カーボン冷凍装置前で、私はしばらく動けずにいた。
ヴェイダー達が出て行った後、ルークとレスリーの気配を感じた。2人は到着したようだ。だけど、面と向かって会う気はない。
リックには伝言は託したし、私は私のできることをする。
「ホーガン、船の用意ができた。」
カルリジアンが声をかけてくる。
「ありがとう。」
彼に背を向けると、なぜか呼び止められた。
「気を付けろ。帝国は油断ならない。」
「知ってる。でも帝国は関係ない。重要なのは、私と皇帝の駆け引きだから。」
「どういう意味だ?」
「いつか分かる。それじゃあね。」
再び歩き出し、私はプラットフォームの1つへと向かう。
プラットフォームには帝国のシャトルが待機していて、私を待っていた。これから開店に向けて準備しなきゃいけない。だから、これは第二デス・スターへの直行便だ。
「ようこそ、ホーガン殿。」
「あんたは……」
私に敬礼したのは、顔馴染みの提督だった。この人も〈ホーガ・フォレスト〉に何度か来ていて、常連とも言える客だ。だけど、こんな状況で会いたくはなかった。
「お元気そうで。」
「私はね。でも、この任務を辞退したって良かったんだよ?」
「とんでもない!これは自分で志願したんだ!皇帝陛下は貴女に不便がないように、と言っていた。費用は惜しみなく出すそうだ。」
「全額?」
「そうだ。」
私はパッドを借りて、必要な経費を打ち込む。その間に、シャトルは離陸を始めた。私と提督は対面の席に座り、今後の計画を話し合いを始める。
それから、概算で必要額を算出して見せると、彼は絶句する。
「こんなに……?」
「〈ホーガ・フォレスト〉はこの倍の費用がかかってる。」
「………」
「無理そう?」
「戻り次第、陛下に確認を取る……」
顔が青くなっていた提督には申し訳ないが、提督ではなくて皇帝の顔を青ざめさせたかった。正直三分の一はカットしても良いけど、今回は惜しみなく使わせてもらう。帝国、もとい皇帝の資産をガリガリ削れるしね。
「で、今後だけど、第二デス・スターの一角に、2号店を開く。玉座の間と一番遠いところが良い。」
「そこは建設途中だから可能だろう。因みに、外部からの客はどうする気だ?」
「その辺は仲間のパトリック・カーターに伝えてある。そこで、ちょっとした仕掛けを作りたくてね。こうなんだけど………」
パッドで設計図を見せると、提督はかなり驚いていた。
まぁ、無茶だろうから。私とて、実現は無謀だと思っている。何より皇帝が嫌がるだろうし。でもこれが、私のやり方だ。
何年も店を続けてきたんだ。交流の仕方も、ライフスタイルも、私のやり方がある。これだけは妥協したくない。
帝国陣営に立ってやるんだ、それくらい許せ。
「もしあいつが怒りそうなら、私に直接言えって伝えて。あんたに飛び火しないようにするから。迷惑かけてごめんね。」
「迷惑だなんて、そんな……私は少しでも力になりたくて来たんだ。もちろん死にたくはないが、私は貴女の味方だ。」
「ありがとう。でも、無理はしないように。」
「分かっている。」
設計図と見積書を提督に託して、私は仮眠室で休ませてもらうことにした。
彼はまだ若い。ソロと同じくらいの年齢だ。離反するにしろ、帝国に残るにしろ、無茶はしないでほしい。
仮眠室の寝台に横になると、視線を感じた。
重い身体を起こし、私は視線の相手に意識を向ける。
「怒ってるよね。」
相手は、レスリーだ。
ルークがヴェイダーとぶつかった後、レスリーがルークを連れ出したらしい。2人を回収した〈ミレニアム・ファルコン〉も脱出できたようだ。ただ、ルークは無茶をして片手を失った。ひどい苦痛を感じる。
それから、レスリーの憤りも感じた。
身勝手な母親で申し訳ない。
「私を信じて。」
その言葉に、視線が消えた。また横になり、私は寝返りを打ってうつ伏せになる。吐き出したい感情を堪えて、唇を噛んだ。
これからは、ルークとレスリーは自分達で学ばないといけない。もう私は2人に手を貸せないから。自力で成長してもらうしかない。
その時、ヴェイダーから通信が入って、私は渋々起き上がる。
確かに帝国側に身を置いてるけど、こうも頻繁に干渉されるのはなんか嫌だ。
「何か用?」
ホログラムに映ったヴェイダーに、私は表情を変えずに問う。
『………』
「暗黒面への誘いを断られた?」
何も言わないヴェイダーに聞くと、怒りを感じた。
『知っていて何もしなかったのか?殺せぬと分かっていたな?』
「なんであの2人を一緒に行動させてると思う?」
『どういう意味だ?』
「周りはレスリーがルークにいろいろ教えてると思ってるけど、それは違う。ルークは光そのもので、レスリーはルークに影響されてる。というか、お互い影響を与えてる。」
ルークはレスリーに、レスリーはルークに。お互いに学ぶものが多くある。だからあえて一緒にいるように仕向けた。私はちょっと手助けしただけ。ほとんど何もしていない。
「2人共、暗黒面には与しないだろうね。」
『………』
「何?」
『片割れがいるだけで、大きな違いが生まれると言うのか?』
「とあるところで聞いたことだけど………」
前の世界のことを思い出す。
「人と人の間には運命の糸があって、強い絆があると絡み合って太くなるって話がある。」
『何を、』
「アナキン、今度こそ話を聞く。だから“子供達”を追い詰めないで。私達と同じことを繰り返させないで。」
私の表情を見たヴェイダーは、動揺していた。こういう話をするのは、ジェダイ時代でもあり得なかったから。初めて見る私の表情だったのだろう。
私だって、こんな感情は初めてだ。
『………ホーガン、戻ったら話がある。』
「分かった。待ってる。」
そう返すと、通信を切られた。
これで何かが変われば良い。私は大それたことはしてない。小さな石が起こした波は、どこまで変わってくれるだろうか。
その後、私は紆余曲折しながらも2号店を第二デス・スターでオープンした。
もちろん、玉座の間から一番遠く、ハンガーが隣接する場所だ。私が考えた仕掛けは何事もなく作動している。帝国軍の常連は2号店に来てくれて、リックの店と半々くらいの客足になった。
変わったことといえば、第二デス・スター内を歩き回る私に対する、帝国軍の態度だ。
当初、店に来ない客からの嫌味が絶えなかった。当然の反応だ。いきなり来た元ジェダイで、反乱軍と親しかった女だから。でも、真っ当に商売していたら、ほとんどの面々は態度が軟化していった。
皇帝とはあれから接触していない。
もし関わってくるなら、良い展開ではないだろう。今後どうなるか、正直怖い。マスターなら、きっと私より良い方法を選ぶかもしれない。
私はジェダイじゃないから、良い答えが分からない。
ねぇマスター、私はちゃんと正解を選べてますか?