提督に連れられて、私は帝国のシャトルに乗り込む。
乗り込んだのはラムダ級シャトルで、帝国軍が展開していたドッグの中にあった。トルーパーは提督に敬礼して、私達は何事もなく通り過ぎる。私にはそれが居心地が悪く、嫌悪感を抱いてしまった。
ハイパースペースに突入した後、私は彼に声をかける。
「提督になってどれくらい?」
「1年だ。だが、ヴェイダー卿と対峙するのは未だに慣れないな。」
シスは、フォース感応者でなくても恐怖を感じさせる。提督も例外じゃない。店の他の常連の話では、耐え切れずに潰れる者もいるという。
「ヴェイダー卿と面識があると聞いたが、どんな過去があるんだ?」
彼の問いに、私は言葉を探す。
「知らない方がいい。」
「だが、」
「深入りすると死ぬよ。」
「………」
提督は、根は良い人だ。いくら帝国軍人とは言っても、良心はある。私情を挟ませて死なせたくはない。
トルーパーの1人に案内され、私は客室に入った。
今のところ、私は客扱いらしい。
「下手に動き回るな。部屋にいれば、何も問題はない。」
「分かった。」
トルーパーが出て行き、私はベッドに横になる。
目を閉じると、緊張が解けた反動で睡魔が襲ってきた。
私は眠りに落ちながら、ジェダイが滅んだ日を思い出していた。
マスターが死んで、ジェダイ・オーダーもなくなった。議長は皇帝を名乗り、アナキンはシスに与した。私は無責任に全てを諦め、逃げ出した。
パドメも死んで、元老院で意見する人はいなくなった。
あの日、全てが変わったんだ。
「着いた。」
いつの間にか着いていたらしい。
シャトルを降りると、ターキンがいた。
ウィルハフ・ターキンは、今やグランド・モフだ。帝国司令部の有力者の1人でもある。嫌な事実を言えば、ターキンの地位は高い。提督なんかとは比べ物にもならない程に。
そんなターキンに、提督は敬礼する。
「ご苦労。後は私がやる。」
「しかし、」
「これは命令だ。持ち場に戻れ。」
「………イエッサー。」
提督は唇を噛みながら、ターキンに従う。
私はターキンに連れられて、ハンガーを出る。
向かう先は、ヴェイダーのところだろう。ターキン直々に案内されるなんて、かなり気分が悪い。好き嫌いじゃなくて、嫌味を言ってくるから一緒にいたくない。
「素直に来るとは、死ぬ覚悟があるのだな?」
「死ぬつもりで来たわけじゃない。」
「一度トルーパーの中隊を巻き込んでおいて、寝言をほざくのか?」
「あれは戻ってくる前提だった。」
ターキンは鼻で笑う。
見下されている。所詮ジェダイの役目から逃げた女だ。私を弱い女だと思っているんだ。
「建前はどうだっていい。だが、私を騙せると思うな。」
「はいはい。」
お見通しだと言っているようだった。
やがて、ある部屋の前に着いた。部屋の中から禍々しいフォースを感じる。中にヴェイダーがいると、すぐに分かった。
扉が開けられると、やはりヴェイダーがいた。
「もし妙な真似をしたら殺せ。」
「仰せのままに。」
ターキンはそう指示して、部屋を出て行った。
中は会議室のようで、ヴェイダーは座らずに話を始める。
「まず逃げずに来たことを褒めてやろう。」
「思ってもないことは言わなくていい。なんで呼んだわけ?」
私は“ターキンの席”に座り、ヴェイダーに敵意を向ける。
「19年後の再会に言うことがそれか。」
「再会っていうのは、同じ人に会うことを言うんだよ。旧友の好だっけ?私にシスの旧友はいない。」
「………」
「それとも何?ヴェイダーじゃなくて、本当の名前で呼ぼうか?」
ヴェイダーにそう言うと、奴はフォースで首を絞めようとしてくる。
だけど、私は反撃をしなかった。
「気に入らなかったら力で押さえ付けるの?」
「逆らう者に情けは無用だからだ。」
そう言い、ヴェイダーは私にフォース・プッシュをする。椅子から吹っ飛び、突然の衝撃に思わず床で蹲った。ヴェイダーは蹲る私の前に立ち、テレキネシスで無理矢理立たせてくる。
「昔から何も変わってないな、サマンサ・ホーガン。お前は常に外野に徹しようとしていた。無理だと分かっているのに、なぜ抗う?」
「抗ってない。」
「何……?」
「私はね、22年前のジオノーシスで自由を諦めたの。いつもフォースとジェダイの肩書きが付いて回る。どれだけ逃げても、フォース感応力はなくならない。この銀河に産まれた瞬間から、切り離せないものだから。」
ヴェイダーを見上げ、深呼吸する。
「なのに、あんたは暴力の道に逃げた。」
私は背を向け、適当な席に座る。
外野の道に逃げた私も、褒められた人生じゃない。失敗は誰にでもある。でも、私は力は望まなかった。
間違いは犯してこなかったつもりだ。
「今でも間違いだと思ってはいない。ジェダイは滅んで然るべきだった。ジェダイ・オーダーの醜態は、お前も知っているはずだ。」
「だから私も敵だって言うの?」
「お前も含めて、ジェダイの存在が間違いだからだ。」
「あんたがシスだからそう思うだけでしょう?私は避けはするけど、存在は否定しない。」
「ヨーダから情報を受け取ったのはその為か?」
ジェダイをやめたのに、私はマスター・ヨーダからジェダイの機密を受け取った。最初は嫌だったけど、ジェダイをやめたツケだと思って承諾した。でも未来で他のジェダイに渡るなら、それで良いと思った。
ヴェイダーに問われ、奴自身はジェダイ、もといジェダイだった自分を否定したいのだと気付いた。
なぜか納得してしまった。納得はできるけど、過去は変えられない。ヴェイダーは間違いなく、ジェダイだった。
それを、私は“よく”知っている。
「あの頃のジェダイ・オーダーは確かに腐ってた。だけどこの銀河で苦しむ人々にとって、ジェダイの伝説は希望でもある。私はそれを知ってるから受け取っただけ。」
「それも間違いだ。ジェダイは混乱を生むだけだ。」
「ちゃんと見てないだけ。片方から見たって何も変わらない。あんたこそ、何も変わってない。客観的に見れば、何が間違いか分かるのに。」
遥か昔に、オビ=ワンがそう言って私に相談してきた。
ヴェイダーは、あの頃のままだ。
「歴史を見れば明らかだ。納得がいかないなら、それを証明してやろう。」
「何をする気?」
「カリ・ペレスは、お前の姿を見てジェダイの生き方を選んだ。あの女のこれからの行動が、ジェダイとお前の間違いを証明する。」
「どういうこと……?」
奴は、私を見下ろす。
そして、移動すると言う。
私は大人しく付いていき、〈デヴァステイター〉に乗せられた。行き先は分からない。でも良くない予感がする。
私はまだ、最悪の経験をしてないのだと気付くのだった。