どのくらい現実から逃げていたのか?
少なくとも、私はカリの死と向き合えなくて、多くの時間を失った。
目を覚ました私は、議員が来るのを待たずに基地内を走った。
事態は猶予を許さず、収束へ向かっている。インターセプターは割り振れるだけのほとんどの機がスカリフへ出動していて、司令部は殺伐とした空気が流れていた。私が入ると場は静まり返って、モスマ議員が真っ先に歩み寄ってくる。
「意識が戻って良かったです。」
モスマ議員は、いつ目覚めたのかとは聞かなかった。
後から来た隊員は、既に着いていた私に口籠る。
「彼女は大丈夫です。持ち場へ戻ってください。」
「………はい、議員。」
隊員は議員に言われて、司令部を出て行く。
「サマンサ、ペレス大尉は、」
「死んだ。」
私の言葉に、司令部は言葉を詰まらせる。
一番親しかったはずの私が平然としていて、モスマ議員も絶句していた。
「ホーガン……」
「私のことは後でいい。設計図の受け取りに専念して。」
淡々と話す私に、議員達はまじまじと見てくる。
「何……?」
「大丈夫か…?」
「後でいいって言ったでしょ。モスマ議員、〈プロファンディティ〉は?」
「既に向かいました。オーガナ議員がオルデランへ戻り、信頼できる遣いを“タトゥイーン”へ送る手筈です。」
「分かった。私もタトゥイーンへ向かう。」
「ですが……」
モスマ議員は続きを言わなかった。
言おうとしたことは分かるけど、今は何も考えたくない。何をしたって、これが現実だ。カリは死んだし、生き返らない。
リックやレスリーに何て言えば良いのか分からない。
司令部を出て行き、私は格納エリアへ向かった。
格納エリアへ着くと、“我が家”を見つけた。
「っ!?」
〈ホーガ・フォレスト〉の中に入ると、アズが驚き、座っていたリックとレスリーが立ち上がる。
「ママ!!」
レスリーが駆け寄って抱き付いてきて、私は娘を抱き締める。
「サム、カリは、」
「ごめん……」
「………」
「ママ…?どうしたの?カリお姉ちゃんに何があったの……?」
「………」
2人とアズに一言、死んだと告げる。だけど、人間2人は嘘を言っているかのように私を見る。私は、大事なことで嘘は吐かないのに。
「サム様………」
「私タトゥイーン行かなきゃだから、店はお願いね。」
「おい、待てよ!」
ショックで動けないレスリーとは違い、〈ホーガ・フォレスト〉を降りた私をリックが追いかけてくる。
「タトゥイーンにはオーガナ議員の遣いが行くんだろ?あんたまで、」
「必要だから行くの。私は大丈夫だから。」
「はぁ?大丈夫じゃねぇよ!待てって!!」
リックに腕を掴まれ、強引に止められる。
振り返って、リックのその表情に鼓動が止まった。
「あんたのその顔、ジェダイが粛清された時と同じ顔をしてるぞ。なのに大丈夫なわけないだろ。苦しいならそう言えよ。俺も家族だろ?」
リックの気遣いに、私は感情を抑えることをやめた。抱き締めてくれる彼に、溜まっていた悲しみや苦しみを吐き出す。普通の人間のように。
泣くのはこれを最後にしよう。
落ち着いた後、私はタトゥイーンへと発った。
こうしている間にも、帝国が先に設計図と“彼”を見つけてしまう。先に奪われたら、私にも為す術がなくなる。そうなる前に、私も行動しないといけない。
カリが背を押してくれた。地獄のような現実だ。でも悪夢は短い。
そう、悪いことばかりじゃないはずだ。
────────
同時刻。
〈プロファンディティ〉、否、〈プロファンディティ〉に収容された〈タンティヴⅣ〉のブリッジでは、レイア・オーガナがホロ通信で養父であるベイル・オーガナと話をしていた。
レイアはサマンサがタトゥイーンに向かったと聞き、まず疑念が湧いた。
「なぜ今になって手を貸すのかしら……」
『彼女なりの考えがあるのだろう。』
レイアは、サマンサの店のことを知っている。その上で、サマンサは反乱活動から避けてきたことも養父のベイル・オーガナから聞いていた。だが、今回は訳が違った。スカリフでの戦いは反乱同盟軍から帝国への完全なる敵対行為であり、サマンサが向かうべき場所はタトゥイーンではなくスカリフだからだ。
それなのに、彼女はタトゥイーンへ向かった。
必要とされる場所が違うというのに。
『懸念は他にもある。ペレス大尉が殉職した。』
「ペレス大尉が!?」
レイアはカリと面識があり、彼女と親しくしていた。それは反乱同盟内でも同じで、カリは頼りがいもあり、レイアは友人としても信頼をしていた。だからこそ、カリの死はショックだった。
『詳しくはサマンサも話したがらない。だが、ペレス大尉が帝国に殺されたのは間違いないだろう。それに伴い、サマンサの心も不安定だ。』
「そんな状態で……!」
『実は、サマンサは元ジェダイなのだ。』
「“彼”と同じなのですか?」
『そうではない。サマンサは途中でジェダイ・オーダーを離脱している。それ故に、喪失を乗り越えていると信じたいが………』
父の言葉に、レイアは戸惑う。
その時、〈プロファンディティ〉がデス・スターの設計図を受け取ったと報告を受けた。提督から撤退命令が出るものの、〈デヴァステイター〉を筆頭に帝国の援軍が到着してしまった。ほとんどの船が脱出したが、〈プロファンディティ〉は取り残されたのだ。
レイアは苦渋の決断を下し、父との通信を切った後〈タンティヴⅣ〉を発進させた。
ここから事態が加速していくなど、誰も知る由はなかった。
ただ1人、サマンサを除いて………