悪の再来
デス・スター破壊から3年の月日が流れた。
帝国軍は血眼で反乱軍を探していて、動きにくくなっていた。
私の店では将校が反乱軍のメンバーを見てもスルーする。それは暗黙の了解だった。でなければ、店には入れない。悪意ある者は入れない店だからだ。
だけど、抜け穴を見つけたらしく、たった今ダース・ヴェイダーが1人で来店した。
客は慌て出し、アズにクレジットを渡して急いで退店していく。
営業妨害もいいところだ。
「サム……!」
恐怖を感じたのか、リックは私に声をかけてくる。
「リック、大丈夫だから。奥に行ってて。」
「わ、分かった。」
「サム様、レスリー様には……」
「戻らないように伝えて。あと、しばらく休業するって常連に通達しておいて。」
「畏まりました。」
レスリーは今ルークと一緒に行動している。アズは優秀だから、惑星ホスへの航海記録も消してくれるはずだ。私の船から反乱軍の居所を特定されるのは避けたい。
ヴェイダーと2人になると、私はカウンターの椅子に座る。
「何の用?」
ヴェイダーに冷たく問う。
本当なら、ヴェイダーはこの店に入れないはずだった。“悪意ある者”に、奴は該当するはずだから。シスなんだから、悪意がないわけがない。
ただ、入ってきたからには対峙せざるを得ない。
冷たくなってしまうのも仕方ない。
「船に仕掛けをしたのはシス対策か?」
「シスだけじゃない。“悪意ある者”は入れないの。なんで入れたわけ?」
「お前に教えてやる義理はない。今日来たのは、デス・スターを破壊したパイロットに関してだ。」
やっぱりルークのことか。
タイミング的には、ヴェイダーは7割くらい知っている。パドメのことも、ルークのことも。つまり、私が何を知っているのも分かっているだろう。
「何もかも知っているな?」
「何のことか知らないけど、パドメのことに関しては謝らないよ。」
そう言うと、ヴェイダーは私に殺気を向けてくる。
「あの日のことは、今でもはっきり憶えてる。パドメを看取った時のことは忘れられない。最後まであんたを信じてたんだからね。」
「先に裏切ったのは、」
「あんただよ。暗黒面に呑まれて、怒りのままにパドメを傷付けた。私も同罪だけど、あの人を守るはずの“アナキン”が、先に裏切った。」
ヴェイダーは、暗黒面に踏み込んだことを正当化している。ジェダイが悪だと決め付けたんだ。皇帝、もといシスに唆されて、乗ってしまった。
冷静になれば、“アナキン”のしてきたことは間違いだと気付くはずなのに。
「その名を口にするな。」
「事実だよ。」
「“アナキン・スカイウォーカー”はもういない。奴の息子も、暗黒面の使い手となる運命だ。カリ・ペレスのように暗黒面を拒めば、待つのは死だ。」
「あの時カリが死んだのは、フォースの定めだった。暗黒面のせいじゃない。勝手に決めないで。」
ヴェイダーはカリの名前を出せば、私が動揺すると思っている。だが、それは間違いだ。今は喪失を乗り越え、大事にすべきものに気付いた。あの時の私とは違う。
「ルーク・スカイウォーカーはどこだ?」
「ここにはいない。反乱軍の場所も知らない。私はこの店が生き甲斐だって知ってるでしょ?」
「お前が昔から器用なのは明白だ。何も知らないと思っているのか?尋問官のフォース感応力を消し去り、この船を半ジェダイ寺院に改造したお前が……!」
私が敵意を抱いているのは分かっているらしい。それで非協力的なのも、承知済みだろう。だって、私はヴェイダーにあらゆるものを奪われたんだから。
「3年で随分変わったようだな。」
「長いようで、短い3年だったよ。これでも、心の傷はまだ癒えてない。私なりに心の整理をしただけ。現に、私はルークとほとんど関わってない。」
「何だと………?」
「意外だった?昔は聖堂で先生やったけど、生徒が苦しむ姿はもう見たくないの。だから私を殺したところで、ルークは影響を受けない。友達が死んだくらいの認識だと思うよ。」
宛が外れたようで、ヴェイダーから苛立ちを感じる。こうなることは想定していた。だからこそ、ルークの先生にはならなかった。
“アナキン”のことは未知な部分は多かったけど、ヴェイダーは想定できる部分が多い。
今だから考えられるけど、クローン戦争時代ならあっという間に潰されていたはずだ。
「良かろう。だが、次に会う時はお前の死に際だ。」
「は?なんで?」
「サマンサ・ホーガン、その持て余したフォース感応力を役立たせる機会をくれてやる。喜べ。この店も、反乱軍も、存分に助けることができるぞ。ただし、断れば全てを失うことになるだろう。」
あり得ない話に、私は鼻で笑ってやった。
「寝言は寝てる時に言いなよ。私がフォースの絆を絶てることくらい知ってるでしょ。フォースから離れることはあっても、店からは離れないよ。」
「愚かな女だ。その言葉、忘れるな。お前は必ず後悔する。帝国を受け入れなかったことをな。」
ヴェイダーの小さな警告に、今度は笑うことができなかった。冗談とも思えないし、冗談を言う奴じゃない。背中に寒気が走ったかのような、嫌なものを感じた。
なぜ急に恐ろしくなったのか分からない。
何が変わった?
いや、何も変わっていないはずだ。
「次に会うのを楽しみにしているぞ、ホーガン。」
ヴェイダーはそう言って、船を降りていった。
酷い寒気がする。暗黒面の力を、すぐ近くに感じる。暗いものに呑まれそうだった。
そう、まるで闇の帳だ。
椅子に蹲っているとリックが様子を見に来て、心配そうに駆け寄ってくる。
「サム!」
リックは私の顔を上げさせると、触れた手が冷たいと言う。
「大丈夫か!?」
「ごめん、ちょっと寒くて……」
「風邪か!?」
「そうじゃない………私の気持ちの問題。」
リックに支えられて部屋に戻ると、私はベッドに横になる。
「ヴィザーゴ呼ぶか?」
「大丈夫、彼に心配かけたくない。少し1人にして。」
「そうか……何かあったら呼べよ。」
「ありがとう。」
リックは静かに部屋を出ていく。
身体が冷え切っていて、とても寒い。
もしかして、また選択を間違えた?
もう何も失いたくなくて、今度は安全な道を選んだはずだった。私達家族にとっても、反乱軍にとっても、だ。この感じは、クローン戦争前と同じ空気だ。
またあの頃と同じことを繰り返すの?
フォースの意思には応えたつもりだ。
また心を乱されるのは嫌だ。