ヴェイダーが来た数日後、ホスの基地にいるレスリーから連絡があった。
ルークが吹雪の中で、ワンパに襲われたという。幸いソロが捜索に出て無事だったけど、しばらくは休養を要するそうだ。レスリーとの勉強も中断せざるを得ない。
その話を聞き、私は〈ホーガ・フォレスト〉で惑星ホスへと来た。
基地に入ると、隊員達がわざわざ挨拶をしてくれる。
「ルークとレスリーの部屋を教えて。」
「はい、こちらです。」
隊員の1人に案内され、私はルークとレスリーがいる部屋に入る。
3年が経ち、レスリーはガールではなく、立派なレディーへと成長した。大人っぽくなったレスリーは日に日に変化が増えて、親の私でさえ頼もしいと思う程だった。父親の遺伝なのか調子に乗る癖が出てきたけど、それ以外は頼りがいのある1人の女性だ。
「ママ!!」
「久しぶり。チューバッカも久しぶり。」
中に入ると、チューバッカが嬉しそうに頭を撫でてきて、レスリーは私を抱き締めてくる。
レスリーは背も伸びて、私とほぼ同じ目線となったせいか表情を誤魔化すようになった。どうやら、ルークと喧嘩したらしい。表情は偽っても、レスリーの感情は分かる。
部屋にはソロやレイアもいて、空気がギスギスしていた。
「私の前で喧嘩はしないでね?」
「それは俺じゃなくて、レイアに言ってくれ。」
「何ですって!?元はといえば、」
「だからやめてって。とりあえず、ルークが元気そうで良かったよ。」
「もう行くの!?」
部屋を出ようとすると、ルークが慌てて止めてくる。
「ちょっと嫌なことがあってね。」
「それは俺達のせいか?」
「違うよ。」
ソロの言葉に、私は否定する。
その時、基地内にアナウンスが流れる。司令官クラスの者は司令部へ集まるようにというものだった。どうやら、何かあったらしい。
「私は行ってくるわ。」
「私も。ママ、待っててよ。話があるから。」
「分かったよ。」
レスリーとレイアが出て行き、ソロとチューバッカもその後を追うように司令部へと向かった。
ルークと2人になると、彼から話を切り出した。
「サマンサ、レスリーが言っていた話というのは、ジェダイの訓練のことだと思う。」
「なんで?」
「この3年、レスリーは僕にいろいろ教えてくれた。だけど、ジェダイの訓練はやってこなかったんだ。僕の独学で訓練はしたが、フォースの使い方が分からないんだ。」
「それがなんでレスリーから?」
「レスリーも、ライトセーバーの型は知ってても、フォースの使い方が分からない。だから僕達に教えてほしいんだ。」
心臓を握り潰されたような感覚だった。
クローン戦争の時も、私は同じようなことを教えた。そう、カリ達のクランにフォースの使い方を教えた。私があの頃と同じことをするなら、ルークかレスリーのどちらかに影響が出ることになる。
最悪、2人の内片方が暗黒面に堕ちる可能性もある。
銀河どうこうじゃない、私が嫌なんだ。
「………できない。」
「最後まで教えなくていいんだ!最初だけでも、」
「だからできないの!もしヴェイダーみたいに暗黒面に堕ちたらどうするの!?あんた達と戦うのは嫌だよ!」
「どういうことだ?」
「あんたには関係ない。ただ、ジェダイの訓練をするということは、危険と隣り合わせなの。それを忘れないで。」
背を向けると、ルークはある惑星の名を言う。
その名前に、私は振り向いた。
「ダゴバ」
ルークは、その言葉を繰り返した。
「ジェダイの長、マスター・ヨーダがいるんでしょう?」
「なんで知ってるの……?」
「吹雪の中、ベンが教えてくれたんだ。彼のところへ行けば、ジェダイの訓練が受けられるはずだ。貴女が教えてくれないなら、僕はダゴバへ行く。」
「それは脅し?」
「違う、交渉だ。」
沈黙が続き、私とルークは睨み合う。
その時、レイアが私を呼びに来た。
「サマンサ、問題発生よ。」
「どうしたの?」
「近くに帝国のドロイドが落ちたみたいなの。」
嫌な予感がして、私はレイアと一緒に司令部へと行く。
司令部へ入ると、緊迫していた。ソロとチューバッカが確認しに行っているようで、司令部はその報告待ちだという。もし見つかれば、反乱軍はホスを撤退しなければならない。その為、基地内はもしもに備えて慌ただしくなっていた。
私も通信機でアズに指示を出して、いつでも出発できるようにさせておいた。
この星にリックがいないのが幸いだ。彼は今、滞った仕入れ先の安否確認へ行っている。帝国の締め付けが厳しい中、納品してくれる卸売業者は貴重だ。もし帝国に押さえられていたら、しばらくは営業はできなくなる。
これから先、何があるか分からない。
反乱軍共々、退路を確保しなければならないかもしれない。
「サマンサ?」
レイアの問いかけで我に返る。
「何かあった?」
「その内知られるだろうから、今言っておく。」
「どうしたんです?」
「あのドロイド、私のせいかもしれない。」
「えっ……!?」
司令部の面々も、私を見る。
突然帝国のドロイドが現れるのもおかしい。タイミング的にも、〈ホーガ・フォレスト〉がここに来てからだ。原作でも現れるけど、感覚的には〈ホーガ・フォレスト〉が来てすぐだった。
何かが起こりそうで、怖くて堪らない。
「先日、〈ホーガ・フォレスト〉にヴェイダーが来た。」
「まさか、そんな……!」
「戦いに来たわけじゃない。ただの脅しだよ。」
ヴェイダーのことを話すと、レイアは絶句する。
「そういうことだから、私はここに来るべきじゃなかったの。」
だから長居する気はなかった。迷惑がかかるから。私のせいで未来を翳らせたくない。
「ママが悪いわけじゃない。」
そんな中でも、レスリーは私のせいじゃないと言う。娘にとって、私は善なる存在だから言えることだ。私がどんな人間か、自分がよく分かってる。
「何やってんだ?」
戻ってきたソロの声で、重かった空気が軽くなった。
ソロはドロイドを撃ち壊してしまったらしい。帝国に破壊が伝われば、すぐにでも艦隊が来る。どちらの規模が大きいかなんて、火を見るよりも明らかだ。
反乱軍はすぐに撤退作業へと入った。
私も船に戻り、将軍指示を受けて離陸準備を行う。
アズが忙しなく船内を走り回り、ようやく離陸ができるようになった。
「サム様!すぐに発ちましょう!」
「まだダメ。反乱軍の撤退を見届けてから。」
「しかし、」
「お願い、アズ。」
「畏まりました……」
アズは指示を受け入れると、格納庫へ行った。
システムを再構築させていると、反乱軍の評議会から通信が入る。仕方なく繋げると、評議会の面々がホログラムに映し出された。ホログラムには、モスマ議員もいる。
『サマンサ、そちらの基地から緊急撤退の報告を受けました。貴女もすぐに離陸してください。』
「分かっています。」
そう返すと、モスマ議員は人払いをする。ホログラムはモスマ議員1人になり、私と議員の2人の通信となった。
『やはり、貴女の力が必要です。』
「充分協力してる。可能な範囲でね。これ以上は無理です。」
『それは承知の上ですが、軍事的な協力もしてほしいのです。』
つまり、ジェダイやパイロットとして動いてほしいということだ。裏方仕事にも限界がある。そんなことは私も分かっているけど、ジェダイには戻りたくない。今まで戦ってきたのは、私自身に必要だったからだ。
反乱軍は今の私ではなく、ジェダイの私を必要としているが、ジェダイの私はそもそも存在しない。
だって、私はジェダイじゃないんだから。
「それは何度も無理だと言いました。反乱軍だけじゃない。ヴェイダーにもね。」
『どういう意味ですか?』
「ちょっと前に、〈ホーガ・フォレスト〉にヴェイダーが来た。帝国の為にフォースを使えってね。」
『それは……』
「私だけが危ないんじゃない。ルークやレスリーだって危ない。状況は、貴女の思っている以上に悪い。」
そこで、アラートが鳴り響いた。このアラートは、敵襲のサインだ。ついに帝国軍が来たようだ。
『撤退したら、〈ホーム・ワン〉へ来てください。もう一度、話し合いをさせてくださいませんか?』
「分かった。無事に脱出できたら、伺います。」
『サマンサ、フォースと共にあらんことを。』
通信が切れ、空を見上げるとスター・デストロイヤーが現れた。
AT-ATが降りてきて、帝国が制圧モードになっているのを察した。恐らく、ヴェイダーもいる。奴は基地に侵入してくるだろう。
「サム様!早く逃げましょう!」
「もちろんそのつもりだよ。シールドのパネル直した?」
「修理済みです!あ、来ましたよ!行きましょう!!」
操縦席に座り、舵を握って船を離陸させる。
時折ウォーカーの攻撃が当たるが、構っている余裕はない。
TIEファイターの猛進をすり抜け、邪魔なAT-ATを叩こうと魚雷を撃つが、装甲が硬くて微動だにしない。
必死に舵を握っていると、ルークから通信が入る。
『サマンサ!僕はXウィングに乗る!援護するよ!』
「援護の前に、輸送船を守って。私は大丈夫だから。」
『分かった。それと、切り抜けたら僕はダゴバへ行くよ。』
「は!?反乱軍から離れるの!?」
『後で、だ。なぜ嫌がるんだ?』
「ジェダイの訓練をさせる為にレスリーに頼んだわけじゃないからだよ。戻ったら話をするから、覚悟してて。」
『っ……、サマンサ!』
話は後にして、一先ず私は船を離脱させることに専念した。
もちろんルークに釘を刺して。
計算が終わり、船は大した破損もなくハイパースペースへと突入できた。通信では、反乱軍も何とか撤退できたそうだ。ただ、損害は大きいようだった。
私は〈ホーム・ワン〉と合流すべく、座標を入力し直した。
これから、反乱軍の評議会と話し合わなければならない。
反乱軍、元より議員達が喉から手が出る程、ジェダイを欲しがっているのは分かる。必要だということも分かる。彼らはクローン戦争でジェダイの功績を間近で見てきたから。
だけどジェダイとして、もしくはジェダイに近しい存在として私が関われば、また多くを失うことになる。
今度は前以上に大切なものを失うかもしれない。
ジェダイの過去と生き方は受け入れても、ジェダイに戻ったわけじゃない。
私はただ、家族と友達を守りたいだけだ。