1週間後。
私は営業中の〈ホーガ・フォレスト〉に踏み込んだ。中は騒がしく、誰も私に見向きしない。だけど、好都合だ。
マントのフードを深く被り、顔を隠すように歩いた。
カウンター席に座り、私はオーダーでリックを呼ぶ。
「注文は、っ!サ、むぐっ!?」
「名前を呼ばないで。」
慌ててリックの口を手で押さえる。違和感がないように、私は酔っ払いのふりをした。手を離すと、リックは辺りを見渡して小声で話をしてくる。
「なんでここにいる?あの子はどうした?」
あの子というのは、カリのことだろう。
「あの子は別行動してる。閉店まで酔っ払いのふりをして待ってる。話がある。」
「分かった。だが、酔っ払いのふりはいらないからな。ここにはあんたの絶対的な味方がいる。」
「え?」
「ヴィザーゴ!!」
ヴィザーゴ………?
ヴィザーゴって、あのヴィザーゴ?シカトロ・ヴィザーゴ?アニメ反乱者たちのロザルで犯罪王として登場したあのヴィザーゴ?
ヴィザーゴと呼ばれたデヴァロニアンが、テーブル席からカウンター席へと来て、隣に座った。
いやいや、このヴィザーゴ若いって。
「なんだカーター?」
「お前を友人に紹介したくてな。」
「ほぅ……シカトロ・ヴィザーゴだ。ツイン・ホーンズ・ストレージ社の代表をしている。」
「よろしく。」
あれ?犯罪王じゃない。角も切られてない。てことは、まだシンジケートを立ち上げてないんだ。
「この酔っ払いのお嬢さんは誰だ?」
ヴィザーゴの問いに、リックは私を見る。
「ヴィザーゴは信用できる。」
「信用だと?何言ってんだカーター?」
信じろと言うから、私はリックに頷く。
「ヴィザーゴ、耳を貸せ。」
「あぁ?」
リックはヴィザーゴに耳打ちして、私の正体を明かす。
すると、ヴィザーゴは納得したように私を見た。
「なるほどな……」
そう言って、ヴィザーゴは辺りを見渡して何かを確認する。
「心配するな。今いる客は全員味方だ。おいみんな!オーナーが顔を出したぞ!」
「ちょっ……やめて!」
「サムか!?」
「無事だったんだな!」
「え……?」
思っていたのと違う反応をされて、戸惑ってしまった。
気が付くと、アズが看板を閉店に変えていた。
「カーターもアズも何も教えてくれなくてな!」
「俺達は心配してたんだぞ!」
「サム様?大丈夫ですか?」
「大丈夫……」
世間的には、元ジェダイも危険人物扱いだ。それなのに、私は否定されることなく、寧ろ戻ってきたことを歓迎された。今まで誠実に商売してきたからだと、私は悟った。
リック達が何も言わなかったのは私が口止めしたからだけど、逆に申し訳なくなってきた。
「みんな、ありがとう。でも、今日は私がここに来たことは秘密にしなくていい。隠したことで、危険に巻き込むわけにはいかないから。」
そう言うと、客達は納得してくれた。
臨時休業ということで店は閉店して客は帰り、アズが外で出入り口を見張り、私とリックは話を始めた。
「危ない橋を渡ってまで、何しに来たんだ?」
「店を代理じゃなくて、本格的に任せに来たの。責任者の名前を、私からリックの名前に変える。」
「おい待てよ、この店はあんたのだ。」
「だからこそ、戻れるようにしておいてほしいの。お願い、店を守って。」
リックは溜め息を吐く。
任せられるのは、アズにも信用されている、最初の従業員であるリックしかいない。
「分かった。責任者名は受け入れる。だが、あくまで代理だ。ここはあんたの店で、家でもある。いいな?」
「ありがとう、リック。それともう1つ……」
「まだあるのか!?」
「帝国軍がプライベートで来るのは構わない。」
これは、私の方針だ。プライベートで来店することは気にしない。帝国軍として来店するのは許さない。一度認めれば、奴らがつけ上がるのは目に見えてる。
だけど、リックは反対した。
「サム……敵だぞ。」
「でも分離派は受け入れてきたでしょ?敵意が無ければ客は客。〈ホーガ・フォレスト〉の方針を忘れないで。」
「分かった、あんたの方針に従う。帝国といえば、営業許可取り直すか?」
「一応お願いするよ。責任者も変わるし。別にやましいことはしてないしね。」
大分時間が経ってしまった。まだ伝えることがあるのに。急がないと、足が付いてしまう。
「リック、詳しいことはアズに聞いて。時間がないから、大まかに教える。」
「何をだ?」
「店の緊急ツールとか。」
リックに一通り教えて、クローン戦争用の隠し機能も教えた。その機能がなければ、安全に営業はできなかった。何より、シールドも一筋縄じゃない。
「じゃあ、任せたよ。」
「サム」
「ん?」
「気を付けろよ。」
「うん、ありがとう。」
船を降りて、私はまた人混みに紛れる。
やはりというか、当然だが、私が去って数時間後に帝国軍が店に来た。話を聞いたのは半月後で、それも噂としてだけど、事実だろう。だけど、営業は問題なさそうだ。
半月経った今も、普通に営業しているのだから。
リックはお願いした通り、私の方針に従い、営業許可も取っているようだった。
「寂しいなぁ。」
とある惑星にある灯台から、港に停泊している船、〈ホーガ・フォレスト〉を見下ろす。
あの忙しい毎日が恋しい。
リックは出入り口で、いつも通り接客していた。そんな彼を見て、私も店に戻りたくなる。でも、今日来たのは確認の為だ。しばらくは来るべきじゃない。
帝国の、皇帝の関心が薄れるまで、私は身を隠していよう。
その日は、きっと来るだろうから。
サムの子供は……?
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父親(次章で登場)と一緒にいる。
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カリと一緒にいる。
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カーターと店にいる。
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その他(活動報告や感想へ)