悪夢とは、その名の通り悪い夢だ。つまり現実じゃない。悪夢程の出来事なんて、現実では起こり得ないからだ。
カリが死んだのは悪夢だ。
なのに、カリ本人がそれを否定する。
「サムはさっきジェダイじゃないって言ったけど、ジェダイの定義って何だと思う?」
気が付けば、私達は現実の姿で話していた。
さっきまで、クローン戦争の思い出の中にいた。アソーカもまだパダワンで、私も金髪で〈ホーガ・フォレスト〉の服を着ていて、カリもまだ少女だった。
でも今は、目立たない地味な服と黒髪で、カリは大人だ。
「フォースの光明面を信仰する存在でしょ?私もジェダイだったんだから知ってるよ。その私は今、その定義に準じてない。だからジェダイじゃない。」
「じゃあ、私は?」
「カリがジェダイかって?」
「うん。私はジェダイだと思う?」
私は静かに首を横に振った。
だって、カリは私に付いてきてからジェダイ・オーダーを去った。パダワンになれる可能性もあったのに。それでも、カリは私といることを選んだ。
だから、カリはジェダイじゃない。
「そうだね。でも、私はジェダイのように生きることを決めた。」
「なんで……?」
「最初の内は、私もサムみたいに強くなれるって思った。確かにサムは強かったけど、私がいたら身動きできなくなる。だから1人でも戦えるように、ジェダイとしての生き方を選んだ。」
信じたくない。
カリは、ジェダイじゃない私を見て、ジェダイの道を進むと決めた。まるで、決まっていたかのようだ。私が連れ出したとしても、ジェダイとして生きることは定められていたんだ。
それが元々カリが持っていた本質で、私がカリを曇らせていたんだ。
「だったら…私のせいでカリは………」
「違うよ。私の意思だってば。それに、サムには感謝してるんだよ?」
「感謝?私に褒められることはないよ!自分勝手なせいで、カリを死なせたのに!」
「ジェダイが粛清された時、ショックだったけど、サムに連れ出してもらったのは間違いじゃないって思えた。同期を置いてきたから、ずっと背徳感があったの。サムは私の心も救ってくれてるんだから、何も後悔することはないよ。」
本人がそう言ったとしても、後悔の念は簡単に消えない。
今思えば、ヴェイダーはカリがジェダイの選択をしていると気付いていた。それを利用されたんだ。“ジェダイの存在は間違い”と言ったのも、そのせいだ。
“元”ジェダイだった私が、カリを殺したも同然なんだ。
「ねぇ、サム、確かに私はサムの家族だけど、私だけが家族じゃないでしょ?」
「それは……」
「ほら、聴いてよ。」
カリがそう言うと、また声が聴こえた。今度は言葉を聴き取ることができる。意味も理解できるし、何をすればいいのかも分かる。
でも、ここから去りたくない。
「このままでいい………」
「サム……」
「私が立ち直ったら、もうカリとは会えないんでしょう?」
私の知るカリ・ペレスには、二度と会えない。それこそ、生きている間は会うことはない。私が死んでフォースと一体化しない限り、もうカリには会えない。
「私の最後のお願いだよ。」
「嫌だよ。」
「サム、私知ってるんだよ?サムはジェダイをやめたけど、ジェダイを続ける人生も選べたって。」
「………」
「やろうと思えば、いつでもフォースの絆を断てるでしょ?それをしないのは、サムが理性的だからだよ。サムが自分本位なら、とっくにフォースの絆を切ってる。」
言葉を返さずにいると、カリは困ったように笑う。
目の前のカリは霊体のはずなのに、まだ生きているかのようで、心がぐちゃぐちゃで涙が出てくる。
「こんなの、やっぱり悪夢でしょ……」
「サム、良い夢こそ早く目覚めちゃうものだよ。」
「それは、」
「良いことばかりじゃないよ。悪いことがあるから、良いことがあるの。私が死んだのは悪いことだけど、それで終わりなわけじゃない。」
気が付くと、カリが薄れ始めていた。
「カリ!!!」
「サム、アミダラ議員の言葉を信じられないだろうけど、信じて。」
「そんな………カリ!!」
「アミダラ議員は間違ってない。」
眩い閃光が煌めき、私は腕で顔を被う。
その最中、カリが何かを言っていて、私はしっきりと聴こえた。
これが本当に最後だ。もうカリに会えない。次会えるとしたら、私が死んだ後のことだ。
身体が一気に重くなり、私は引っ張られて勢いよく落下する。
その衝撃と共に目を開けると、見覚えのある景色だった。
「意識が戻ったぞ!議員を呼べ!」
そんな声が聞こえる中、私は横になったまま涙を流す。
なんて残酷な現実なんだろう。
生きるのがつらい。