【完結】退職(無断)したので、飲食店やります。   作:夭嘉

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帝国の逆襲(Ⅴ)
悪の再来


デス・スター破壊から3年の月日が流れた。

 

帝国軍は血眼で反乱軍を探していて、動きにくくなっていた。

 

私の店では将校が反乱軍のメンバーを見てもスルーする。それは暗黙の了解だった。でなければ、店には入れない。悪意ある者は入れない店だからだ。

 

だけど、抜け穴を見つけたらしく、たった今ダース・ヴェイダーが1人で来店した。

 

客は慌て出し、アズにクレジットを渡して急いで退店していく。

 

営業妨害もいいところだ。

 

 

「サム……!」

 

 

恐怖を感じたのか、リックは私に声をかけてくる。

 

 

「リック、大丈夫だから。奥に行ってて。」

「わ、分かった。」

「サム様、レスリー様には……」

「戻らないように伝えて。あと、しばらく休業するって常連に通達しておいて。」

「畏まりました。」

 

 

レスリーは今ルークと一緒に行動している。アズは優秀だから、惑星ホスへの航海記録も消してくれるはずだ。私の船から反乱軍の居所を特定されるのは避けたい。

 

ヴェイダーと2人になると、私はカウンターの椅子に座る。

 

 

「何の用?」

 

 

ヴェイダーに冷たく問う。

 

本当なら、ヴェイダーはこの店に入れないはずだった。“悪意ある者”に、奴は該当するはずだから。シスなんだから、悪意がないわけがない。

 

ただ、入ってきたからには対峙せざるを得ない。

 

冷たくなってしまうのも仕方ない。

 

 

「船に仕掛けをしたのはシス対策か?」

「シスだけじゃない。“悪意ある者”は入れないの。なんで入れたわけ?」

「お前に教えてやる義理はない。今日来たのは、デス・スターを破壊したパイロットに関してだ。」

 

 

やっぱりルークのことか。

 

タイミング的には、ヴェイダーは7割くらい知っている。パドメのことも、ルークのことも。つまり、私が何を知っているのも分かっているだろう。

 

 

「何もかも知っているな?」

「何のことか知らないけど、パドメのことに関しては謝らないよ。」

 

 

そう言うと、ヴェイダーは私に殺気を向けてくる。

 

 

「あの日のことは、今でもはっきり憶えてる。パドメを看取った時のことは忘れられない。最後まであんたを信じてたんだからね。」

「先に裏切ったのは、」

「あんただよ。暗黒面に呑まれて、怒りのままにパドメを傷付けた。私も同罪だけど、あの人を守るはずの“アナキン”が、先に裏切った。」

 

 

ヴェイダーは、暗黒面に踏み込んだことを正当化している。ジェダイが悪だと決め付けたんだ。皇帝、もといシスに唆されて、乗ってしまった。

 

冷静になれば、“アナキン”のしてきたことは間違いだと気付くはずなのに。

 

 

「その名を口にするな。」

「事実だよ。」

「“アナキン・スカイウォーカー”はもういない。奴の息子も、暗黒面の使い手となる運命だ。カリ・ペレスのように暗黒面を拒めば、待つのは死だ。」

「あの時カリが死んだのは、フォースの定めだった。暗黒面のせいじゃない。勝手に決めないで。」

 

 

ヴェイダーはカリの名前を出せば、私が動揺すると思っている。だが、それは間違いだ。今は喪失を乗り越え、大事にすべきものに気付いた。あの時の私とは違う。

 

 

「ルーク・スカイウォーカーはどこだ?」

「ここにはいない。反乱軍の場所も知らない。私はこの店が生き甲斐だって知ってるでしょ?」

「お前が昔から器用なのは明白だ。何も知らないと思っているのか?尋問官のフォース感応力を消し去り、この船を半ジェダイ寺院に改造したお前が……!」

 

 

私が敵意を抱いているのは分かっているらしい。それで非協力的なのも、承知済みだろう。だって、私はヴェイダーにあらゆるものを奪われたんだから。

 

 

「3年で随分変わったようだな。」

「長いようで、短い3年だったよ。これでも、心の傷はまだ癒えてない。私なりに心の整理をしただけ。現に、私はルークとほとんど関わってない。」

「何だと………?」

「意外だった?昔は聖堂で先生やったけど、生徒が苦しむ姿はもう見たくないの。だから私を殺したところで、ルークは影響を受けない。友達が死んだくらいの認識だと思うよ。」

 

 

宛が外れたようで、ヴェイダーから苛立ちを感じる。こうなることは想定していた。だからこそ、ルークの先生にはならなかった。

 

“アナキン”のことは未知な部分は多かったけど、ヴェイダーは想定できる部分が多い。

 

今だから考えられるけど、クローン戦争時代ならあっという間に潰されていたはずだ。

 

 

「良かろう。だが、次に会う時はお前の死に際だ。」

「は?なんで?」

「サマンサ・ホーガン、その持て余したフォース感応力を役立たせる機会をくれてやる。喜べ。この店も、反乱軍も、存分に助けることができるぞ。ただし、断れば全てを失うことになるだろう。」

 

 

あり得ない話に、私は鼻で笑ってやった。

 

 

「寝言は寝てる時に言いなよ。私がフォースの絆を絶てることくらい知ってるでしょ。フォースから離れることはあっても、店からは離れないよ。」

「愚かな女だ。その言葉、忘れるな。お前は必ず後悔する。帝国を受け入れなかったことをな。」

 

 

ヴェイダーの小さな警告に、今度は笑うことができなかった。冗談とも思えないし、冗談を言う奴じゃない。背中に寒気が走ったかのような、嫌なものを感じた。

 

なぜ急に恐ろしくなったのか分からない。

 

何が変わった?

 

いや、何も変わっていないはずだ。

 

 

「次に会うのを楽しみにしているぞ、ホーガン。」

 

 

ヴェイダーはそう言って、船を降りていった。

 

酷い寒気がする。暗黒面の力を、すぐ近くに感じる。暗いものに呑まれそうだった。

 

そう、まるで闇の帳だ。

 

椅子に蹲っているとリックが様子を見に来て、心配そうに駆け寄ってくる。

 

 

「サム!」

 

 

リックは私の顔を上げさせると、触れた手が冷たいと言う。

 

 

「大丈夫か!?」

「ごめん、ちょっと寒くて……」

「風邪か!?」

「そうじゃない………私の気持ちの問題。」

 

 

リックに支えられて部屋に戻ると、私はベッドに横になる。

 

 

「ヴィザーゴ呼ぶか?」

「大丈夫、彼に心配かけたくない。少し1人にして。」

「そうか……何かあったら呼べよ。」

「ありがとう。」

 

 

リックは静かに部屋を出ていく。

 

身体が冷え切っていて、とても寒い。

 

もしかして、また選択を間違えた?

 

もう何も失いたくなくて、今度は安全な道を選んだはずだった。私達家族にとっても、反乱軍にとっても、だ。この感じは、クローン戦争前と同じ空気だ。

 

またあの頃と同じことを繰り返すの?

 

フォースの意思には応えたつもりだ。

 

また心を乱されるのは嫌だ。

 

 

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