いつも通り営業を開始して半日経った頃、久しぶりにカリと揉めた。
「なんでよ!?」
「だって知り合いいないし。」
「でも…!」
「コルサントにいる理由ないでしょ?」
私達が揉めている理由は、至極単純なことだった。
オビ=ワンは評議会の指示で、グリーヴァスを追ってウータパウへ向かい、ヴォスは戦場へ行った。モダル達もそれぞれ戦場へ向かい、聖堂には誰も親しいジェダイがいなくなった。つまり、私がコルサントにいる意味がない。
カリはモダル達を待ちたいんだろうけど、私は店が第一だ。
「待ってたっていつ戻るか分からないし。それなら、店をやった方が気が紛れるよ?」
「分かった……」
不満そうだけど、カリは承諾した。
実は、私がコルサントを離れたい理由は他にもある。
オビ=ワンがウータパウに行ったってことは、もうすぐジェダイの粛清が始まる。その時にコルサントの軌道や地上にいれば、確実に巻き込まれる。アニメでも、アソーカはクローン・トルーパーにブラスターを向けられていた。
それを考えたら、私も例外じゃないはず。
私だけじゃなくて、カリも危ない。
「ホーガン」
食器を片付けていると、カーターが声をかけてきた。
カリはアズが気を遣い、配膳とカウンターを入れ替わっていた。
「何かあったのか?」
「そうじゃないよ。嫌な予感がしただけ。」
「あんたの嫌な予感は当たるからやめてくれ。」
「………」
「何か隠してるだろ。」
「何も隠してない。ほら、仕事して。」
布巾を渡して、私は閉店の支度をする。移動する前にパドメに挨拶したかったけど、その余裕はない。私自身に自信がないと言っていい。今は少しでも準備しておきたい。
「アズ、次の営業の案内に行って。」
「畏まりました!」
アズを客席に行かせて、次の開店の案内に行かせる。
この案内は、翌日に営業できない時にする案内だ。尚且つ、所在地を変える意図もある。数日は店を閉めようと思っている。
その時、店が静まり返った。
客の視線を追うと、入口にアナキンが立っていた。
「スカイウォーカーだ……」
「なぜここに……」
客が口々に、アナキンを見て囁く。
「いらっしゃいませ、お客様。」
静かな空間に、私は声を張り上げる。客やカリ達は、その応対に一斉に私を見る。アナキンも少し驚いていた。
「カウンターへどうぞ。」
あくまで客、そう扱った。
カウンターに座ってもらい、私はドリンクを差し出す。
「客扱いですか。」
「なんで?」
「僕達は友達ではないんですか?」
「店にいる以上、サムと俺達はスタッフと客の関係だ。」
常連の1人が、アナキンに警告した。
アナキンの態度に、店にいる客の殆どが立ち上がる。その殆どの客は、うちの常連だ。彼らは店のルールを理解してくれていて、その上で来店している。
中には、もうすぐ負けるであろう分離派の関係者もいる。
アナキンは、分離派の客に気付いて睨んでいた。
「サマンサ………」
「サムに迷惑をかけるなら出ていってもらおうか。」
「待って。みんなありがとう。私は大丈夫だから。」
カリとカーター、アズは心配そうに私を見る。
「アナキン、個人的に話したいなら閉店を待ってて。話ならそれから聞く。私は客を贔屓したりしないから。」
「分かりました………」
アナキンは渋々了承して、カウンターの隅で待つ。
隣の客の食器を回収して、私は奥へと入る。そこへ、カリが恐る恐る声をかけてきた。作業をしたまま返事をすると、声のトーンが刺々しくなった。
「マスター・スカイウォーカーにもあの対応?」
「それがうちのルールだよ。」
「友達でしょ?」
「ヴォスやマスター・ビラバもそうした。例外は作らない。1人を贔屓したら、他にも贔屓しなきゃいけなくなる。」
「そんなに嫌なの?」
手を止めて、私はようやくカリに向き合う。
「カリ、この店がどちらにも反感を買ってないのは、中立だからだよ。営業許可は共和国だけど、共和国の客も分離派の客も拒んでない。だから続いてるの。ドゥークー伯爵は別だけど。」
「でも……」
「カリは友達想いだもんね。気持ちは分かるよ。それでも、ここは私の店だし、カリやカーターを危険に巻き込まない措置でもあるの。いつか分かるよ。」
カリにそう言うと、静かに頷いてくれた。
何度か方針を変えることも考えた。だけど、それをしなかったのはカリとカーターの為だ。片方に肩入れしたせいで2人を危険に曝せない。
やがて店は閉店を迎え、私とアナキンはコックピットの窓の上に座り、そこで話を始めた。
閉店した頃、コルサントは夜を迎えていた。
「それで、何しに来たの?」
「パルパティーン議長に聞いたことがあって、確かめに来ました。」
「何を?」
「マスター・ヨーダから、何を託されているんですか?」
「託される?私が?」
「マスター・ヨーダと貴女は、2人で話すことが多い。」
あー、また何か吹き込まれたな。議長はアナキンを使って、機密を探ろうとしてる。アナキンはきっと無自覚だろうな。
「機密なんてないよ。言ったでしょ。マスター・ヨーダには個人的なことしか話してないって。」
「個人的な理由は何なんですか?」
「それはアナキンにも言いたくない。」
「では、あの日話していたことも秘密ですか?」
「言えないね。」
私がはっきり断言すると、アナキンは不機嫌な表情になる。
「ですが、議長には話しておくべきでは?」
「は?」
「議長は貴女を疑っています。信用できると証明できなければ、また呼び出されますよ。今度は裁判かもしれません。」
「アナキンも疑ってるわけ?」
「僕も貴女を信用できない。貴女はジェダイをやめた身でありながら、マスター・ヨーダと秘密の話をしています。」
アナキンから嫌悪感を感じる。
他者を尊重する良いジェダイのアナキンは、暗黒面に呑まれ始めている。パルパティーンの手によって、ゆっくり、長い時間をかけて。私がどんなに個人的なことと言っても、もう聞く耳はないだろう。
「忘れてるだろうけど、私は共和国に付いたわけじゃない。建前上共和国の営業許可を取っただけで、カーターとカリを残して消えることもできる。それがどういう意味か分かるでしょ?」
「共和国の敵になると言うつもりですか!?」
「その選択はない。でもあんたがそういう考えを持ってるなら、マスター・ヨーダだってその考えはある。この意味をよく考えて。」
そう言って、私は窓の上から降りる。
これがアナキンとの最後の会話になるだろう。
私は敵にも味方にもならないと宣言した。アナキンだけでなく、議長に対しても宣言したようなものだ。今後にどう繋がるかは分からない。ただ、パルパティーン議長の疑いは簡単には晴れない。
議長がマスター・ヨーダへ疑いを持ち続けるように、私への疑いも消えないだろう。
疑わしきは罪、議長はそう言っているようだ。
一刻も早くコルサントから離れなければ。
サムの子供は……?
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父親(次章で登場)と一緒にいる。
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カリと一緒にいる。
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カーターと店にいる。
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