【完結】退職(無断)したので、飲食店やります。   作:夭嘉

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営業方針は変えません

ヴォスの来訪から丸一日。

 

私の店は日常を取り戻した。だけど、どことなくおかしい。静かすぎる。嵐の前の静けさというか、津波が来る前というか。

 

逆に何もないのがおかしい。

 

ヴォスが来たのに、ジェダイ・オーダーが何も動かないのは不自然すぎる。

 

 

「サム、どうした?」

「何でもない。ちょっと!あんたは立ち入り禁止!」

「なんでこいつらは良くて俺はダメなんだよ!」

 

 

ホンドーとその手下達が来店したが、私はホンドーをドア手前で止める。

 

手下達がゾロゾロ入っていく中、ホンドーは私の対応に不満顔を見せる。

 

 

「ホンドー、私の店で何をしたか忘れたわけ?」

「俺は何もしてねぇぞ!」

「ふぅん?あんたの座ってた席にデス・スティックがあったけど?」

「俺のものだと断言できるのか?」

「もちろん。」

 

 

最近分かったことだけど、私もヴォスと同じように、物に触れた人の記憶を読み取ることができる。だから忘れ物とか、誰のものか分かる。デス・スティックも、その能力でホンドーのものだと知った。

 

 

「私の店のルールは知ってるよね?スパイスとか持ち込んだら出禁だって。ルールを破る奴は客じゃないから。」

「俺無しで楽しもうってのか!?」

「そういうこと。」

 

 

私は表情変えずに告げると、ホンドーはブラスターに手を添える。

 

深い溜め息を吐き、私は彼らにチャンスをあげることにした。

 

 

「一度しか言わない。死にたくなかったら手下を引き連れて帰れ。」

 

 

少し顔に出ていたらしい。手下達が私の顔を見て、表情を固くさせる。ホンドーも、私が怒り始めていると気付いたようだった。

 

ここは私の店だ。

 

私がルールで、守らない奴は客じゃない。

 

 

「………野郎共、引き上げだ。」

 

 

手下達は命令に従い、店を出て行く。その間も、私とホンドーは睨み合っていた。手下が全員出て行き、最後にホンドーが出て行く。

 

一瞬、ホンドーは立ち止まる。

 

 

「迷惑かけたな。」

 

 

それだけ言って、ホンドー一味は帰っていった。

 

客が安堵しているのが分かり、私はお客様に向けて謝罪した。元はと言えばホンドーが悪いけど。でも、この先もルールを変える気はない。

 

 

「サム様、念の為に発信機を仕掛けておきました。」

 

 

アズがこっそりと報告してくる。

 

指示はしてないけど、タチの悪い客にはアズの判断で発信機を仕掛けさせている。私はそのシグナルを避けて、営業行脚している。他に避けているのはハット・スペースと、コルスカ宙域、アケニス宙域だ。

 

ハットとは関わりたくないです。

 

 

「ありがとう、アズ。」

「二度と来ないといいですね、あんなクズ。」

「アズ、言い過ぎ。」

「失礼致しました。では、テーブルを片付けてきます。」

 

 

アズはいつもは紳士的だけど、時々毒を吐く。アズルナ20の人格プログラムを作ったのは私だけど。変なのを呼び寄せる前に、調整した方がいいかな。

 

 

「サマンサ」

 

 

タンバーの久しぶりの来店に、私は少し驚く。ヴォスとあんなことがあったのに、全然平気そうだ。ここの常連だってバレてるのに。

 

とりあえず、タンバーをカウンター席に案内した。

 

 

「先日は大変失礼した。」

「逮捕されたんじゃなかったの?」

「確実な証拠などない。故に、私を捕らえることは不可能だ。」

「へぇ。」

 

 

酒を出すと、タンバーはグラスを受け取った。

 

スカコアンって与圧服を着てるけど、どうやって飲んでるんだろう。

 

 

「先日あのジェダイから話は聞いているか?」

「大体はね。アミダラ議員を暗殺してまで、戦争したいの?」

「戦争はビジネスだ。戦争が起きれば、武器やドロイドが売れ、我々は利益を得る。」

 

 

金の問題か。

 

この問題は、前世でもあった。私のいた世界では、“軍需産業”と呼ばれていた。戦争が無くならない最大の理由が、金儲けの為だ。

 

でも、被害を被るのは何の罪もない民だ。権力者の欲のせいで、民は苦しむ。権力者は飢えを満たし、民の苦しみなんて見向きもしない。

 

これは、私がオーダーを抜けた理由の1つでもある。

 

悪循環の中に組み込まれたくはない。

 

 

「あのジェダイとの会話から察するに、元ジェダイなのだろう?私が不快だろうな。」

「え?別に?」

「は?」

「私は店を守る為に、“客”の事情は深掘りしないの。だからあんたが不快だとか、嫌いだとか、そんなこと思ってない。営業の邪魔さえしなければいい。」

 

 

ジェダイでもなく、ダーク・ジェダイでもない。私は真っ当に生きると決めたんだ。間違った選択は絶対にしない。

 

 

「私はあくまで客ということか。」

「そうだよ。でも、変な奴連れてこないでよね。特にニモーディアンとか。」

「ガンレイ総督か?」

「そうそう。店の評判にも関わるから。」

 

 

気が付けば、タンバーのグラスは空だった。

 

いつ飲んだ………?

 

 

「では、私は仕事に戻らねば。」

「オッケー。じゃあまたね!」

 

 

タンバーはクレジットを置き、帰って行った。

 

店を閉めた後、私はコックピットにあるライトセーバーを見つめる。

 

一時は、カイバークリスタルを売ってしまおうかとも思った。ジェダイはやめたし、ライトセーバーは必要ないから。それなのに、どうしても手放せなかった。

 

気付いてないふりをしているけど、自分の中に暗黒面がチラついたから。もし私が暗黒面に呑まれても、ライトセーバーを持っていれば、ジェダイの誰かが止めてくれる。心の奥で、一瞬そう思ったから。

 

戦争は人を変える。

 

私は、私のままで在りたい。

 

 






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(明日から仕事)

サムは独身を貫くべきか否か?

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