よく見ると、下にルクがいる。
どうやら崖下から這い上がって、ガンシップに乗って追いかけてきたらしい。
嫌な予感はしないから、トリー達は無事なはずだ。
「エズラは?」
「〈キメラ〉だ。」
「やっぱりそうなったんだ……」
「こうなると知っていたのか!?」
「フォースの予期だよ。それにしても、撃っても撃っても切りがないね。」
「橋は出したのに、トルーパーの数が多すぎるんだ!」
憤ったカラスの言葉に、私は嫌になってきた。帝国のトルーパー、射撃下手なくせに数多いのが腹立つ。本当に訓練したのか怪しすぎる。
まぁ、経験が少ないトルーパーが多数だから仕方ないか。
「どうする?」
「何か思い切った策が必要だな!」
グレガーが声を張り上げる。
そこで、ゼブがアニメと同じように、
「サマンサ」
同じじゃなかった。
ゼブは私を見る。
「ど、どうぞ?」
「違う!あんたの力で、俺を押してくれ!」
「はぁっ!?」
「待て!ゼブ!!」
ゼブは、全力でルクに向かってダイブする。
もうどうにでもなれ。
ゼブをフォース・プッシュして、勢いを加速させる。その勢いで、ゼブはルクにタックルして一騎討ちになった。私達3人は一瞬唖然となるが、すぐに我に返る。
「どうかしてるぜ!」
「あんたが言い出したんだろう!」
「………」
「おい、まさかあんたもか……!?」
カラスは私の表情を見て、嫌そうな顔をする。
「大したことじゃないよ。」
「絶対にダメだ!!」
「まだ何も言ってないよ?まぁ、やるけどね。」
私は集中して、ルクがいたところのトルーパーに意識を向ける。それから、テレキネシスでトルーパーを浮遊させた。もちろん、ただ浮遊させただけで終わりじゃない。
あえてテレキネシスをやめると、トルーパーは悲鳴を上げて真っ逆様に落ちていく。
高いところから落ちたトルーパーは、完全に伸びていた。
「グレガー!!」
みんなが私に気を逸らした隙に、ガンナーがグレガーを撃つ。すぐにそのガンナーを撃ち倒すけど、もう手遅れだった。
「早くシールドを立ち上げろ……!」
グレガーは駆け寄るカラスを払い、私にも構うなと言う。
シールドを立ち上げたいけど、ゼブはまだルクと交戦中だ。
「ゼブ!早く!!」
「俺を待たなくていい!!」
「ゼブ!!!」
「早くしろ!!!」
ゼブの怒声に、カラスはシールドを手動で立ち上げる。
シールドが起動する音に、私は安堵した。
「ゼブ生きてる!?」
「俺は大丈夫だ。」
「どこへ行く!?」
「シールドは立ち上がったから、撤収するんだよ。」
「待て!」
私は走り、ヘラ達のいる管制室を目指す。
その途中、誰かに腕を掴まれて、私は何かの部屋に連れ込まれた。
咄嗟に相手の手首を捻り上げ、背負い投げる。相手は床に叩きつけられて呻き、私に待ったをかけた。当然待つ気はなく、私は相手に銃口を向ける。
その時、外でトルーパーの会話が聴こえた。
「見つけたか!?」
「いや、いない!部屋を隈無く探そう!」
その会話に、鼓動が早くなる。
そこに私を止めた男が出て行き、トルーパーに声をかけた。
「大尉!?」
「ご無事でしたか!」
「ああ。形勢が不利だったから隠れていたんだ。」
「我々がお供します。ご安心を。」
「いや、私は1人で問題ない。反乱者共はブリッジとターミナルで二分している。お前達は構わず応援に行け。」
「イエッサー!」
トルーパーはこの部屋に入ることなく去っていった。
男は部屋に戻ってくると、ブラスターを向けたままの私に苦笑する。
「銃口を下げてくれ。」
私を止めた男の顔をよく見ると、〈ホーガ・フォレスト〉の古株の常連だった。しかも最近来なくなった客で、今は帝国宇宙軍の大尉だ。
男に敵意はないと分かり、私はブラスターを下ろした。
「将校だったんだね。」
「あんたは気にしないだろ。」
「そうだね、気にしないよ。でも、この状況は本来なら私を拘束する立場でしょ?」
「そうだ。だが、私はもう全てを清算することにしたんだ。」
“清算”という言葉に、彼の覚悟を感じた。
「帝国から離反することにしたの?」
「違う。文字通り、このドームと運命を共にする。」
「え……?」
「スローン大提督から聞いて、私も潮時だと思ったんだ。この戦いは、そっちに運がある。私はもう疲れたよ。それにサム、あんたには感謝してる。いろいろありがとうな。」
悲しみと悔しさで、気持ちがぐちゃぐちゃになる。
それを察したのか、彼は謝ってきた。
でも、謝られても意味がない。彼が決めたことだし、その決断の先に平穏はない。縋っても仕方ないと分かっているけど、一瞬でも夢であってほしいと思ってしまう。
「違う選択をしてほしかったよ。」
「ああ、分かってる。ほら、行くんだ。私ができるだけ時間を稼ぐ。」
「………ありがとう。」
「元気でな。」
部屋を出て、私はまた管制室を目指して走る。
走る途中、不思議な程にトルーパーがいなかった。彼がトルーパーを減らしたらしい。お陰でスムーズに管制室のあるエリアまで辿り着けた。
管制室まであと少し。
その瞬間、強いフォースを感じて止まった。
「………」
エズラと繋がった気がした。
だけど、肝心のエズラは〈キメラ〉だ。〈キメラ〉のブリッジで、エズラはスローンと対峙しているんだ。フォースの意志が、あの子を遠ざけようとしているようだった。
2人の緊張を感じて、私はこれから起こることに覚悟した。
エズラは私が気を向けていることに気付いたようで、私に意識を向けてきた。
「エズラ………」
エズラの意図に気付いて、私は心の中で別れを告げた。
そして、エズラは遥か遠くへ行ってしまった。
私は止めていた足を動かして、管制室に駆け込んだ。
「サマンサ!!」
「ママ!エズラが………」
「知ってる。」
「知ってるだと!?どういう、」
「それは後でいいから、早く脱出しよう。」
ヘラ達がドームを打ち上げる操作した後、私達は窓から脱出した。
マート・マーティンが操縦する〈ゴースト〉が迎えに来て、追ってきた僅かなトルーパーを撃ち倒しながら乗り込んだ。
やがてドームは打ち上がり、自爆してついに戦いは終わった。プライスは最後まで帝国側に付いて、ドームで終わりを迎えた。これで、ロザルはようやく帝国から解放された。
ヘラ達〈スペクターズ〉には、エズラからメッセージが残されていて、私は邪魔をしないようにそっとコックピットを離れた。
砲台の席に座り、歓声を上げるロザルの民を見ていると肩を叩かれた。
「ママ」
レスリーが弱々しく声をかけてくる。
「どうしたの?」
「エズラがいなくなるって、知ってたんでしょう?」
「ただの予感だよ。」
「予感でも、言ってほしかった。」
「レスリー………」
「寂しいよ………」
レスリーは抱き付いてきて、私の肩に顔を埋める。我慢していたのか、嗚咽を漏らしていた。しっかりした娘だけど、まだまだ子供だ。
悲しませたことに、罪悪感を覚えてしまった。
娘を優しく抱き締め、何が娘の為になるのか何度も考える。
私のことはどうでもいい。娘の幸せが第一だ。トリーも同じ想いだろう。
娘には良い人生を送ってほしいと願うのは、当たり前の望みだと信じたい。