無断で潜入調査を始めて、何日か経った。
私は着任前のトルーパーの1人を殴り倒し、ちょっと脅して、アーマーを奪ってスローン大提督の旗艦に潜り込んだ。そのトルーパーのシフトを聞き出し、私は何事もなかったかのようにしれっと隊に戻った。
トルーパーに扮して、私はスローンの旗艦内で時が来るのを待った。
相方のトルーパーと休憩中していると、私達は担当の持ち場へ向かう。艦内はアラートが鳴り響き、慌ただしくなった。走りながらも、相方は話しかけてくる。
「何事だろうな?」
「さぁ?」
向かいがてら外を見ると、艦隊はアトロンの軌道上にいた。
ようやくその時が来た。
エージェント・カラスが捕まり、スローンはチョッパー基地を見つけたらしい。
「そこの2人!私と来なさい!」
「はい!」
偶然遭遇したプライス総督に声をかけられ、私達は彼女に同行する。私達はプライスの護衛兼副官として任命され、コマンダーに報告した。そのままブリッジまで付き従い、中に入ると既にカラスが拘束されていた。
スローンとプライスが指揮している中、カラスは私を凝視する。
「何を見ている?」
相方がカラスに問うが、何でもないと言う。スローンとプライスはそれに気にかけることもなく、戦いに集中していた。だけど、カラスだけは私を見ていた。
なんで見てくるのかは分かる。
帝国保安局にいたカラスにとって、私は違和感だらけだろう。比べて、他のオペレーターやトルーパー、プライスは気付きはしない。ここに尋問官やヴェイダーがいたらアウトだったけど、彼らがいない限り滅多に見つからない。
スローンすら、私を気にかけない。
「おいお前達、交代の時間だ。」
カラスの両脇にいたトルーパーが離れ、監視は私達になった。
戦いが激化した後、コムルク級ファイターが封鎖を突破した。あれに乗っていたのはエズラだ。援軍を求めて〈ゴースト〉やら〈リベレーター〉に援護され、脱出した。
スローンとプライスは失態をした。
やがて、フェニックス艦隊は地上へと撤退していった。
「私も地上へ行く。他の反乱者共は絶対に通すな。」
「お任せを。」
スローンが出て行き、軌道上は静かになった。
正直言って、ここでは何もやることがない。
「お前欠伸しただろ!」
「してないよ。あんたこそ、もっと緊張感持ったら?」
小声のやりとりをしていると、カラスの視線を感じた。
「気を付けた方がいい。油断していると、痛い目に遭うぞ。」
「黙れ!」
相方が小声でカラスに言い返す。幸い、プライスには聞こえていないようだった。聞こえていたら、いろいろ面倒だ。
「あのー、発言してよろしいでしょうか?」
「言いなさい。」
「さっきのコムルク、逃がして良かったんですか?」
あえて聞いてみる。前の世界でも思ったけど、帝国ってガバガバすぎるよね。だからあえて聞いてみようと思ったんだ。
「援軍を連れてきたところで、たかが知れている。」
「左様ですか……」
言ってる間に、アトロンの自然に違和感を感じた。会ったことはないけど、あれはベンドゥだ。ベンドゥが反乱組織諸共、帝国軍を攻撃している。
そして、エズラも戻ってきた。
エズラとサビーヌ達はインターディクターへ攻撃を始めた。
「何を手間取っている!?」
プライスは怒りに声を張り上げる。彼女が激しく激昂しているのが分かる。プライドも高い人だから、自軍の失態を許せないんだろう。
「失態だな。スローンは相当腹を立てるだろう。」
カラスのわざとらしい台詞に、プライスは彼を睨む。
「この裏切り者をエアロックから放り出しなさい!!」
私と相方でカラスを引き摺り、ブリッジを出て行く。
これで、邪魔者はいない。
私は相方に気付かれないように、カラスの錠を解く。カラスは驚いた顔をするが、何も言ってこなかった。エレベーターが開き、私達は中に乗り込んだ。
ドアが閉まった瞬間、私は相方にマインド・トリックをかける。
「捕虜はエアロックから放り出した。」
「エアロックから放り出した……」
「任務は終わった。」
「任務は終わり……自室に戻る。」
虚状態になった相方を見て、カラスは訝しげに私を見る。
「何をした?」
「マインド・トリック。ジェダイの技でちょっと難しいんだけど、こうも簡単とはね。」
ヘルメットを外すと、カラスは納得したようだった。
「あんたか。」
「何?」
「変装するならもっと上手くやれ。スローンに気付かれなかったのは運が良い。」
「これでも時間をかけた方だよ?ほら、逃げるよ。」
エレベーターから降りて、私は脱出ポッドとは反対方向へ向かおうとする。
その私を、カラスは慌てて止めた。
「どこへ行く!?」
「荷物を取りに行くだけ。先に行って。すぐに追い付くから。」
予め隠しておいた荷物を手に取り、私はカラスがいる脱出ポッドエリアへ向かう。荷物の中身は、私服だ。つまり、着替えだ。
だって、ずっとトルーパーのアーマー着ていたくないし。
「お待たせ!っていうか、先に脱出してても良かったのに。」
私が脱出ポッドに荷物を放り込むと、カラスが怒鳴ってくる。
「放置できるか!さっさと乗るんだ!」
「はいはい。」
カラスと一緒にポッドに入り、彼は射出ボタンを叩く。それから私は荷物を開け、私服を取り出してアーマーを脱いだ。そこで、カラスが慌てて後ろを向く。
「バッ……何をしている!?」
「着替え。〈ゴースト〉に遭難信号を送って。」
「勘弁してくれ……」
念の為に言うけど、下着姿じゃない。下は黒いシャツとボトムスを着てる。じゃなきゃこんなところで脱がない。
しかも私既婚者だし。
カラスは溜め息を吐きながら、遭難信号を〈ゴースト〉に送る。
「あ、来た。」
「少し黙ってくれないか?」
「ごめんって。」
「潜入までして何をしていた?私を助ける為だけじゃないんだろう?」
「それは無事に離脱してから話すよ。」
脱出ポッドは〈ゴースト〉に回収され、フェニックス艦隊は次々にハイパースペースへ入る。
無事に離脱した後、ヘラ達に詰め寄られたのは言うまでもない。
潜入については、後日話すこととなったのだった。