シスの招待状
ロザルの戦いから数日後。
私は〈ホーガ・フォレスト〉に戻っていた。店はいつも通り営業して、リックとアズ、私の3人で回す。常連の顔も、いつも通り。
エズラのことはまだ吹っ切れていないけど、ヘラ達の為に前に進むことにした。
それが、いつも通り店をやることだっま。
だけど、いつもと違うことが1つあった。
「ママ!カウンター隅のお客さんのオーダーだよ!」
「ありがとう、レスリー」
娘が店を手伝い、ホールを動き回っていた。
私は断ったんだけど、どうしてもやると言って強引に来ていた。アズも現状から反対したが、リックが賛成したことで手伝う流れになってしまった。本当は無理にでも止めるべきなんだろうけど、レスリーが決めたことだから何も言えない。
「ママ、なんか提督さんが呼んでるよ?」
提督と言われて、嫌な予感がした。
提督と言えば、帝国軍の提督だろう。私の店は悪意がなければ、階級や種族も関係なく入店できる。店に入れるくらいだから悪意はないんだろうけど、どうにも嫌な予感が拭えない。
「何か呼んだ?」
レスリーに案内された席に行くと、提督は頭を下げた。
「閉店後、少し時間をもらえないか?」
「いいけど、どうしたの?」
「今は言えない。だが、かなり深刻だ。」
また帝国が何かしようとしているのかな。
でも様子からして、そうじゃないみたいだ。
店内の隅で待つと言われて、彼は本当にずっと待っていた。他の客が帰る一方で、彼は私やリック、煩わせることなく静かだった。レスリーにもちょっかいをかけることもしない。
やがて、彼が最後の客になり、私は〈ホーガ・フォレスト〉を閉店させた。リック達は先に上がらせて、後は私と提督だけになった。この方が、彼も気負わなくて済むだろう。
「本当に待ってたんだ。」
カウンターに座っていた彼の向かい側に座り、要件を問う。
「そんなに重要な話?」
「ああ。“デス・スター”を知っているか?」
「えっ……」
「知っているのか。つい最近、反乱軍もデス・スターの存在を認知したはずだ。」
まだ未完成だけど、帝国は反乱軍に知られたことで完成を急いでいる。彼がそれを知っているということは、完成も近いはずだ。しかも、その彼がここに来たということは、帝国に何か動きがあったということだ。
「反乱軍はさて置き、私と何の関係が?」
「そのデス・スターから、貴女宛に招待されている。」
「は……?」
想定外の返事に、私は何も返せなかった。
「実は、ヴェイダー卿から直々に指示を受けている。」
「今なんて………?」
「ヴェイダー卿は、貴女をデス・スターに招待している。」
「なんで…?」
「旧友の好だと、そう伝えろと言われた。ヴェイダー卿と面識があるのか?」
そう問われ、言葉を失った。
私がヴェイダーの正体を知っていると、奴は分かっている。分かっていて、私を招待している。嫌な予感はこれだったんだ。
「面識はない。でも……」
続きが言えなかった。
言えるわけがない。ヴェイダーは元々ジェダイだったなんて、私には言えない。それに、ヴェイダーは誰もが知る英雄だった。
「ヴェイダーは……他に何か言ってた?」
「いや、何も。ただ、1人で行くのは危険だ。私が案内しろと言われている。」
「………」
「強引に連れていくつもりはない。貴女の意思は尊重する。ただ、ヴェイダー卿はあくまで待つことを望んでいる。だが、それも長くはない。」
「………少しだけ時間を頂戴。」
「分かった。」
彼は立ち上がり、店を出て行く。
恐らく、外で待っているだろう。彼は私の案内を指示されているのだから。ヴェイダーは私がデス・スターへ訪れると踏んで、彼を寄越した。
それでも、考える時間が欲しい。
コックピットにいるリックとアズに声をかけ、私は“招待”のことを話した。
「どう考えても罠だろ!!」
「そうです!サム様、考え直してください!」
「まだ行くと決めたわけじゃ、」
「行く気満々だろ!レスリーには何て言うんだ!?」
「それは………」
2人は絶対行くなと言う。
2人が反対するのも分かる。帰れる保証もない。そうなれば、“家族”が悲しむことになる。
「必ず帰る。」
「帝国が黙っているわけないだろ!奴らはサムを言い包める手段を探しているんだ!何をされるか分からないんだぞ!?」
「でも、このままってわけにもいかないでしょ。」
「サム様、お嬢様は反対されますよ。」
言っている間に、リックがレスリーを呼んでいた。
私が何か言うより早く、リックは“招待”のことを話していた。
「私は反対だよ。」
「レスリー………」
「けど、ママを信じてる。」
「レスリー!?サムは戻らないかもしれないんだぞ!?」
「リックおじさん、ママなら大丈夫だよ。きっと、何かあるんでしょう?じゃなきゃ、ヴェイダーがママを呼ぶわけない。」
レスリーの言葉に、私は頷く。
「どういうことだ?」
「私とヴェイダーの間に、切っても切れない縁があるの。」
「………」
「リック、ごめん。」
「俺は受け入れてねぇからな。」
「分かってる。でも、信じてほしい。私は大丈夫だから。」
そう言って、リックを抱き締める。
リックとは長い付き合いだ。トリーやカリよりも長い。腐れ縁と言ってもいい。
私を心配するリックに、見送ってくれる礼を言った。
「待たされるのは懲り懲りだからな……」
「いつも信じてくれてありがとう。」
リックと離れ、今度はレスリーを抱き締める。
「………私も行きたい。」
「レスリーはリックといて。私の代わりにリックを守ってね。」
「聴こえてるぞ。」
「ごめん、リック。でも、レスリーにもリックが必要だから。」
レスリーから離れて頭を撫でると、私は腰のブラスターを置いて店を出て行く。
店を出ると、やはり提督が待っていた。
声をかけると、彼は少し安堵したような表情をする。それが私に対する安堵なのか、彼自身に対する安堵なのかは分からない。確かなのは、ヴェイダーの怒りが私と提督両方に向くことは避けられたということだ。
「行くよ。」
「では、こちらへ。」
提督に案内され、私は〈ホーガ・フォレスト〉から離れる。
待ち受けるのは戦いか、施しか、死か?
これが、ヴェイダーの企みの始まりだと知る由もなかった。