【完結】退職(無断)したので、飲食店やります。   作:夭嘉

76 / 109
密かな願い

よく見ると、下にルクがいる。

 

どうやら崖下から這い上がって、ガンシップに乗って追いかけてきたらしい。

 

嫌な予感はしないから、トリー達は無事なはずだ。

 

 

「エズラは?」

「〈キメラ〉だ。」

「やっぱりそうなったんだ……」

「こうなると知っていたのか!?」

「フォースの予期だよ。それにしても、撃っても撃っても切りがないね。」

「橋は出したのに、トルーパーの数が多すぎるんだ!」

 

 

憤ったカラスの言葉に、私は嫌になってきた。帝国のトルーパー、射撃下手なくせに数多いのが腹立つ。本当に訓練したのか怪しすぎる。

 

まぁ、経験が少ないトルーパーが多数だから仕方ないか。

 

 

「どうする?」

「何か思い切った策が必要だな!」

 

 

グレガーが声を張り上げる。

 

そこで、ゼブがアニメと同じように、

 

 

「サマンサ」

 

 

同じじゃなかった。

 

ゼブは私を見る。

 

 

「ど、どうぞ?」

「違う!あんたの力で、俺を押してくれ!」

「はぁっ!?」

「待て!ゼブ!!」

 

 

ゼブは、全力でルクに向かってダイブする。

 

もうどうにでもなれ。

 

ゼブをフォース・プッシュして、勢いを加速させる。その勢いで、ゼブはルクにタックルして一騎討ちになった。私達3人は一瞬唖然となるが、すぐに我に返る。

 

 

「どうかしてるぜ!」

「あんたが言い出したんだろう!」

「………」

「おい、まさかあんたもか……!?」

 

 

カラスは私の表情を見て、嫌そうな顔をする。

 

 

「大したことじゃないよ。」

「絶対にダメだ!!」

「まだ何も言ってないよ?まぁ、やるけどね。」

 

 

私は集中して、ルクがいたところのトルーパーに意識を向ける。それから、テレキネシスでトルーパーを浮遊させた。もちろん、ただ浮遊させただけで終わりじゃない。

 

あえてテレキネシスをやめると、トルーパーは悲鳴を上げて真っ逆様に落ちていく。

 

高いところから落ちたトルーパーは、完全に伸びていた。

 

 

「グレガー!!」

 

 

みんなが私に気を逸らした隙に、ガンナーがグレガーを撃つ。すぐにそのガンナーを撃ち倒すけど、もう手遅れだった。

 

 

「早くシールドを立ち上げろ……!」

 

 

グレガーは駆け寄るカラスを払い、私にも構うなと言う。

 

シールドを立ち上げたいけど、ゼブはまだルクと交戦中だ。

 

 

「ゼブ!早く!!」

「俺を待たなくていい!!」

「ゼブ!!!」

「早くしろ!!!」

 

 

ゼブの怒声に、カラスはシールドを手動で立ち上げる。

 

シールドが起動する音に、私は安堵した。

 

 

「ゼブ生きてる!?」

「俺は大丈夫だ。」

「どこへ行く!?」

「シールドは立ち上がったから、撤収するんだよ。」

「待て!」

 

 

私は走り、ヘラ達のいる管制室を目指す。

 

その途中、誰かに腕を掴まれて、私は何かの部屋に連れ込まれた。

 

咄嗟に相手の手首を捻り上げ、背負い投げる。相手は床に叩きつけられて呻き、私に待ったをかけた。当然待つ気はなく、私は相手に銃口を向ける。

 

その時、外でトルーパーの会話が聴こえた。

 

 

「見つけたか!?」

「いや、いない!部屋を隈無く探そう!」

 

 

その会話に、鼓動が早くなる。

 

そこに私を止めた男が出て行き、トルーパーに声をかけた。

 

 

「大尉!?」

「ご無事でしたか!」

「ああ。形勢が不利だったから隠れていたんだ。」

「我々がお供します。ご安心を。」

「いや、私は1人で問題ない。反乱者共はブリッジとターミナルで二分している。お前達は構わず応援に行け。」

「イエッサー!」

 

 

トルーパーはこの部屋に入ることなく去っていった。

 

男は部屋に戻ってくると、ブラスターを向けたままの私に苦笑する。

 

 

「銃口を下げてくれ。」

 

 

私を止めた男の顔をよく見ると、〈ホーガ・フォレスト〉の古株の常連だった。しかも最近来なくなった客で、今は帝国宇宙軍の大尉だ。

 

男に敵意はないと分かり、私はブラスターを下ろした。

 

 

「将校だったんだね。」

「あんたは気にしないだろ。」

「そうだね、気にしないよ。でも、この状況は本来なら私を拘束する立場でしょ?」

「そうだ。だが、私はもう全てを清算することにしたんだ。」

 

 

“清算”という言葉に、彼の覚悟を感じた。

 

 

「帝国から離反することにしたの?」

「違う。文字通り、このドームと運命を共にする。」

「え……?」

「スローン大提督から聞いて、私も潮時だと思ったんだ。この戦いは、そっちに運がある。私はもう疲れたよ。それにサム、あんたには感謝してる。いろいろありがとうな。」

 

 

悲しみと悔しさで、気持ちがぐちゃぐちゃになる。

 

それを察したのか、彼は謝ってきた。

 

でも、謝られても意味がない。彼が決めたことだし、その決断の先に平穏はない。縋っても仕方ないと分かっているけど、一瞬でも夢であってほしいと思ってしまう。

 

 

「違う選択をしてほしかったよ。」

「ああ、分かってる。ほら、行くんだ。私ができるだけ時間を稼ぐ。」

「………ありがとう。」

「元気でな。」

 

 

部屋を出て、私はまた管制室を目指して走る。

 

走る途中、不思議な程にトルーパーがいなかった。彼がトルーパーを減らしたらしい。お陰でスムーズに管制室のあるエリアまで辿り着けた。

 

管制室まであと少し。

 

その瞬間、強いフォースを感じて止まった。

 

 

「………」

 

 

エズラと繋がった気がした。

 

だけど、肝心のエズラは〈キメラ〉だ。〈キメラ〉のブリッジで、エズラはスローンと対峙しているんだ。フォースの意志が、あの子を遠ざけようとしているようだった。

 

2人の緊張を感じて、私はこれから起こることに覚悟した。

 

エズラは私が気を向けていることに気付いたようで、私に意識を向けてきた。

 

 

「エズラ………」

 

 

エズラの意図に気付いて、私は心の中で別れを告げた。

 

そして、エズラは遥か遠くへ行ってしまった。

 

私は止めていた足を動かして、管制室に駆け込んだ。

 

 

「サマンサ!!」

「ママ!エズラが………」

「知ってる。」

「知ってるだと!?どういう、」

「それは後でいいから、早く脱出しよう。」

 

 

ヘラ達がドームを打ち上げる操作した後、私達は窓から脱出した。

 

マート・マーティンが操縦する〈ゴースト〉が迎えに来て、追ってきた僅かなトルーパーを撃ち倒しながら乗り込んだ。

 

やがてドームは打ち上がり、自爆してついに戦いは終わった。プライスは最後まで帝国側に付いて、ドームで終わりを迎えた。これで、ロザルはようやく帝国から解放された。

 

ヘラ達〈スペクターズ〉には、エズラからメッセージが残されていて、私は邪魔をしないようにそっとコックピットを離れた。

 

砲台の席に座り、歓声を上げるロザルの民を見ていると肩を叩かれた。

 

 

「ママ」

 

 

レスリーが弱々しく声をかけてくる。

 

 

「どうしたの?」

「エズラがいなくなるって、知ってたんでしょう?」

「ただの予感だよ。」

「予感でも、言ってほしかった。」

「レスリー………」

「寂しいよ………」

 

 

レスリーは抱き付いてきて、私の肩に顔を埋める。我慢していたのか、嗚咽を漏らしていた。しっかりした娘だけど、まだまだ子供だ。

 

悲しませたことに、罪悪感を覚えてしまった。

 

娘を優しく抱き締め、何が娘の為になるのか何度も考える。

 

私のことはどうでもいい。娘の幸せが第一だ。トリーも同じ想いだろう。

 

娘には良い人生を送ってほしいと願うのは、当たり前の望みだと信じたい。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。