数日後。
私は1人で帝国軍を相手にしていた。
「撃て!逃がすな!」
ミッド・リムにある帝国管理下の惑星で、私はわざと追い込まれるように逃げ回っていた。
その理由は、フォースの意志に問う為。
もし私がここで死ぬとしたら、フォースの意志は私を見限ったということだ。フォースの意志が働かなければ、死ぬしかない。逆の場合は、何かが起こる可能性がある。
なぜこんなことをしているのかと言えば、反乱組織に拒まれたからだ。彼らは、私を仲間ではなく、ジェダイ要員として作戦から外した。
私がここで行動を起こして、フォースの意志が働けば未来は変わるかもしれない。
ヘラとケイナン、みんなを救えるなら命を懸ける。
「増援を呼べ!急げ!!」
「危ない!!」
「っ!!」
テレキネシスで留め具を外し、将校の近くにコンテナを落とす。その隙にコンテナに跳び乗りグレネードを落として、将校を越えて軍事レーンへと飛び降りた。上では爆発が起こり、視界が悪くなっているはずだ。
軍事レーンを飛ぶタンクに着地すると、トルーパーがわらわらと出てくる。
ここは、コルサントのように発展した都市惑星だ。警備は少なくない。私は一番高いビルを目指して、トルーパーを誘導するように逃げ回った。
グレネードは使い尽くして、所持しているのは懐にある装置だけ。
「動くな!!」
終着点、もといビルの屋上に着き、私は包囲された。
辺りには帝国軍のトランスポートや、いくつかの偵察ドロイドが浮かび、屋上にはトルーパーが駆け付けた。
焦りを見せない私に、コマンダーは動揺していた。
その後、息を切らせた将校が追い付いてきた。見たところ、階級は大尉だ。軍服が綺麗だから、昇級したてらしい。
「サマンサ・ホーガン!ついにイカれたか!?」
「失礼な。至って正気だよ。」
「では、これは一体何の真似だ?」
大尉は辺りを見渡しながら、私に問う。
誰が見ても、私は正気じゃないと思うだろう。でも、私は正気だ。あえてこの状況にしたのだから。
「これが狂気の沙汰じゃないのなら、何だ?1人で我々と戦う気だったのか?」
「聞きたいことはそれだけ?」
「何?」
「私の思惑に乗ってくれて感謝するよ。」
「っ!?退避だ!全員ここから離れろ!!」
私は懐から“起爆”装置を取り出し、スイッチを押す。
その瞬間、仕掛けた爆弾が一斉に爆発して、私と将校が立つビルが崩壊し始める。
私は慌てることなく、避難する帝国軍を見つめる。将校は指示を出すが、抵抗虚しく崩壊するビルに巻き込まれていった。彼は顔色一つ変えない私に、声を張り上げる。
「この……死に損ないがあああああっ!!」
その怒声を背景に、私は目を閉じる。
後悔はしてない。唯一の心残りは、反乱組織にいる娘と、ロザルにいる旦那だ。いや、みんな心配だ。カリも、リックも。エズラやケイナン、ヘラ達も心配だ。
死なないってヘラに言ったけど、本筋を歪めるにはこうするしかなかった。
もしまた会えるなら、“ごめんね”と“ありがとう”、両方を伝えたい。
────────
その1週間後、ヤヴィン4の司令部は深刻な表情を浮かべていた。
反乱組織との決別を選んだサマンサは、ミッド・リムの都市惑星で、帝国軍を巻き込んで心中を図ったのだ。
ホロニュースでは映像と共に、瓦礫に跡形もなく潰されたと報じられていた。その他将校やトルーパーの遺体と同じく、サマンサの遺体も発見は困難だと説明された。瓦礫は崩れただけでなく、爆発で燃えたからだ。更に、帝国の報道官は彼女はあの時正気ではなかったと、個人的な意見を溢した。
それは、司令部の面々も同じだった。
そして、司令部はこの訃報をカリやレスリーにどう伝えるか思い悩んだ。
「ペレスに伝えるのは良いが、御息女に伝えるのは気に病むな。」
「ですが、あの子にも知る権利があります。」
高齢の議員の言葉に、中年の女性議員がそう返した。
モスマは、彼女に同意する。
「その通りです。伝えましょう。」
そこへ、カリが任務から戻って司令部に顔を出しに訪れた。
重い空気感が漂う司令部に、カリはただならぬ予感を察する。
「何かあったんですか?」
「落ち着いて聞いてください。先程、ミッド・リムでサマンサが亡くなりました。」
「え……」
「帝国のホロニュースで、報道されていました。帝国軍を巻き込んでの心中だそうです。」
「………」
カリは、どこか納得したような顔をしていた。それに気付いたモスマは、カリに知っていたのかと問う。カリはその問いに、静かに頷いた。
「サムが消えたのを感じたんです。理由が分からなかったけど、そういうことだったんですね。私の思い込みが間違ってればいいのにって、祈ってた…でも………」
悪い予感は的中した。
カリはそう言って俯く。だが、すぐに顔を上げてモスマを見る。彼女の懸念は、レスリーだった。
「レスリーには話しましたか?」
「いいえ。しかし、真実は告げるべきでしょう。」
「はい。あの子も、死が分からない歳じゃありません。レスリーには私から話します。」
「それと、悪い知らせがもう一つ……」
モスマが告げた訃報に、カリは膝から崩れ落ちる。
親友に近かった“ケイナン・ジャラス”が、ロザルで死亡した、と。
一気に大切な人を2人も喪ったカリは、両手で顔を覆う。
サマンサが反乱組織を離れた後、ロザルの襲撃作戦は滞りなく決行された。しかし、ヘラが帝国軍に捕まったことで、歴史が確定してしまった。彼女を助けに行ったエズラ達は燃料の爆発に遭い、ケイナンが命を懸けて彼らを逃したのだ。
ロザル襲撃作戦は、サマンサがミッド・リムで逃げ回った後のことだった。
サマンサの努力虚しく、ケイナンはフォースに還ったのだ。
そして、同じように訃報を聞いたレスリーは、年相応に子供のように泣いて悲しんだ。姉同然のカリに抱き付き、サマンサとケイナンを恋しがった。カリは何も言わず、レスリーの頭を撫でて優しく慰めた。クローン戦争の時に、サマンサがカリにしたように。
2日後のホロニュースでは、サマンサが爆破したビルの撤去作業が大方完了したと報道された。
爆発の炎で瓦礫が燃えたこともあり、その中からトルーパーなどの遺体はほぼ発見されることはなかった。
燃えた瓦礫から見つかったのは、熱で歪んだ数個の白いヘルメットと、サマンサが身に着けていたヘアバンドの残骸のみ。
その光景が、反乱組織に現実を思い知らせたのだった。