そういえばぐだぐだイベ、盛り上がってますね。……山南さん、裏切りすぎでは?調べても大した逸話が出てこなかったからどうするんだろうと思ってたら、事あるごとに裏切るフーゴ的なキャラで行くんですかね?
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マーリンの宣言の衝撃冷めやらぬまま、カルデアは山の民に接触していた。山の民はもともとここエルサレム周辺に住んでいた人々を、はぐれサーヴァントたちが守護するという形で存続している集団だ。ベディヴィエールの勧めで、カルデア一行は交渉を行っていたのだが……
「……相分かった。難民の者たちは受け入れよう。だが!貴様らのようなよそ者を認めるわけにはいかぬ!」
「そ、そんな!」
『ちょっと待ってくれ!僕たちの目的は同じで……』
「黙らっしゃい!この声だけの卑怯者めが!!」
『ひいごめんなさい!』
集落を守っていたサーヴァント……呪腕のハサンに一喝され、ロマニはすっかり縮こまってしまう。フンと鼻を鳴らし、ハサンは話を続ける。
「そも、そこにいるのは円卓の騎士ではないか。我らの最後の希望までも摘みに来たのか。」
「待って!ベディヴィエールは円卓の騎士じゃないの!」
「そうです!ガウェイン卿のように強くもなければ、これといった逸話もない方ですから!」
「あ……はい……そうですよね……私なんて……。」
「そ、そうなのか。強く生きられよ、白銀の方。では、そっちの男はどう説明するのだ!鍋を背負って帯刀しているという怪しい見た目の上、女泣かせの香りがプンプンするわ!」
「しょ、初見で見破られた!?先輩、この方は相当いい目を持っています!」
「わ、私は……私は、初めて会う方にもわかるくらい、遊び人なのでしょうか……。」
心に深いダメージを負った二人を他所に話は進み、ひとまずは力試しをすることとなった。山の民の協力者である、アーチャークラスのサーヴァント、アーラシュの仲介によるものだ。曰く、『ハサンは難民を救ってもらったことをこの上なく喜んでいたが、それはそれとして信用できるのかどうかと、仮に協力体制をとった際足手まといにならないかの確認をしたい』との事である。
そして始まる戦闘だったが、こちらの編成がセイバー2騎とシールダー、それにキャスターとバランスがいいのに対し、相手はアーチャーとアサシン。接近さえしてしまえばあっさりケリがつくと思われたが、予想に反し戦いは苛烈を極めた。
というのも、相手の戦い方が抜群に上手いのだ。アーラシュから放たれる矢は、一撃一撃が非常に強烈で、対処するために足を止める必要があったため、中々距離をつめることが出来ない。その上、ハサンが影から飛び出すように急襲を仕掛けてくるので、ほんの少しも気を抜けない。
戦いは結局、立香のガンドによって動きが止まったハサンをマシュが盾でぶん殴って決着した。アーラシュはハサンが負けた時点で笑いながら降参し、何とかカルデアの勝利となったのであった。
「ぐ、むうう……流石にここまで完璧に負けては、これ以上意地を張るのも無意味、か……。」
「だから言ったろ?呪腕の兄ちゃん。こいつらはいい奴だってな。」
「私たちはあくまで獅子王を倒すため、協力できると考えています。どうか、力を貸していただけませんか?」
「……それを願い出るのはこちらの方だ、魔術師殿一行よ。どうか力添えをお願いしたい!」
「やった!交渉成立だね!」
こうして山の民の協力を取り付けたカルデアは、彼らの村に迎え入れられた。ケンが戦って助けたあの親子も、子供は新天地にわいわいと走り回り、母親はそれをなだめながらも幸せそうな顔をしている。
「よっしゃ!歓迎の宴といきたいところだが、その前にちょっと仕事に付き合ってくれるか?あんたらも、周りからの信用が得られるかもだぜ?」
「アーラシュさん。仕事とは一体……?」
「なに、村の周りの化け物どもをちょっくら狩りに行くだけさ。村の安全は守れる、食える部分は少ないが肉も取れる、そんであんたらは信用が得られる。いいことずくめだろ?ま、あんまり美味くはないけどな!」
ガハハと快活に笑うアーラシュ。周りの雰囲気もついつい緩んでしまう、リーダーシップのある人物だ。その弓の腕はやはりすさまじく、ケンやベディヴィエールが走り回ってようやく一匹キメラを仕留めたころには、アーラシュが3匹仕留めていた。もっともキメラはベースがライオンなので、強いわりに美味しくない獲物なのだが……
「ふふふ、そこはこのダヴィンチちゃんにお任せさ!ムジーク家の錬金術の如く、上等なお肉に変えてあげよう!」
しかしそこはカルデアの誇る技術者、ダヴィンチの面目躍如というものである。錬金術によって臭みを抜いてくれた。臭みさえ抜ければある程度食べられるものになるが、どうしても固さや筋っぽさは抜けない。だが、カルデアにはこの男がいる。
「肉が固いときは繊維を断つように切るのが大切です。それから、脂肪が少なそうなので牛脂を使いましょう。こんなこともあろうかと、持ち込んでいるのですよ。」
あとは叩いて柔らかくしながら……などと呟きながら、てきぱきと調理を行うケン。塩コショウで味付けをすれば、食欲をそそる匂いが香り出す。
「おお、美味そうだな!こりゃ急いで持って帰って、皆にも食わせてやらなきゃだ!」
「はい!急いで帰還しましょう!」
来た時とは違って足取り軽く、一行は村に帰った。きちんと調理されたキメラの肉は非常に評判がよく、あっという間になくなってしまった。立香もしっかりと腹ごなしをし、すっかり忘れてしまっていた目的を思い出した。
「あっ、そうだ霊脈!マシュ、確かこのへんにあるんでしょ?」
「そうでした!ハサンさん、ここに召喚サークルを設置させていただいてもよろしいでしょうか?」
「……そうですな、戦力の増強になるのであれば。」
「ありがとうございます!」
嬉々として盾を設置し始めるマシュ。その嬉しそうな様子を見たケンは、立香に尋ねてみた。
「マスター、召喚サークルとは何ですか?」
「あっそうか、ケンさん初めてだもんね。召喚サークルを設置したらカルデアから物資の支援を受けられたり、サーヴァントの皆を呼んだりできるんだよ!」
「なるほど……え、ちょ、ちょっと待ってください?カルデアから、サーヴァントが来るのですか??」
「……まあ、責任とればいいんじゃない?」
「マシュ殿ステイ!ステイですちょっとまっ――!!」
―――もう、すべてが手遅れだったのだ。
「オウオウオウ、ケン?まるでワシらが来るのが嫌みたいな言いぐさじゃなあ?」
「い、いえそのようなことは……」
「やっぱり
「お虎さんも落ち着いてください。か、カルデアに戻ってからなら、いくらでもお相手しますから……。」
「言質とりましたよケンさん!沖田さんもお、お、お相手してもらいますからね!!」
「……鼻血出てるぞ。」
あっという間にいつもの空間になってしまったケンの周囲を、立香とマシュは冷ややかな目で見つめていた。あれさえなければいい人なのになあと思いながら。
「ははっ!ケンのやつも中々隅に置けねえな!」
「やはり、あの時感じた女泣かせの雰囲気は……やれやれ、ですな。」
すっかり賑やかになった歓迎の宴。夜は更け、魔力の温存のためにぐだぐだ3騎は帰っていった。有事には必ず呼んでくださいねと言葉を残して。
「……結局あの3人、ケンさんといちゃついてご飯食べて帰っていっただけなんだけど。何しに来たんだろ。」
「面目ないです、マスター。私が我儘を言ってついてきたばかりに……。」
「まったくじゃな!猛省せんか!」
「……ん?」
そこいたのは、目を引く艶やかな黒髪と燃え盛る焔のような緋色の目をした少女。そう、帰ったはずの織田信長がそこにいた。
「な、なんで帰ってないんですか信長様!マスターが干からびてしまいます!」
「あー、それは安心せい!ワシは今、マスターからのパスは一時的に切っておるからな。まあなんせ?ワシってば、『単独行動』とか言う便利スキル持っとるわけじゃし?やっぱ、越後のメス猫だの敵を殺した人数より粛清した身内の方が多いような人斬りサーの姫とは違うわけよな?はっははは!」
「……あんまり陰口言ってるんじゃ、ホントの意味で単独行動してもらいますからね。」
「むう、ワシとおるのに他の女をかばうでないわ!まあそういうところを好きになったんじゃけどネ!」
また始まったよと、もはや立香はほんの少しも気に留めず、ぐっすりと眠りについた。日が昇るのに従って目を覚ませば、一日の仕事が始まる。ひとまず今日も狩りに出ようとした時、一人の男が駆け寄ってきた。
「頭目ー!大変だ、西の村から狼煙が!!」
「な、何だと!?色は何色だ!?」
「――黒!敵襲だ!」
「アーラシュ殿、旗は何と出ているか!?」
「赤い竜の首を経ち斬る稲妻だ!見覚えはあるか!?」
「おお、おおお――!!まずい、皆殺しにされるぞ!!」
「ん、皆殺しじゃと?疾く申せ!」
信長が珍しく君主らしいことを宣言すると、カリスマが働いたのか物見の男は突然の命令にも困惑することなく、弾かれたように報告する。
「は、はい!黒の狼煙は、『まもなく接敵する』の意味です!」
「西の村には、百貌の姉さんがいるが、もって半日ってとこだろう!だが、ここから向かうにはどう見積もっても2日はかかるぞ!」
「なおのこと不味いのは襲撃者だ。獅子王を示す竜を殺すと宣言するのは一人しかいない!」
「ま、まさか――!」
「―――モードレッド!あのバカ……!!」
ケンの呟きは周囲の喧噪にかき消され、誰にも聞かれることはなかった。信長でさえ、次の手を考えて誰の話も聞いていなかったのだ。
「ダヴィンチちゃん!なんかこう、ビューンと西の村まで飛んでいけたりしないの!?」
「時間さえあるのなら、木と鉄釘一本でヘリコプターくらいちょちょいだが、どう頑張っても半日はかかる!その間に全滅か、最悪モードレッドの宝具の的になるだけだ!」
「いや、待てよ。そうかそれがあった!飛べばいいんだ!」
アーラシュの顔が明るくなり、周囲の視線が集まる。
「と、飛ぶ!?そんなことが可能なのですか!?」
「ああ、片道切符だがな!それより部隊編成だ。立香とマシュ、俺までは確定として、ケンはどうする?」
「私に行かせてください!信長様は――」
「当然、ケンのいるところワシありよ!小粒どもが相手なら、ワシの宝具が文字通り火を吹いてくれるわ!」
「よし、それでいいな!?ベディヴィエールは!?」
「彼女が相手なら、ケンさんに任せたほうがいいはずです!どうか、お気をつけて!!」
一瞬で編成は確定した。ケン、信長、立香、マシュ、アーラシュが西の村への救援へ。呪腕のハサン、ダヴィンチ、ベディヴィエールが残って村の護衛に。救援チームは急ぎアーラシュの案内で、謎の土台のような場所にたどり着いた。
「これは……いったい何ですか?」
「まるで、発射台のような……。」
「おっ、察しがいいな!よし立香、ここに入って取っ手をしっかりつかんでな!マシュはしっかり守ってやるんだぞ。ケンと信長殿はサーヴァントだから多分大丈夫だ!」
「ま、まさか。この発射台に私たちを乗せて飛ばす気ですか!?」
「当たり前だろ!多分時速300キロくらいは出るから、舌を噛むなよ!」
「馬鹿だこの人ーーーー!!!」
立香の叫びも空しく、一行を乗せた船(?)は吹っ飛んでいく。
「うはははは!サルの奴みたいな無茶苦茶やる奴よ!お主、ワシの家臣にしてやろう!」
「そいつは嬉しいな!だが、そろそろ着地だぜ!しっかり掴まってな!」
「せ、先輩!私がカバーしますから、ご安心を!」
「ケン!ワシ怖い!ギュッとせんかギュッと!」
「満面の笑みで言わないでください!!信長様と違って、私もちょっと、余裕ないです!!」
悲喜こもごもの船は平らな地面に着陸(墜落)し、すっかり大破してしまう。着地体制をとっていた一行は何とか無事だったものの、ケンは足が未だ震え、立香は頬が緩んだ気がしてもみほぐしていた。
「情けないのう、ケン!夜の方はワシがいつも足腰立たなくさせられるのに――」
「わーっ!わーっ!な、なにも聞いていませんよね皆さん!?」
「ハハハ、英雄色を好むってやつだな。ゆっくり話を聞きたいところだが時間が惜しい!さっさと西の村に向かうぞ!」
「――然り。私が案内をしましょうぞ。」
誰も気づかぬうちに現れたのは呪腕のハサンだ。いきなりの登場に驚くも、西の村は巧妙に隠されているということなので、彼の案内がなくてはたどり着けないのだ。
「では急ぎましょう!恐らく、5分も走れば敵の最後尾に追いつけまする!」
「了解です!先輩、お姫様抱っこ失礼します!」
「よっし、じゃあ出発!」
流石にサーヴァントの速度と言うべきか、あっという間に粛清騎士の群れが見えてきた。その先に村があると思われる場所からは、もうもうと煙が立ち上り、戦火を否応にも感じさせた。
「ここは二手に分かれましょう!私とアーラシュ殿は伏兵に!」
「了解だ!立香、頼んだぜ!」
「任せて!それじゃ行くよ皆!」
「はい!マシュ・キリエライト!接敵します!」
マシュの堅さを活かした突撃により、戦いの火ぶたが切って落とされた。だがそれは、一方的な戦いであった。
「うっははははは!!脆い脆い脆すぎるわ!獅子王とやらは、まともな鎧もそろえてやれんような貧乏軍か?まあワシらの時代、兵の鎧は自分持ちじゃったけど!」
信長があまりにも優秀すぎたのだ。宝具の『
「す、すごーい!ノッブそんな強かったの!?」
「なんじゃマスター、知らなんだか!おなごは見られて強くなるものよな!」
「信長様こっちは撃たなくていいですから!あなたの弾丸も躱さなきゃいけなくなってます!」
「馬鹿者!お主は下がってワシの戦いぶりを見ておけい!」
ケンが斬りかかろうとする相手を中心に撃ち殺す信長。おかげでケンはすっかり手持無沙汰である。だがその行為はケンの事を思っての事とわかっているので、ケンも素直に立香の傍に控えた。突然の奇襲などに備えるためである。
「愛されてるねえケンさん。」
「ありがたいことに、ですね。しかしマスター、随分と余裕がおありのようですね。」
「私だって、何度も修羅場をくぐってきたもんね!こういう時、焦ってもいいことないのを知ってるから!」
ケンは立香の一般人と言うにはあまりに据わっている目を見つめた。秘めた決意と勇気は、なんとも好ましいものであった。
「―――それは結構。では、そろそろ本丸です!そのままの覚悟でお願いします!」
『ケン君の言う通りだ!そっちに一際大きな魔力反応!おそらくはモードレッドだよ!』
「よし、やるぞぉ!」
「はい!」
―――突如、赤雷が走った。味方であるはずの粛清騎士すら吹き飛ばし、更地になった大地に足音が響く。
「やっと面白そうなやつらが出てきたじゃねえか!特にそっちの赤いのは、案外骨のありそうな……!」
「―――おい、待て。なんでてめえがここにいるんだよ。」
モードレッドのエメラルドの瞳が、まっすぐにケンを射抜く。諸国大名弓矢で殺す、糸屋の娘は目で殺すという言葉があるが、まさしくモードレッドの瞳は、ケンを射殺すばかりの鋭さだ。それでもケンは一歩も退かず、その視線を受け止める。
「……はっ!面白れぇ、俄然やる気が湧いてきたぜ!なぁ、ケン!!てめぇの四肢を切り落として、俺の砦に放り込んでやるよ!!」
「――ほぉ、笑わせるのう。愉快な犬は嫌いではないぞ。」
「あ?」
澱んだ眼でモードレッドを見つめるのは、当然我らが信長である。すごむモードレッドを気にも留めずに続ける。
「ワシのケンの四肢をもぐ?中々いい冗談じゃな。ワシがオチをつけてやろう。――つまらん冗句を抜かした雌犬を、魔王が撃ち殺したというのはどうじゃ?」
「――やってみろよ、ちんちくりんが。」
魔力放出でロケットのように吹っ飛び、距離を詰めるモードレッド。それを即座に火縄銃を展開して迎えうつ信長。――今ここに、魔王と赤雷が対峙する。
「あっははは!早速修羅場だね、マイ・フェイト!あぁ、想像するだけでゾクゾクするなあ。あそこにボクが入ったらどうなっちゃうんだろうか。」
「それに生前はお盛んだったみたいだけど、カルデアに来てからはまだのようだし……ふふ、すっごくいい事を思いついてしまったね!」