」
「可愛い!?男に可愛いはないでしょう!」
「あははは!大人が子供を可愛いって思うのは普通だよ!」
ケイレブって揶揄い甲斐があるよね。好奇心旺盛で可愛いし、しっかりしてるし。これがオッサンになるなんて信じられないな。
そこで、カリが奥から声をかけてくる。
「サムー!もう酒の在庫がない!」
「え!?」
気付けば店は混んでいた。そりゃ在庫切れるわ。今日のスタートは穏やかだったのに。ここまで混むのは想定外だ。
「そろそろ閉店しよっか。」
「はーい!」
「カーター、オーダーストップで。アズ、そろそろ閉店だって回ってきて。」
「畏まりました。」
私が指示していると、ケイレブの視線を感じた。
「どうしたの?」
「何だかマスターみたいです。」
「はい?」
「ドロイドと従業員に指示を出している姿が、マスターにそっくりでした。」
「いやいや、全然似てないって。マスターは熟練したジェダイだし。あと、敬った話し方やめよ?」
ケイレブはご馳走様でしたと笑って、颯爽と退店していった。
因みに、敬った話し方はやめてくれなかった。ていうか、先輩で姉弟子ですからと断られた。マスターが苦労する未来が見えた気がした。
弟みたいな感じだったな。
閉店した後、カリとカーターがコックピットで何か話していた。
「どうしたの?」
声をかけると、カリが言いにくそうに私を見る。
「え、本当にどうしたの?」
「実は……パルパティーン議長がグリーヴァスに拐われたって………」
聖堂にいるモダルに聞いたらしい。
モダルによれば、評議会で極秘に議長を護衛してたらしいけど、マスター・シャク・ティでも刃が立たず、拐われてしまったそうだ。
前の世界で思ったけど、拐われたら都合が悪いのに、なんでわざわざ誘拐されたんだろう。
「コルサントのジェダイがどうにかするでしょ。」
「心配じゃないの?」
「心配しても、私には何もできないから……」
心配かと言われたら、本音は心配してない。
だって、パルパティーン議長の正体はシスだし。ここで間違って死んでくれる程、甘くはない。どうせアナキンとオビ=ワンが助けに行くから、尚更心配はいらない。
ここで議長が間違って死んだら、銀河は平和になるのに。
「なぁホーガン、ジェダイに復帰しようと思ったことはないのか?」
「ない。」
「即答かよ。カリはないのか?」
「ないよ。戻る理由ないもん。」
「お前も即答かよ。」
カリがジェダイをやめた理由は私だ。私が戻らないなら、カリもジェダイに復帰しない。カリは分からないけど、私は一瞬たりともジェダイに戻りたいとは思わない。
いずれ来たるジェダイの粛清を知ってるのに、戻りたいと思うわけがない。
「だが、共和国は黙っちゃいないはずだぞ。」
「もちろん断るよ。現役じゃないし。」
「カーター、何を心配してるの?」
「断ったら共和国に悪い印象を与えないか……って思ってな。」
「………」
「人望ある議長の救出を拒むんだ。議長支持派からしたら、良い印象はない。俺はそれを心配してんだ。」
人望、ねぇ。
パドメに聞いた話じゃ、言う程人望保ててないけどね。
「これはアミダラ議員から聞いたんだけど………」
「え?」
「元老院議員の中に、議長が暴走しているんじゃないかって言ってる議員がいるらしいよ。」
「どういうこと?」
「アミダラ議員やオーガナ議員は、分離派との和平交渉を求めてる。でも議長は話を聞かず、戦争に勝つしかないって。」
「アミダラ議員ですら離れていくのか……」
そう、パドメにも離れられている。でも、元老院の内情を知るのはジェダイや、元老院の関係者だけだ。民は知る由もない。
だから私が断ったところで、客が減ることはない。
ジェダイではないと、宣言もしてるからね。
「もうコルサントには戻らないのか?」
「戻ったらジェダイがうるさいでしょ。」
「けど、マイク達が会いたがってたよ?」
懐かしの教え子達には会いたい。
会いたいけど、行くのはジェダイ聖堂だ。会うのはマイク達だけじゃない。必然的に評議会の誰かとも会うことになる。
評議会のジェダイは面倒臭いから会いたくない。
「私も会いたいなぁ……」
カリがウルウルした目で見てくる。
「ジェダイ聖堂に行くことはないだろ。店に呼んだらどうだ?」
「確かに……」
「サム、できると思う?共和国のあの状況で。」
考えたけど、思えばマイク達はまだナイトにはなってない。近場なら、マスター達も何も言わないはず。何も遠くへ連れ出すわけじゃないんだから。
「呼んでみよう。」
「いいの?」
「うん。聖堂には行かないで、近くに船を停める。それでマイク達を呼べばいいと思う。」
「ホーガン、何が何でも聖堂に行かない気だな。」
「当たり前じゃん。」
私は操縦席に座り、座標を入力する。
こうして、私達はコルサントへ向かうことになった。
聖堂に行かないとはいえ、あちこちに連絡しないといけない。評議会に、パドメに、他にもいろいろ。コルサントに戻るだけで、結構手間だ。
でも、私もマイク達には会いたい。
このまま静かに、平穏が続いてほしい、切実に。
サムは独身を貫くべきか否か?
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