全ての常連にメッセージを送って、翌日。
〈ホーガ・フォレスト〉は常に満席で、営業再開してすぐに忙しくなった。
反乱同盟軍の評議会、特にモスマ議員には反対されたけど、私は店に戻ることを決意した。そして、帝国ができる前のように営業を再開した。常連は私の帰りを喜んでくれて、売上は過去一最高の数字を叩き出した。
だが、売上は同盟軍には回さない。店から同盟軍に資金を援助すれば、〈ホーガ・フォレスト〉の中立の立場を守れない。だから、その日の売上は船の改善費に回した。
マスター・ヨーダから受け取った機密の1つを、私的に使うことにした。
それは、ジェダイ寺院の構造や仕組みについての機密だ。リックやカリにも教えられないものだ。その機密の1つを、〈ホーガ・フォレスト〉に使った。
客に向けて言った“悪意ある者は入店不可”というのは、ジェダイ寺院の仕掛けを使う故の言葉だ。
帝国に、私の店を荒らされたくないから。
「サム!久しぶりだな!」
「久しぶりじゃん!元気だった?」
「ああ。なぁ、聞きたいことがあるんだが、俺のダチが店に入れなかったが何かしたのか?」
「あー、それね。悪意があると店に入れないんだ。もしかして、店を荒らそうとしてなかった?」
私が聞くと、友人はそのつもりだったらしい。実はこの常連、元々分離派の人で、今は帝国軍人なんだけど、同じ帝国軍人の友人とは違って純粋に来店してくれる常連だ。その友人は私の店の話を聞いて荒らそうとしていたらしく、船に弾かれて怒りながら帰ったそうだ。
常連の彼は呆れたそうだけど、友人の怒る姿を見て、店に入れなくて安堵したと言う。
「ここは俺の憩いの場でもあるからな。逆に入れなくて良かったよ。」
「心配してくれてありがとう。サービスはできないけど、歓迎はするから。」
「相変わらずサービスはないのか。」
「ない。」
「即答か。」
厨房に戻ると、リックが忙しく動き回っていた。
最初の頃こそリックは不器用だったけど、今じゃ頼りになるオーナー代理だ。私が空けていた間も、何度も店を回してくれてとても有難い。最初は笑っていたアズも、今はリックを信頼している。
私も、リックへの印象が変わった。
彼は大切な人の1人になった。
「リック、今までありがとう。」
「なんだ?クビか………?」
「違うよ。お礼が言いたかっただけ。」
「?」
その時、シーロスにいるヘラから連絡が入った。
アズに呼ばれてコックピットに入り、私はホロ通信を繋ぐ。プロジェクターを立ち上げると、ホログラムにヘラが映った。
ようやく、戦いが始まるんだ。
『サマンサ』
「分かってる。私も行く。」
『ありがとう、サマンサ。』
通信を切ると、後ろから肩を叩かれた。
「ママ?」
「レスリー!?驚かせないでよ……」
「どこか行くの?」
「なんで?」
「私も行くって、誰に言ったの?」
どうやら、通信相手は誰なのか知らないらしい。でも、“行く”って言ったから訝しげに見てきている。できれば、レスリーにはあまり言いたくない。
でも、レスリーにも知る権利はある。
「ロザルの襲撃作戦だよ。」
「え!?私も行く!」
「言うと思った。」
「来るなって言うなら、勝手に付いてくよ!」
「言わないよ。」
「え?」
レスリーは私の言葉に驚く。てっきり、置いていかれると思ったらしい。本当は置いていきたいけど、私はもう誰も置いていかないと決めている。
「本当に?」
「うん。でも、レスリーはエズラの指示に従って。」
「ママの指示じゃないの?」
「私がいない間に、エズラと親しくなったんでしょう?だから、エズラに指示を聞いて。パパも来るから。」
「分かった。」
レスリーを先に行かせて、私はリックに声をかける。
リックには、店を任せてばかりだ。だから、ちゃんと話をしなきゃいけない。“必ず帰る”ということを。
「レスリーも行くのか?」
「………うん。」
「どうした……?」
「もうエズラに会えないかもしれない………」
「どういうことだ……?」
実は、私はエズラに今回の作戦を聞いていた。プライスを利用すること、スローンをロザルから遠ざけたいこと、パーギルに助けを呼ぶこと。パーギルと聞いて、私はその時が来たと思った。
だから、レスリーのワガママを受け入れた。
レスリーはもうエズラに会えなくなってしまうから。
「フォース・センシティブの予期だよ。」
「サム………」
「レスリーには言わないで。」
「おい、」
「私はジェダイじゃないの。確かなことは言えない。だから言わないで。」
「………分かった。」
迎えに来た〈ゴースト〉に乗り込み、私はコックピットに入る。
コックピットにはカラスとレックスもいて、私を拾ってこれからシーロスに向かうという。
「カラス久しぶり。」
「おじさん久しぶり!」
「レスリー、いくら本当のことでも口にしちゃダメだよ。」
「でも嘘は良くないよ?」
「お世辞という言葉があるでしょ。」
「分かった!お兄さん!」
「そのやりとりを目の前でやった後に言うな!」
〈ゴースト〉はハイパースペースに入り、私はケイナンが使っていた部屋でライトセーバーのメンテナンスをする。
そこで話し声が聴こえて、メンテナンスを中断して耳を傾けた。話しているのはレックスとレスリーで、レックスが何かを教えているみたいだった。気になって聞いていると、2人は格納庫へと降りていく。
盗み見すると、レックスは娘に戦い方を教えていた。
教えているのは、ライトセーバーの振り方だった。
ひと段落すると、レックスは休憩を挟んだ。
「レスリー、母親に訓練を頼まなかったのか?」
「だってママ、嫌がるんだもん。」
そう、私は娘に何度か頼まれたけど、カリと過ごして、またあんな思いをするのはもう嫌だと断った。それはカリも同じで、カリもレスリーの頼みを断っている。訓練を受け入れたのは、アソーカただ1人だけ。
レスリーのカイバークリスタルは、アソーカと寺院に行った時に手に入れたものだ。
「カリも嫌がるのか?」
「うん……」
「しかし、自分で本当に良かったのか?ライトセーバーの動きを見たまましか教えられないが……」
「いいの。ジェダイのアナキン・スカイウォーカーをお手本にしたいんだ。彼、とても強かったんでしょ?」
「ああ。」
レスリーの中で、アナキンは憧れみたいだ。カリがアナキンのことを教えたらしく、私はレスリーに何度も話をせがまれた。当時のアナキンを知る者は、私も含めて数少ない。
2人は、アナキンの最期を知らない。だから楽しく話しているけど、私はそうもいかない。アナキンとの最後の会話は、最悪なものだった。
アナキンの話をされる度に、私は息苦しさを感じていた。
「レックス、私も参考程度に捉えるから。だから気にしないで。」
「無茶はするんじゃないぞ。」
「もちろん!」
そう言って、2人は訓練を再開した。
私はその場をそっと離れて、拳を握り締める。
レスリーもフォース感応者だ。私が元ジェダイだから、戦いは避けられない。私が娘にしてあげられることは、レスリーの意志を尊重することだけ。
身勝手な母を、どうか許してほしい。