西方十勇士、大友焔。
天神館のある博多出身で、学生の身でありながら、大友花火工場の社長を務める。
銃マニアならぬ大筒マニア。
軟弱なくせに、西よりも評価の高い東が気に入らないと公言しており、今回の交流戦で、東を叩き潰そうと意気込んでいた。
「くらえ!大友家秘伝、『国崩し』ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
大筒から放たれる砲弾が、川神学園生に襲い掛かる。
「うわぁぁぁぁ!」
「くぎゃぁぁぁ!」
火薬の量が抑えられ殺傷力はないが、それでも爆風によって次々と戦闘不能にさせられる。
瞬発力の高い一子は何とか躱しているが、他の者はそうはいかなかった。
これが、蔵馬が焔を一番やっかいだとしている理由である。
こういう集団戦において、広範囲攻撃によって兵を一網打尽にされると、一気に瓦解してしまうからだ。
一子が相手の挑発に耐えながら、回避に専念しているのは、当然、相手の弾切れ狙いである……だが。
「一言教えてやるぞ東の。この大友に弾切れはない!」
新しい弾を担いだ敵が、焔の後ろに現れ彼女に手渡した。
弾切れを狙っていた一子はショックで涙目になっていた。
戦の基本は補給戦の確保である。
特に砲兵にとって弾切れは死活問題。
ある意味当然……そして…。
「その兵站を破壊するのも、戦の初歩と知りなさい」
得意になる焔の前にマルギッデが姿を見せた。
クリスの部隊が大友の補給線を断った事を伝えた。
「笑止!言うた通り、大友に弾切れはないのだ!」
焔は前もって、弾薬をいたる所に隠しており、一時的に補給が断たれようが、弾切れになる事はないと自信を持っていた。
「フッ…甘いですね。我らが軍師が前もってこの戦場を下見したおり、お前が隠した弾薬を見つけて、その全てを使い物にならない様にしています」
「な…何だと!?」
マルギッテの言に驚いた焔は、兵に命じて隠した弾薬を確認させた。
「大友さん。隠してあった弾薬が全部駄目にされていますぜ!」
「こっちもです…この調子じゃ他の隠し弾薬も同じよう状態かと」
「ば…馬鹿な…」
流石の焔も動揺した。
全ての隠し弾薬が見つけられたとは思えないが、どこの弾薬が見つけられてないか判別できない。
つまり、今持っている弾薬を使いきり、隠し場所の弾薬を使おうにもハズレだったら、敵の接近を許してしまう。
焔も、嗜み程度に武道を学んでいるが、やはり目の前の二人には及ばない事くらい自覚している。
相手の裏を掻いたつもりが、逆に裏を掻かれた。
先日、蔵馬が戦場である工場を下見に来た時、蔵馬と入れ違いに出てきたのが焔であった。
蔵馬は彼女が砲術使いであるという情報を得ていたので、工場内を隈なく探索した。
人間はおろか普通の犬よりも遥かに嗅覚が良く、元・盗賊なので隠そうとするもの及び隠されているモノを見つけるのが得意な蔵馬は、焔が隠した弾薬を全て見つけて、使い物にならなくしてしまったのだ。
焔のミスは、慢心から隠した弾薬の定期的確認を怠ったことにある。
あの後、一回でも確認しておけば、弾薬が駄目にされた事に気付き、対策をとれたのだから…。
「ならば、手持ちの弾薬でお前らと倒せば済む事ぞ!!」
意気込んで再び、砲撃を仕掛けるもマルギッテの投げたトンファーに砲口を塞がれ大筒が暴発。
腕を負傷しながらも砲撃を続けようとしたものの、腕が使えないので次弾発射が遅れてしまい、マルギッテに間合いに入られてしまった。
マルギッテの猛攻に素手で対抗するも、前述の通り焔の対術は嗜み程度、並みの相手ならばともかく、近接主体であり『欧州の神童』と呼ばれたマルギッテにはまったく歯が立たず、『トンファー・マールシュトローム』により、撃退された。
「無念だぁぁぁぁぁぁぁ!」
西方十勇士4人目、大友焔、撃破。
★☆★
5人目の十勇士最速、尼子晴とその親衛隊『尼子衆』はクリス隊の副官を務める準が相手取っていた。
尼子の外見は見事に井上の好みに一致していた。
一見ショタに見えるが、実は男装した幼い外見の少女であると確信した準は、通常の3倍の戦闘力で尼子衆を一蹴し、尼子を捕まえたがその感触から間違いなく男であると判明……ガッカリした準の手刀一発で気絶した。
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「良かったですね。あそこにいるのが貴女の方だったら、あのロリコンに何をされていたか解りませんでしたよ」
準と尼子から少し離れた物陰に蔵馬が尼子そっくりの少女を捕らえていた。
「…………」
彼女こそが尼子晴本人であり、準と戦っていたのは双子の弟『尼子ハル』。
十勇士最速というのは、そっくりな容姿を利用した姉弟による時間差攻撃を『瞬間移動』と称し相手を翻弄するというカラクリであった。
「…それでわたしをどうする気?」
「どうもしませんよ。既に十勇士の尼子は、井上に討ち取られた。ここで貴女が出れば、その秘密が他の皆に判明してしまう。それは貴女たちも避けたいでしょう」
尼子が双子であるというのは、十勇士以外の天神館生徒に秘せられている。
親衛隊の尼子衆もその事実を知らない。
「つまり、わたしに大人しくしていろ…と」
「それとも、皆に秘密を晒される事を望みますか?」
「…了解…私は脱落者として、大人しくしているよ」
その後も川神学園は次々と、十勇士を撃退していった。
負傷した兵達も英雄の激励により奮起し、動ける者は戦場に復帰していった事により、最終局の盤面は膠着した。
6人目の忍者の蜂屋壱助が単騎で本隊に奇襲を仕掛け、大将である英雄に襲い掛かるが、護衛であるあずみが迎撃。
蜂屋があずみに飯綱を仕掛けた。
あずみは風魔の忍者であり、風魔と蜂屋は源流が同じと言われており、飯綱の恐ろしさは両人とも解っている。
蜂屋も忍としては中々の腕だが、やはり経験ではあずみの方に一日の長があり、
あずみが自爆したと同時に蜂屋はその手を離してしまい、服を脱皮する事で蜂屋から逃れたあずみは、蜂屋の後ろに回り、飯綱をそっくりそのまま返し、撃退した。
7人目の守銭奴ハンマー使いの宇喜多秀美が、強引に部隊を突破し、本隊を襲撃、大将に一騎打ちを申し込むが、英雄も軽々しく受ける事なく、代わりに不死川心が対峙する事となった。
パワー系であり、突進がウリである宇喜多だったが、心の得意とするのが柔道であったが為、相性が悪く、一本背負いで投げ飛ばされ、敗北を喫した。
8人目の四国を愛するオイルレスラーの長宗我部宗男は、海を泳いで本隊の背後に回り奇襲したが、冬馬が念の為に備えていたので、川神学園側の数は揃っていた。
オイルレスラーが何人がいる事は、既に蔵馬から聞いていたので冬馬はライターを相手に向かって放り投げ、オイルを被っていた長宗我部は火達磨となった(注:良い子は真似しちゃいけません)。
すかさず小雪が自慢の足を使い、長宗我部を海側に蹴り飛ばし大事には至らなかったが……。
こうして、大将と副将を除き西方十勇士は壊滅した。
★☆★
クリスが敵本陣に突入した時、そこには誰もいなかった。
形勢不利とみた大将・石田三郎と副将・島右近は、身を隠し時間切れの引き分けを狙う策に転じたようである。
「フム…そろそろ俺も行動していいかな」
蔵馬は先日、鉄心から「勝敗が着く寸前になるまで、大っぴら行動しない」様に指示されていた。
本来ならば、昨日の三年生の部の百代の様に蔵馬一人で西方十勇士を撃退する事は可能であった。
しかし、それでは他の者の成長にはならないとして、鉄心が蔵馬の行動を規制していたのだ。
蔵馬としても、少しは力を見せるつもりだが、やはりある程度は実力を隠したいので、鉄心の指示は都合が良かった。
「この工場の中で、最も見つかりにくいスポットは……」
天神館大将・石田は今、計算違いの極致であった。
自分の様に保身に長けた小狡い男くらいしか見つけられないと思っていたスポットを見つけられ、腹心である島は、足止めを受け、そして自分と対峙する男の強さは、想定外だった。
隙を見て逃げようにも、毛利を下した弓兵が自分を狙っている。
絶対絶命とはまさに今の状況を言うのだろう。
「くそっ!出世街道を歩む俺が……負けるというのか?」
将来は石田鉄鋼を継ぐ身であり、栄光が約束されている自分が、東の阿呆共に敗れる?
「いや、そんな事はありえん!この俺が貴様なんぞに負ける筈がない!!」
石田は西方十勇士の大将。
その実力は、十勇士の中で一番強い……と言われている。
それはある奥義を持っているからだ。
「いくぞ…奥義『光龍覚醒』!!」
金色のオーラに包まれた石田の髪が金髪となって逆立った。
「ほう、まるでドラゴンボーズの超野菜人のようだな」
ドラゴンボーズとは、20世紀後半を代表する人気少年漫画で、連載が終了して10年以上が過ぎても、未だに人気がある作品である。
超野菜人は、主人公が逆立った金髪に変身した姿で、戦闘力が大幅にアップするという設定だ。
「西では、女よりも男の方が強い!光龍覚醒した俺に勝てるのは、川神百代くらいだ!!」
「確かに強くなったようだが……それでも!!」
石田の斬撃を蔵馬は流れる様な動きで、紙一重で躱していた。
(…壁越えの強さには達していないな)
妖怪に例えるならばD級中位レベルがC級下位レベルなった程度。
百代しか勝てないというのは大げさだ。
百代以外の武道四天王でも余裕で勝てるレベルである。
(たいした強さだし、しっかりと鍛錬している様だが……やはり慢心が過ぎるな。それさえなければもっと強くなっていただろうに)
奥義というだけあって光龍覚醒は、技の難度では上位である。
しかし、使う度に寿命を削る様では残念ながら石田は使えるだけで極めたとは言えない。
「…そろそろ終わらせる……ん?」
蔵馬は、この場に向かってくる強い気配を感じ取った。
その強さは恐らく『壁を越えた者』に達している。
しかし、蔵馬はこの気配の持ち主に心当たりがなかった。
(天神館の伏兵か?しかし、十勇士の切り札である『あの男』ではない。何者だ?この強さ…下手をすればまゆっち以上だ)
「戦いの最中に隙を見せるとは……舐めるな!!」
向かってくる者に気を取られた蔵馬に石田が攻撃を仕掛けるが、如何に気を取られているとはいえ格下の敵を前に隙を見せる蔵馬ではない。
石田の攻撃を跳躍する事によって躱すと、向かってくる者の姿を視認できた。
「あれは、川神学園の制服…という事は味方か?」
自分の攻撃を躱した蔵馬を向かえ討つ為、迎撃の態勢をとっていた石田も、ようやく向かってくる者に気付いた。
「何者だ!?」
「…源義経、推参!!」
源義経の名を名乗る少女の抜刀からの斬撃が石田を捉えた。
「…源義経……あれが九鬼が推進している武士道プランとやらの申し子か…」
大将である石田が倒された事で隙を見せた島を、一子は川神流『水穿ち』によって下し、ここに最終夜は川神学園の勝利で終わり、東西交流戦は2勝1敗で川神学園が制した。
とりあえず、大将である石田とA-4の攻略キャラである焔と晴以外は原作ゲームそのままなので簡単な説明文のみにしました。
あと武士道プランと松永燕登場の話が終われば序章が終わります。
幽白キャラは、次章であるオリジナル展開から登場させる予定ですので、幽白キャラファンの方々はそれまでお待ち下さい。