引き続き医療エリアで忙しくしていると、隊員の1人が駆け込んできた。
「デス・スター撃破!!」
「おお!!」
「ついにやったな!!」
嬉しい知らせだった。動ける人はみんなハンガーへと走っていく。だけど私は行かず、続けて仕事をした。
その様子に、医療ドロイドが声をかけてくる。
「こちらはもう大丈夫です。ありがとうございました。」
そう言って、ドロイドに追い出された。
私は格納庫の〈ホーガ・フォレスト〉に戻り、アズとレスリー、リックと合流する。
………が、船の中に入ると空気が重かった。
「え、何、どうしたの………?」
聞いても、レスリー達は答えない。
その代わりに、奥からルークが出てきた。パイロットスーツを着たままで、そのまま来たらしい。その表情はひどく不服そうだ。
「船で休んでたって?」
「サポート側に回ってただけだよ。」
どうやら、リック達とは粗方話はしてあるらしい。
誤魔化しても、ルークは信じないだろう。だからと言って、折れる気はない。それはルークも同じで、私の返事に怪訝な表情をする。
「ママ……?」
私は持っていたヒルトを、レスリーに手渡す。
ヤヴィン4を経つ前、レスリーが護身として渡してきたけど、本当は置いていくべきだった。私のライトセーバーだけじゃない。カリのライトセーバーもだ。
カリのライトセーバーも、レスリーが持っているべきだ。
「どうしてもジェダイに関わる気はないのか。」
「何度も言うように、私は教えられない。」
「サム………」
「でも、オビ=ワンの為に少しだけ手を貸してあげる。」
「本当に!?」
「私よりも良い手本がいる。」
レスリーの隣に立って、手本だと言う。
「私!?」
「あのね、ルーク。ジェダイ・オーダーはもうないの。必要なことだけ学べばいい。私も妹分も、レスリーには必要なことしか教えてない。だから私の娘、レスリーを見て学んで。」
「子供から教わるんですか!?」
「言っておくけど、あんたがオビ=ワンから教わったのは初歩的な知識だけ。ジェダイ聖堂にいた子供達よりも無知だよ。そういうことだから、ちゃんと学んでね。」
自室に戻ろうとすると、レスリーが追いかけてくる。
いきなり言われて、戸惑っているようだ。本当はジェダイと関わらせたくはない。でも、レスリーのことも信じている。
追いかけてきたレスリーに、私は優しく言う。
「レスリー、嫌なら断っていいよ。」
「けど、」
「私みたいな大人はね、私情挟んじゃうの。悪い意味でね。でも、レスリーは違う。自分の気持ちに正直だし、決めたことはしっかりやるから。」
私の言葉に、レスリーは納得できないようだった。
でも、マスター・ヨーダも言っていた。子供の心の豊かさは大切だ、と。私もそう思う。子供は大人にないものを持っている。
「何かする必要はないよ。ルークと仲良くしてあげて。それだけでいいから。」
「分かった……でもママ、何かあったら助けてね?」
「もちろん。子供を助けるのが大人の役目だからね。」
娘を抱き締め、愛してると言葉で伝えると、レスリーも抱き返してくる。
その後、ルークとソロの表彰式が執り行われた。
ソロは結局戻ってきたようだった。味方してくれたのは私としても嬉しいけど、大きな問題がある。それは、ジャバに対する借金だ。
私としては、“エピソード5”に備えて早く返しに行ってほしい所存だ。
予定では3年後、ソロはカーボン凍結される。それは帝国に巻かれたジャバが、ソロの身柄を欲しがったせいだ。そのせいで、事態は複雑化することになる。
せっかく色を付けたんだから、早めに解決してほしいものだ。
そして、私は〈ホーガ・フォレスト〉の営業を再開した。
ルールは何も変えない。サービスはしない。贔屓もしない。差別もしない。今まで通りだ。
変わったことといえば、客が店を守ってくれるようになったことだ。常連の中には帝国将校もいる。その将校の何人かが、店を攻撃しようとする帝国軍を止めたりしてくれた。
お陰様で、店は安泰だ。
「違うってば!それは“悲しい”って意味!」
「レスリー、これ必要なことなのか?」
「必要だよ!」
営業終了後、ルークは度々店に来て、レスリーと語学の勉強をしている。
私の店には文字通りいろんな人が来る。だからベーシックだけじゃなくて、よく使われる言語も話す。レスリーもそれを知っていて、自分から言葉を覚えた。分からないことは私やリック、カリが教えてきた。
私がこの世界に来る前だって、“言葉の壁”というものがあった。どんな世界も例外はない。学んだことは、今後に活かせる。
店の隅で勉強する2人を遠目に、アズが私に話しかける。
「懐かしい光景ですねぇ。」
「え?」
思わずカウンターを拭く手を止めてしまった。
「サム様は店を開いた時、ああやって勉強していたではありませんか。当時はサム様お一人でしたけど。」
「やめてよ。」
そう言うと、皿を拭いていたリックが振り向いて口を開く。
「なんであんたが教えないんだ?サムの方が経験豊富だろ。」
「私は先生向きじゃない。それに、レスリーの方がまだ積極的だからね。」
「どういう意味です?」
「子供の方が希望を信じられる。」
「希望、か………」
リックは呟くように言う。
私も若い頃は希望を信じられた。でも、今は信じることができない。それは、現実を知ったから。道は探しても、できることとできないことで分けて考えてしまうんだ。ジェダイ・オーダーから離れた後から、それは加速した。
だから、希望を信じているレスリーが適任なんだ。
「アズ、レスリーが困ったら助けてあげてね。」
「それはサム様の役目では?」
「もちろん私も助ける。そういうことだから、リックも助けてあげてね。」
「分かったよ。」
リックとアズは仕事を終えると、自室へと戻っていった。
私はそのまま残り、レスリーとルークの勉強を見守る。
ルークは覚えが良いから、この景色はそう長く見ることはできない。教えたら、何でもできそうだ。時間はかかるだろうけど、確実に成長する。
成長するのはルークだけじゃなく、レスリーもだ。
こんな時代じゃなければ、どんなに良かったことか。
何もできないことが心苦しい。