裏通りを抜け、ようやくベイ94に辿り着く。
ハッチにはソロ船長とチューバッカがいて、私達を急かす。
「ポンコツじゃないか!」
「おい!放り出すぞ!」
ルークのポンコツ発言に、ソロ船長は怒る。
不安な顔を見せない私に、オビ=ワン達は怪訝な表情をする。
「貴女は心配じゃないんですか?」
「全然。問題ないよ。」
何せこの船は、エピソード9まで活躍するからね。とても頑丈な船だ。寧ろ頼りにしているくらいだ。
「ほら、乗るよ。」
「危ない!!」
ルークの声に振り向くと、トルーパーがベイに入ってきていた。ブラスターが撃たれて、ソロ船長が応戦する。ルーク達を中に押し込み、私とソロ船長だけになった。
「あんたも中に入れ!」
「私は大丈夫。早く離陸準備済ませて。」
「っ、分かったよ!」
ソロ船長が中に駆け込むと、私は両手を突き出し、トルーパーをフォースで押し倒す。同時に船が離陸を始め、後退しながら中へと入った。船はすぐに大気圏を抜け、私もコックピットへと走る。
コックピットでは、ハイパースペースへの計算を急いでいた。
「あとどれくらい?」
「もう入れる。」
そして、船はハイパースペースへと入った。
一呼吸した後、私はオビ=ワンに呼ばれて休憩エリアに連れて行かれる。
ルークには聞かせたくない話だと言う。
「私が死んだら、お前がルークを鍛えろ。」
「は……?」
「聞こえなかったか?」
「聞こえてる。そうじゃない。なんで私が?嫌だよ、お断り。」
鍛えるのが嫌なんじゃない。オビ=ワンが死ぬ気でいることが嫌なんだ。自分が死ぬ前提で話をされて、誰が頷くと思うのか。
「自分が死ぬと諦めてる人の頼みは聞けないから。」
「サム、」
「私に協力してほしいなら、生き延びて。あんたが私に答えを与えた結果が今の私なの。諦めるって言うなら、私も未来を諦める。」
「………分かった、最善を約束しよう。」
そう答え、オビ=ワンはベンチに座った。入れ替わりに、ルークが休憩エリアに入ってくる。私の不満そうな表情に、ルークはどうしたのかと疑問符を浮かべる。
「何でもないよ。」
私は壁に寄りかかり、オビ=ワンが始めたトレーニングを眺める。
オビ=ワンはまず基本的な型をルークに教えていた。ルークはアナキンにそっくりで、オビ=ワンがアナキンに指導しているような光景を錯覚した。でも、それは過去の光景だ。
懐かしさを堪え、深呼吸して心を落ち着かせる。
ルークはルークだ、彼は父と違って暗黒面に惑わされたりしない。
「サム、どうした?」
「何が?」
「不安がひしひしと伝わってきたぞ。」
「別にそんなんじゃない。」
その時、目眩がするほどの喪失感が私を襲う。それも、多くの命が一瞬にして消えるようなものだ。オビ=ワンに至っては、思わずふらついてしまう程だ。
デス・スターが、惑星オルデランを破壊したんだ。
そんな私達を見て、ルークは心配してくれる。
「どうしたんです?」
「とてつもない、大勢の命が一度に消えたような悲劇があったようだ。サム、大丈夫か?」
「………大丈夫。」
目眩も一瞬だ。この喪失感の原因は、後々目の当たりにするだろう。
ルークの訓練を再開するが、オビ=ワンは何かを考え込む。
やがて、あり得ないことを言い出す。
「サム、ルークに手本を見せてやれ。」
「私現役じゃないんだけど。」
私達の会話に、休憩エリアに入ってきたソロ船長が鼻で笑う。
「無理に決まってるだろ。」
「あんたはフォースを信じてないのか?」
「信じてないね。」
彼はルークの問いに、馬鹿馬鹿しいとまで言う。
「ずっと旅をしてきたが、そんなもの聞いたことないね。」
「ソロ船長が知らないのも仕方ないよ。帝国はジェダイが存在したこととか、フォースの存在を揉み消してきたんだから。」
「そうかよ。それとあんた、ホーガン、“ソロ船長”って呼ぶのやめろ。“ソロ”でいいだろ。嫌味か?」
「あ、気付いた?」
「お前な………」
嫌味で“ソロ船長”と言っていたのは、どうやらバレていたようだ。
その瞬間、リモートが数発撃ってきて、私は咄嗟に避けた。操ったのは、オビ=ワンだ。完全に不意打ちだった。
「オビ=ワン!!」
「まだ対応できるじゃないか。」
「咄嗟に避けただけからね?」
「何てことねぇ、ただのまぐれだろ。」
オビ=ワンを睨んでいると、ソロが茶化してくる。
確かに、今のは咄嗟に避けただけ。それくらいならだれでもできる。フォース云々以前の問題だ。
「分かった。本気でやってあげるよ。」
「「え……?」」
ソロとルークの声がハモる。対するオビ=ワンは、笑みを浮かべる。どうやら心配されてないらしい。
私はポシェットからライトセーバーを取り出し、ブラスト・シールドを被る。
更に耳当てもして、ライトセーバーを起動させた。
「いいよ、始めて。」
私の声に、オビ=ワンはリモートの電源を入れる。
感覚を研ぎ澄ませ、フォースで認識範囲を広げて、ライトセーバーを振る。スティング・ビームがプラズマの刃に当たるのを、しっかりと感じる。更に集中し、私はライトセーバーの振りを強くさせる。
動きが止まり、耳当てとブラスト・シールドを外すと、リモートが3つ、床に落ちていた。
3つ共、私が切り壊してしまったようだ。
ルークとソロ、デジャリックをやってたチューバッカ達も唖然となっていた。
「おいマジか……」
「………」
オビ=ワンだけは、私を楽しそうに見ていた。
「これで満足?」
「ああ、満足だとも。ジェダイの道を極めなかったのが惜しいくらいだ。」
「“マスター・ケノービ”、分かってるでしょ。」
「もちろんだ。機械が相手だからな。今のお前では、帝国のトルーパー以上の相手は難しいだろう。」
オビ=ワンの回答に、私は手に持っていたブラスト・シールドをテーブルに叩き置く。
「そうと分かってるのに、私に指南役をやらせようとしたわけ?」
「そうだ。」
「いくらアナキンの息子でも、失くすのはもう嫌だよ。責任は負えない。あんたが最後まで務めを果たして。」
「………」
「ソロ、少し仮眠させてもらうから。」
「お、おう。」
「おやすみ!」
ルークの声を背に、私は個室を借りる。
目を閉じながら、夢でのカリを思い出す。
カリは私を見て、ジェダイの道を選んだ。関わった結果が死なら、関わらずに見守る道を選んだ方がいい。その方が傷も浅くて済むから。
喪失感を紛らわせようと奔走しに来たのに、傷口に塩を塗るみたいだ。
ルークを見ていると、心の奥が締め付けられる。
何をしたら、ボロボロな心が救われるのだろう。