ロザルの風が、背中に冷たく当たる。
準備ができたらしく、エズラが瞑想する私を呼びに来た。
「サマンサが瞑想するなんて珍しいね。」
「………そうだね。」
瞑想するのは、本当に数年ぶりだった。最後に瞑想をしたのは、レスリーを旦那のところに預けた時だ。瞑想で、望まないものが見えるのが怖かったんだ。
「すぐ行くよ。」
「分かった。」
エズラは戻ろうとするけど、それをやめて、踵を返す。
「ねぇ、俺が何を考えてるか知ってるんでしょう?」
「どうしてそう思うの?」
「狭間の世界で、アソーカの言っていたことを思い出したんだ。サマンサはケイナンのことも知っていたから、俺のことも知ってたのかなって………」
この子は妙に勘が良い。些細なヒントで、答えに辿り着く。良いことだけれど、私のことには無関心でいてほしかった。
「答えは言えない。でも、エズラがどうするつもりなのかは察してる。ロザルはエズラの故郷だから。」
「サマンサ………」
「ほら、行くよ。」
呼びに来たエズラを置いていくように、私は彼を追い越してヘラ達のところへ戻った。
「どうしたの?」
サビーヌの友人、ケツーが私とエズラの神妙な空気に尋ねてくる。
「何でもないよ。フォース感応者同士の話をしただけ。」
「フォース感応者同士の話……?」
「気にしないで。」
トランスポートに乗り込み、私とレスリーは捕虜役に回った。トリーは留守番してもらった。彼とウォルフ、マートにはお迎えという大事な役割がある。
着艦した後、ゼブが暴れ始めたら作戦開始の合図だ。
「サマンサ!危ない!!」
発進して少ししてからのことだった。
サビーヌの声に私は振り向くが、既に手遅れだった。
「ママ!!」
ジェット・パックを着けた誰かがトランスポートに突っ込んできて、私は外へ突き落とされた。落ちる前にワイヤーを飛ばして、何とか近くの送電塔にぶら下がる。ワイヤーを外してゆっくり降りると、私を落とした奴が追ってきた。
男はマスクを着けていて、素性が分からない。
「あんた、帝国の刺客?」
「ある意味ではな。」
すぐにヘラ達から通信が入るが、出るのを躊躇った。
だが、目の前の男は出ろと言う。
「別れの挨拶をしろ。」
「お別れの意味分かってる?私はお別れはしないよ。」
鼻で笑ってやり、私は遠慮なく応答する。
『サマンサ!』
通信機から聴こえた声の相手は、エズラだった。
「エズラ、私は大丈夫。」
『サマンサ、』
「戻らなくていい。必ず追いかける。」
『………分かった。信じるよ。気を付けて。』
「ありがとう。」
通信を切断した後、私は通信機をテレキネシスで壊す。
その行動に、男は驚いていた。
「なぜ破壊した?」
「あんたに奪われない為。」
「何………?」
「で、あんた誰?」
男は私の問いに答えず、マスクを外す。
その素顔に、私は納得してしまった。
「あぁ、あんたか。」
「ずっとお前を憎んできた。だが、俺は自由を手に入れたんだ。皇帝陛下のお陰でな。」
「一番信用しちゃいけない相手を信用したんだね、ジェラルド・ミラー。」
そう、襲撃者の正体はジェラルド・ミラーだ。
当然あの頃より老けているが、殺意は本物だ。何より、私への憎しみを感じる。長年私を憎み続けてきたようだ。
「信用?皇帝陛下はただの取引相手だ。」
「皇帝を甘く見ると、痛い目に遭うよ。」
「お前と一緒にするな。」
「それで?次は?」
「何の為にここまで来たと思う?お前に復讐しに来たんだ。」
やっぱりそうか。
私が憎くて憎くて、その憎しみを皇帝は利用したんだ。どちらにせよ、私は帝国にとって目障りな存在だ。いや、シスにとっても厄介な存在だ。
自分の手を汚さなくていいなら、皇帝は何でもするだろう。
「じゃあ殺してみたら?簡単には殺されないよ。」
「あの小娘と同じことを言うのか…!」
「何だって?」
「出所してすぐ、俺はカリ・ペレスを探し出して殺しに向かった。」
「は!?」
カリが、ミラーと一線交えてたなんて知らなかった。
「だが、俺には殺せなかった。」
「カリが可愛くて情が湧いた?」
「馬鹿にしてるのか?そうじゃねぇよ。」
ミラーがコートを脱ぐと、両腕がサイボーグになっているのが露わになった。どうやら、カリに両腕を切り落とされて情けをかけられたらしい。あの子を褒めてあげたいところだけど、この男の辞書に“改心”という言葉はない。
「この腕は皇帝陛下にもらった。お前を殺す代わりにな。」
「………お悔やみを言うよ。」
「何だと……?」
「今度は私が選ばせてあげる。助かりたいなら、その腕を捨てて逃げて。」
「逃げる?怯えて逃げるのはお前だ。」
「忠告はしたからね。」
ミラーは、ナイフを両手に持って構える。
何年かぶりに瞑想して、ミラーが私にブラスターを向けるヴィジョンが見えた。それが近い未来のものだとは思わなかったけど、これもフォースの定めなのかもしれない。だけど、この戦いに関しては嫌な予感はしない。
これはけじめで、1つの区切り。
カリがミラーを返り討ちにして、私達は成長したのだと安堵した。
私とカリは、しっかり前に進んでいる。