“ケン”という男の話   作:春雨シオン

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8月の終わりに描き始めたこの小説も、10月に入ってしまいました。ここまで続けてこられたのは皆さんの応援のおかげでございます。これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。

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Part13 流星一条

 聖都キャメロットに突入せんと全力で走り続ける連合軍。敵のサーヴァント・ガヴェインの攻撃により、今川義元の矢は防がれるが、それでも義元は放ち続ける。

 

 

「余は矢を放つだけだが、奴はいちいちそれを薙ぎ払う必要がある。圧倒的優位よな!」

 

「その代わり、これすっごい走りにくいんですけど!まだ続けなきゃダメですか!?」

 

「当然よ!この優位を保つぞ! ――ッ、待てい!」

 

 

 言いながら弓を引き絞る義元だったが、突然風向きが変わったのを感じた。これは弓兵としての感覚ではなく、武将としての第六感だ。ただ単に風向きが変わっただけでも、戦の流れというものは大きく変わる。流れの変化は、最終的な戦の結果にすらつながりうるのだ。

 

 まったくの無風、快晴の状態から。いきなり砂嵐が吹き荒れる。キャメロットを打ち砕こうとするように、一直線に向かっていくそれには、巨大な髑髏が見えた気がする。

 

 

「おお、おお――!見よ、まるで忌まわしき聖都を飲み込むように、砂嵐が――!」

 

「これなら、敵の弓矢は届きません!一気に接近できます!」

 

「――ッ!総員、弓を捨てよ!役に立たん!ここからは、速さが勝負だ!!」

 

「えっ、余もう役立たず!?召喚から一時間もたっとらんぞ!?」

 

『やはり時代は火縄よな!所詮貴様はワシの下位互換よ!わかったらそこをワシと代われ!おいマスター、今すぐワシを呼べ!』

 

「信長様、申し訳ありません!マスター、ここはお虎さんがいいかと!」

 

 

 飛び道具を無力化する長尾景虎のスキル『鎧は胸にあり』であれば、マスターを飛来する矢や石から守ることが出来るはずだ。

 

 

「なるほど!それじゃ来て、お虎さん!」

 

 

 マシュに抱えられながら、立香は手を掲げた。手の甲の令呪が赤く輝き、カルデアとのパスがつながった。

 

 

「長尾景虎、見参!マスター、状況は把握しています!あの城壁に向かって走って、殺しつくせばいいんですね!」

 

「うーんまあヨシ!それでいこう!」

 

 

 『承知!』と子供が見たら震えあがりそうな笑顔で返事をした景虎は、マスターの傍を離れないようにしつつも、その足はうずうずとしている。

 

 

「あはははは!ケン!まさかあなたと、戦場を駆けることが出来る日が来るとは思いませんでした!信長はあなたを戦場に出したくなかったようですが、あはははは!こんなにいいものはありません!私の傍を離れないようにしておきなさい!」

 

「は、はい!ありがとうございます!」

 

「げ、上杉のシグルイではないか。言っとくが余に構うでないぞ。」

 

「何ですかこのちんちくりんは。私は知らないですよ。」

 

「それはそれでむかつく!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 連合軍が天の恵みの砂嵐に紛れ順調に進軍を続ける中、聖都軍は大量の情報を処理しきれないでいた。

 

 

 

 

「報告!矢の雨、更に飛来!!」

 

「遮蔽に身を隠しなさい!登ってくる兵を叩き落すことに集中せよ!」

 

 

 

「さ、左翼第三番隊から報告!!スフィンクスの群れに襲われ、現在敗走中!」

 

「中央の二番隊を向かわせろ!倒し切れずとも、時間を稼げ!」

 

 

 

「右翼四番隊、謎の穀物の波に襲われ機能不全との報告!」

 

「穀物!?それはサーヴァントだ、相手をするな!」

 

 

 

 

 次々にやってくるのは敵がどれだけ快進撃を続けているかという報告ばかり。最終的にキャメロットへの侵攻さえ防げばいいものの、やはり否応にも焦らされる。しかし最後の報告は、ガウェインの背筋を凍り付かせた。

 

 

 

 

 

 

「ほ、報告!報告!()()()()()!!」

 

「何ですって――!!」

 

 

 

 

 すぐにガヴェインは西の方に目を向ける。だが砂嵐のせいで何も見えず、歯噛みしながら指揮を執るしかない。もし本当に太陽王が出たのならば、獅子王に任せるほかない。我が王の手を煩わせることを悔しく思いながらも、奮戦を続けるのであった。

 

 

 

 

「フハハハハハ!!!どうだ勇者よ、これこそ我が宝具の一つ!闇夜の太陽船(メセケテット)である!!」

 

 

 オジマンディアスの宝具の一つである『闇夜の太陽船』はとてつもなく巨大な戦艦というべき風貌だ。だがその艦は海ではなく、宙を往く。重厚感のある見た目通り、威風堂々とゆっくりとした速度で航行しているそれを、地上で豆粒程度にしか見えない兵士たちは、ただただ呆然と見つめていた。中には、手に持った武器をカランと取り落とした者もいた。

 

 

「おお、たっかいな!こりゃすげえや!」

 

「フハハハハハハそうであろう!ではここから、聖都軍の兵士を焼き尽くしてくれよう!」

 

 

 オジマンディアスが手に持った杖の石突を床に打ち付け、コツンと音を鳴らす。するとその音に反応したのか、それともその衝撃がスイッチになっているのか。船の舳先の主砲から、文字通り太陽の熱を持った光線が発射される。

 

 大地に線を引くかの如く伸びた光線は、一呼吸遅れて通った跡に大爆発を起こす。その光景はまさしく阿鼻叫喚。一瞬にして辺りにさっきまで命だったものが転がる。いや、ともすれば、塵一つ残さず消し飛ばしているのかもしれない。

 

 

「強ええ……。流石にこれなら、あっという間にケリがついちまうぞ!」

 

「ふむ、まあ余が出ればこうもなるか。しかしこのまま蹂躙しても面白くない!勇者よ、お前の武勇を見せてみよ!」

 

「よっしゃ!流石にファラオの兄さんには劣るだろうが、ちょっとばかし本気を出すか!」

 

 

 アーラシュも弓を引き絞り、曲射の要領で弓を天に向ける。

 

 

「流星一条、ミニバージョンってなあ!」

 

 

 空に向かって放たれた矢は、義元のそれのように増えるようなことはない。だが、その威力は絶大だ。着弾した傍から爆発を起こし、地面に大きなクレーターを作っていく。

 

 

「フハハハ、流石だな勇者よ!これなら余が出る幕はあるまいよ!」

 

 

 すさまじく上機嫌で、甲板の中心に据え付けられた玉座に座るオジマンディアス。それを見てアーラシュは怪訝な顔をした。

 

 

「ん、大丈夫かファラオの兄ちゃん。船酔いでもしたのか?」

 

「否!だが余は、余の力を振るうべき時を識る賢王よ!貴様がいれば、余も安心してみていられるというもの。」

 

 

 余裕たっぷりといった風に玉座に座るオジマンディアスは、まるで子を見る母のような笑みを浮かべていた。その顔にアーラシュは何かを感じつつも、あえて何も言わないでいた。

 

 闇夜の太陽船(メセケテット)は未だ、悠々と飛行を続ける。だがそこに似合う、太陽王の高笑いは今はない。吹き荒れる砂嵐も今は無視をして――ただ静かに、音もなく。その艦はただ、勝利に向かう。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 砂嵐に紛れて連合軍は順調に壁にたどり着いた。ケンやベディウィエールを含むカルデア陣営も、キャメロットの正門の前に到着。後はこの門をぶち破るだけだが――。

 

 

「ケンさんやっちゃって!」

 

「はい!しかし、この砂嵐では撃剣興行が……!」

 

 

 ケンへの視界が遮られているため、撃剣興行が十分に発動できない!そう思った、その時だった。

 

 

「砂嵐が……ッ!」

 

「止んだ……?これは!」

 

 

 なんという奇跡か。ケンのいる正門の周辺のみ、全くの無風になった。おかげでケンに敵兵の視線が集まり、全ての弓矢が狙いをつける。だがそれは、ケンの力を増す結果にしかならない。

 

 

「――ッ!撃て!総員、あの剣士を狙えッ!!」

 

 

 ガヴェインの咆哮を待ってましたと言わんばかりに、一斉に弓矢が放たれる。―――だが、奇跡は二度起こるものだ。

 

 

「何――ッ!?」

 

「お、落ちた……。あの剣士の目の前で!矢が急に、失速して……!」

 

「い、いや違う!女だ!あの女の前で、落ちたんだ!!」

 

 

 正門を前に、刀を大上段に構えて集中するケン。その背中を守るようにして、顔程もある大きな盃から、静かに酒を呑む女が一人。その女の前に矢は意味をなさず、まるで平伏するように地に堕ちる。

 

 

「――さあ、これでもう、そなたの邪魔をするものはない。己の為すべき業を為すがいい。」

 

「――感謝します。」

 

 

 二人にしか聞こえないほど小さな声で、会話を終えた二人。男は声を張り上げ、周囲の目をさらに集める。

 

 

「さあ、お立合い!我が名は、榊原鍵吉!魔王の懐刀にして、越後の龍の翼である!」

 

「――ッ!まずい!!」

 

 

 矢が意味をなさないのを見て、ガヴェインが正門に駆けだそうとする。だが、その前に立ちふさがる、黒い影が一つ。

 

 

「クッ!押し通る!」

 

 

 太陽の加護が得られないとはいえ、ガヴェインは相当な強者。その振るわれた剛剣は、影を真っ二つにするはずだった。

 

 

「なっ!外套の、一振りで……!!」

 

「――汝の出陣は能わず。我が砂塵は、その道行きすらも塗りつぶした。」

 

 

 立香たちが霊廟にて助力の約束を取り付けた“初代”ハサン・サッバーハが、ガヴェインの前に立ちふさがったのだ。

 

 

「――ッ!ダメだ、ケンが!」

 

 

 ガヴェインの目は自分の剣戟を軽くいなしたハサンの後ろに見える、白刃の煌めきをとらえた。

 

 

「遠からん者は音に聞け!近くば寄って目にも見よ!これより刀が切り裂くは、忘れ去られた羅生門!かつて通した人間の、顔すら忘れた阿呆(あほう)門!」

 

 

「星をも切り裂く一刀に!曇る事なき一刀に!聖都の門が何するものぞ!!」

 

 

「我が行いに負い目なし!いざ!『天覧・同田貫兜割』!!!」

 

 

 刀が振り下ろされる瞬間。人々は確かに、砂嵐が一瞬晴れたのを見た。空には太陽が燦然と輝き、曇り一つない空を照らす。その空がほんの刹那の間、刀に映って煌めいた。

 

 

 

 

 ドオオオオオオン!!!!!

 

 

 

「あ、開いた!正門がこじ開けられたぞ!お前ら、突っ込め!」

 

「すげえ……すげえっ!!こりゃホントに、勝てるかもしれねえぞ!!」

 

 

 連合軍の兵士の中に、一気に押せ押せムードが満ちていく。逆に、聖都軍には怯えと恐怖が氾濫する。

 

 

「せ、聖都の、門が……!!」

 

「ぶち破られた!絶対に、絶対に破られないはずの門が!!」

 

 

「この機を逃すでないぞ!総員突撃!!」

 

「ウオオオオオオオオッ!!!」

 

 

 義元の号令に応え、兵士たちが雪崩れ込む。門が打ち破られたことにより、動揺していた兵士たちでは押されられるはずもなく、むしろ鬨の声に怯えて脱走する兵士も現れ始めた。

 

 

「退くなーッ!我らの正義を思い出せ!!」

 

「……民の屍の上にある正義が放つ光に、狂わされる虫はなし。思い知れ。汝らの威光は、とうに曇りきっている。」

 

「ッ!黙りなさい!我が王は……我らが王は、間違いなど!!」

 

 

 激昂して斬りかかるガヴェインだが、全く相手にされていない。立香たちとの約束は、ガヴェインを足止めしておくこと。その約束を果たすのみと言わんばかりに、ガヴェインを殺す気はないようだ。

 

 

「クッ……!しかし、我らが悲願はここに果たされた!あの光を見よ!!」

 

 

 ガヴェインが空に指をさす。そこには、いつの間にか再び吹き荒れていた砂嵐の中でも、はっきりと視認できる極光が現れた。

 

 

「あれこそが、我らの理想!我らの悲願!!誰にも侵されぬ、絶対神聖領域!!あの聖槍が打ち立てられた今、我らの敗北はない!!」

 

 

 ガヴェインの宣言と共に、周囲の兵たちもようやく戦意を取り戻す。オオーッと鬨の声をあげ、再び戦いを始める。その光景を見て、山の翁は何を思うのか。仮面に隠された表情からは、何も読み取ることが出来なかった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「にゃーーーっ!!!すごいすごい、ケンかっこよかったですよ!!」

 

「あ、ありがとうございます。それよりも早く、先に進みましょうお虎さん。」

 

 

 興奮のあまりケンに飛びつき、体全体をすりすりとこすり付ける景虎。それを義元は、信じられないものを見た目で見ていた。

 

 

「ええ……。余が死んだ後、何があったわけコイツ……。」

 

『あ、やっぱそう思う?うちのケンが困ったもんじゃよなあ。』

 

「そんなこと言ってる場合ではありません!早く行きましょう、皆さん!」

 

 

 ……ぐだぐだやりながら、一行は正門から聖都に突入する。聖都の中の粛清騎士は、通常よりさらに強化されてはいたものの、まるで相手にならない。

 

 

 

「にゃはははははは!!!戦の時間だあああああ!!!こーろせーーーーーー!!!」

 

「……あれと同類に思われたくはないが。まあ相手をしてくれよう!この海道一の弓取りが!」

 

 

 群雄割拠の日本で、特に強力だった二人の武将。長尾景虎と今川義元が相手なのだ。雑兵などものの数にも入らない。次々と骸と化し……いや、塵になって消えていく粛清騎士を他所に、連合軍は獅子王の居城を目指し走り続ける。だが、その足をつい止めてしまう出来事が起きた。

 

 

『ま、待ってくれ!魔力計が完全に振り切れている!そっちに何か、巨大なものが現れようとしている!!』

 

「!!」

 

 

 突如現れた光が、王城を取り囲む。その光は壁のようになり、連合軍の道行きを阻む。

 

 

「これは……!聖剣と同じ光!ロンゴミニアドの外装です!」

 

「ケンさん!なんとか斬れない!?」

 

「クソ、これには実体がある!形あるものならば、全体の50%を斬る必要があります!これは、大きすぎる……!」

 

『な、なら何か!魔力を制御したり、供給したりする装置はないか!?』

 

「これは獅子王の力によるものだ!外部から破壊することなんて、できるはずがない!」

 

 

 光の壁に阻まれ、連合軍も立ち往生する。その隙に獅子王軍が挟撃を始め、あっという間に不利になってしまう。

 

 

「おい小娘!こちらは余たちで何とかなるわ!その塔をなんとかせい!」

 

「誰か、誰かカルデアになんとか出来そうな人は……!」

 

「ま、待ってください先輩!空から、さらに何か……!!」

 

「あ、あれは……()()()()()!?」

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 ―――時は、ほんの数刻前にさかのぼる。

 

 

 

 

「ッ!あの光は……!例の聖槍とやらが、突き立てられたってことか!」

 

 

 アーラシュの千里眼が聖槍の光を捉えると、オジマンディアスは玉座から立ち上がった。

 

 

「来たか!フハハハ、よくやったぞ立香とやら!あの聖槍が姿を現したということは、獅子王めもそれなりに追い詰められたということ!!今こそ余の真価を見せるときであろう!」

 

「ファラオの兄さん!なんか、策があんのか!?」

 

「当然よ!だがそれに、貴様まで付き合う必要はない、勇者よ!代わりに前線の手伝いにでも出るがいい、あれを使ってな!!」

 

 

 オジマンディアスが杖の先で示した方に目を向けてみれば、甲板が開き、見慣れたアレが姿を見せる。

 

 

「こ、これは……!俺の発射台!」

 

「然り!『勇者の発射台、エジプトエディション』よ!この豪華絢爛の装飾と共に、旅立つがよい!!」

 

「……よっしゃ!」

 

 

 すぐにアーラシュが台に飛び乗り、狙いを聖都に定める。仮に誰かが気づいて狙撃を行おうとしても、現代のスナイパーライフルを使っても捉えきれないスピードだ。この時代の弓兵に撃ち落とせるはずもなく、仮に命中してもアーラシュのスキル『頑健』の防御を貫けないだろう。

 

 

「だが少し待て、勇者よ!」

 

「どうした、ファラオの兄さん!ここまでしてもらって悪いが、一刻も早くあいつらの加勢に行きたい!」

 

「フハハハ、それでこそよ!だが難しいことではない!ただあの、忌まわしい聖槍をただ眺めているがいい!余が叩き折ってくれよう!」

 

「なっ……!」

 

「だがその代わり、余にその勇気を!その技を!その名を、貸してもらいたい!!あの名ならば、何物にも勝るであろう!!」

 

 アーラシュの驚愕の表情に対し、オジマンディアスはあくまで冷静だ。その瞳を見て何かを察したのか、アーラシュはそれ以上何も言わなかった。

 

 

「……そうか。わかった!あれの名なら、いくらでも使ってくれ!ファラオの兄さん、あんたの事、忘れねえぜ!」

 

 

 別れを済ませ、アーラシュは自らを乗せた矢を放つ。心なしか、エジプトエディションの方が速度が速いようだ。あっという間に小さくなり、見えなくなってしまう。

 

 

「フハハハ、流石余と勇者の共同制作よ!見たかニトクリス、あのスピードを!」

 

『は、はい!……しかし、よかったのですか?最後まで、勇者と共に戦いたいのでは……』

 

 

 オジマンディアスは再び上機嫌になり、内部の機関室にいるニトクリスに語り掛けた。

 

 

「フン、くどい!余は英雄ではなく、神王よ!余を差し置いて神になりつつあるあの獅子王めが、ただ気に入らないだけのこと!」

 

「ニトクリス!これより我が大神殿から、この闇夜の太陽船(メセケテット)に移された全ての魔力を用いて!超遠距離大神罰を下す!!もはや防御など必要ない!!全ての魔力を余に集めよ!!」

 

『ハッ……!メセケテット、全ての動力を停止!高度、順調に低下!ファラオ、どうかお願いします!!』

 

 

 

 全ての魔力供給を停止され、メセケテットはゆっくりと墜落していく。だがその沈みゆく艦においてなお、太陽王は高笑いを続ける。

 

 

「フハハハハ!!よい、よいぞ!これこそが余の、一世一代の大出力!!これならば、かの流星にも届くであろう!」

 

 

「さあ!我が偉業!我が墓標!我が成したる、全ての結末を見るがいい!!この渾身の一撃を放ちし後に、我が完璧たる五体!!即座に砕け散るであろう!!」

 

 

 

 

 

 

 

「受けよ獅子王!!光輝の大複合神殿(ステラ)アアアアアア!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 オジマンディアスは、自らの持つすべての魔力を―――霊基の魔力すら宝具に使い、文字通り100パーセントの宝具を放った。現れたるは、地球上に存在する、どんなピラミッドよりも巨大な質量兵器。それは上空から、人の傲慢を打ち破るべく飛来する。それはまさしく太陽の如く。それはまさしく流星の如く。

 

 

 

 

 消えゆく意識の中、オジマンディアスは思った。我が光は、我が流星は、かの勇者に届いたであろうか?かの一射に比肩したであろうか?もし、そうだったのなら……

 

 

 

 

「フ、フハハハハ…………これこそ、我が、結末…………!誇りに満ちた、ものであった…………!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ああ。やっぱ、あんたはすげえよ。ファラオの兄さん。」

 

 

 

 

 超高速でかっ飛びながら、アーラシュはポツリと呟いた。最果ての塔を打ち砕いた、流星の如き一撃。それを見届けた勇者は、胸の奥に熱いものを感じずにはいられなかった。

 

 

 

 

「……必ず、勝つ。ああ、この戦争!!俺たちの勝ちで、終わらせてみせるとも!!」

 

 

 

 

 かつてその一射で、戦争を終結させた大英雄は胸に誓った。此度の戦は、勝利のために戦うのだと。どんどん近づいてくる地面。やがてすさまじい衝撃と音と共に、一本の矢が大地に突き刺さる。

 

 

 

 その矢の名は、アーラシュ・カマンガー。友との約定を胸に、この戦いを勝利に導く一矢である。

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

「何だと……!最果ての、塔が……!!」

 

「――もはや砂塵は不要、か。」

 

 

 山の翁の呟きと共に砂嵐が止み、空は再び快晴を取り戻した。それと同時に山の翁もガヴェインに興味を失ったようで、剣を下におろす。

 

 

「――ッ!驕ったな……!!中天の私であれば、遅れはとらない!!」

 

 

 それでも構わず斬りかかるガヴェインだったが、一瞬で受け流される。もっとも強い状態の、ガヴェインであるというのに。

 

 

「なッ!馬鹿な……!」

 

「無論、驕るであろうよ。目覚ましにもならぬ光であらば。」

 

 

 山の翁はガヴェインに背を向け、ゆっくりと逆方向に歩き始めた。ガヴェインの周りの兵士は、一騎打ちに勝ったガヴェインを尊敬の眼差しで見つめ、喝采をあげる。だが、当のガヴェインは一歩も動くことが出来ない。明らかに、自分の敗北であったからだ。

 

 

 敗者であるガヴェインに、出来ることはただ一つ。山の翁の背中が、砂塵の向こうに消えるまで、ただ見つめていることのみ。急に勝者の気が変わり、敗者の首を落とそうとしないよう、祈りながら。

 

 

「……総員、荷物をまとめ、故郷に帰るがいい。ここからは、サーヴァントの戦いになる。」

 

「ガヴェイン卿!?そんな、我々はまだ……!」

 

「いいんだ。今まで、よく尽くしてくれた。君たちが一人でも多く、故郷の土を踏めることを願っている。」

 

「ガヴェイン、卿……。」

 

「私はまだ、戦うさ!最期まで、王の剣であるために!円卓の騎士、ガヴェイン!参る!!」

 

「――ッ!どうか、ご武運を!!」

 

 

 聖都に向かって駆けていくガヴェインに、兵士の一人が声をかける。それが届いたのかどうかはわからないが、最後にこちらをちらりと振り返り、彼が笑ったような気がした。そこから先、ガヴェインがどうなったのか?故郷へ向かって歩く兵士たちに、それを知る術はなかったのだった。




「やあやあお疲れ様、お爺ちゃん!キャメロットはいいところだっただろう?」

「……冠位を捨てた妖精もどきが何用か。」

「もう、そんなに邪険にしなくてもいいじゃないか。私たちグラ友同士だろう?」

「……。」

「あははごめんごめん。でもちょっぴり、気になることがあってね。どうしてああもケンを助けてくれたのかなあって。ほら、私の場合は愛があるから……ん、ちょっと待ってくれよ?ということはまさか、お爺ちゃんも私の恋のライバルに……!」

「よもや汝が色恋を語るか。だが我に感情は不要。ただ晩鐘の指し示した者を殺すのみ。」

「うーんつれないなあ!まあでも、君が獅子王を殺してしまわなくてちょっぴり安心したよ。私も彼女の気持ちは痛いほど理解できるからね。美しいもの、気に入ったものは、常に手元に置いておきたいよね。私の場合アヴァロンになるそれが、彼女の場合聖槍になってしまうだけだから。」

「……共感するか。汝が。」

「えーっ!そこまで人の心がわからないわけじゃないやい!なにせ、ケンに教えてもらったからね!ああほんとによかった!私がアヴァロンに招く前に、彼女が聖槍に入れてしまわなくて!」

「……やはりこの女、人の心がわからぬ。」
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