“ケン”という男の話   作:春雨シオン

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まだ3日に一回だからセーフですよね?(震え声)本当は二日に一回でいきたいんですが、ネタの調子とかプライベートとかで投稿ペースが変わるので、定期的にチェックしてくれると嬉しいです。

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Part18 二人の麗人

「何で、バニーガールなの……?」

 

 

 獅子王アルトリア・ペンドラゴン。彼女の頭には王冠の代わりに兎の耳がついており、身にまとうのは鎧ではなく煽情的な衣装である。第六特異点の記憶も新しい立香にとって、その姿と獅子王とはどうしても結びつかなかったのだ。

 

 

「ふ、驚くのも無理はない、立香よ。私とてこの姿には驚いたが、そのうち慣れるだろう。それに―――」

 

 

 言いながら、アルトリアはケンの首に腕を回す。彼女も171cmと女性にしては背が高いものの、ケンの方が10cmほど高い。そのため、通常ならば二人の顔は高さが違う位置にあるのだが、回した腕で引き寄せる。

 

 

「――この服なら、お前も夢中になってくれるだろう?」

 

「……アルトリア、あまりくっつかれると困る。」

 

「ふふ、嫌か?」

 

「そうではないけど……」

 

 

 顔を真っ赤にした立香の後ろで、勢いよく召喚ルームの扉が開いた。

 

 

「うおお、御用改めである!!ここから浮気の香りが……!!」

 

 

 飛び込んできた沖田が目にしたのは、煽情的なバニー衣装を身にまとった女性がケンに抱き着いている姿だ。沖田は怒りより先に羞恥が来たのか、顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。

 

 

「な、ななななんですかその服は!!え、む、胸とかもそうですけど!おへそ!おへそ出すための穴いらないでしょ!」

 

「む、お前のことは覚えているぞ。我が聖槍を貫き破壊した剣士だな。あの時の技は素晴らしい煌めきだった。」

 

「は、はあ、ありがとうございます……。って!違う違う、そんなこと言ってる場合じゃないんですよ!何であなた、ケンさんにくっついてるんですか!!やっぱり金髪なんてダメです!尊王攘夷万歳!!」

 

「落ち着け沖田、そんな思想強くなかっただろ!」

 

 

 ひとまずアルトリアの手を振りほどき、沖田の肩を抱いて揺するケン。アルトリアは澱んだ目でそれを見ていたが、やがて何かを思いついたようにケンの背中に抱き着く。

 

 

「ア、アルトリア!?今はそう言う事をしている場合じゃ」

 

「いいではないか。1500年ぶりだぞ?」

 

「そうだけど、後でちゃんと構ってやるから」

 

「どういうことですかケンさん!やっぱり、私が未だ生娘なのが気に喰わないんですか!?」

 

「そんなのお前の魅力に関係ないだろ!俺はお前の心と生き様を美しいと思ったんだから!」

 

「顔は!顔とか体はどうなんですか!」

 

「すごくかわいいだろ!何言ってるんだ!」

 

「……んふっ。」

 

 

 何かちょっと満足げになった沖田。一層不機嫌になったアルトリアが、強引にケンを彼女の方に向かせる。

 

 

「ケン。私はどうだ。かわいいか。」

 

「そりゃ、綺麗な女性になったと思っていたが……。」

 

「なら何故、頑なに手を出さなかった。」

 

「そ、そんなのお前が王で、ギネヴィアという妻がいたからであって……」

 

「ならもう遠慮はいらないだろう。言っておくが、私からお前を襲うような無粋はしない。必ずお前から手を出させてやるから、覚悟しておけ。」

 

 

 これは挨拶代わりだ――と言い、アルトリアはケンの首筋に口づけをした。首には小さな痣が出来、いわゆるキスマークが作られた。

 

 

「お、お前……いつの間に、こんなこと覚えたんだ。」

 

「ふふ、座からの知識でな。あらかじめ言っておくが、他の誰にもつけさせるなよ。これはお前が私のものだという証だ。」

 

「……手は出さないんじゃなかったのか?」

 

「誘惑の一環だ。お前は意志が強いから、私に手を出す前に他の女に喰われても面白くない。」

 

 

 ケンの頬を撫でながら、アルトリアはうっとりと眺め続けている。沖田はかわいいと言われたことで満足したのか床に転がっているし、立香は話を聞くのと実際に見るのとではまるで違ったのか、頭が沸騰して動けない。二人の時間は永遠に続くかに思われた。

 

 

 

 

 

 だが、我々は知っているはずだ。人の心がわからず、やらなくていい時にやりがちで、面白いことを最優先にしようとするキングメーカーを。

 

 

 

 

 

「うわっ!な、何!?光が――!!」

 

『大変だ立香君!今そっちに、魔力が高まっている反応だ!つまるところ、サーヴァントが現れようとしている!』

 

 

 それまでケンの修羅場を楽しみながら見ていたダヴィンチちゃんが、慌てたように声をあげる。召喚サークルに目を向ければ、確かにサーヴァントが召喚される時の光があふれ出ている。

 

 

『ひょっとしたら、侵略者かもしれない!十分に警戒するんだ!』

 

「いや、これ絶対……。」

 

「……腹立たしいが、まず間違いなく奴だな。」

 

 

 絡み合う二人は解け、ケンは諦めたように召喚サークルを見つめていた。この後に現れるであろう、あのキングメーカーだかトラブルメーカーだかわからない女性を。だが、獅子王は違った。大きくて柔らかな双丘から、ケンが見たこともないようなカードを取り出したのだ。『なんでそんなものを?』とか、『ずっとそこに入ってたの?』といったケンの疑問を無視しながら、アルトリアはまるでダーツでも投げるかのような姿勢になった。

 

 

 

 ケンがそれをぼんやりと眺めていると、やがて光は収束し、一つの人影が姿を現した。

 

 

―――その髪には、ほんの少しの曇りも穢れも存在しない。まるで晴れた日の雲のように透き通り、動くたびに可愛らしく揺れる。その女性はまるで、花のような人物だ。見ているだけで心地よく、香る色香は人を惑わす。常に余裕そうな笑みを浮かべ、誰もを魅了してやまない夢魔。

 

 

「やあ、久しぶり!花の魔術師、マーリンお姉さんのとうじょおおお!?」

 

「ちっ。外したか。私の強制帰還スローイングを躱すとはな。アヴァロンでぬくぬくと人の男をストーキングしていた割には、機敏に動けるではないかマーリン。」

 

「カルデアまで連れてきた恩人に対してなんてことするんだい君は!?君の世界の私は、一体どんな風に君を育てたっていうんだ!」

 

 

 アルトリアはマーリンの姿を認めた瞬間、カードを投擲したのだ。それは狙いを過たず、マーリンの顔を真っ二つにする軌道を描いて回転しながら飛んでいったのだが、間一髪のところでマーリンが顔を横に反らしたので、カードが彼女の頭を切断することはなかった。代わりにマーリンの頬には一筋の赤い線が引かれたが、まあその程度で済んだことを喜ぶべきだろう。

 

 

「いてて、それにしてもひどいじゃないか。傷になってないといいんだけど。」

 

 

 マーリンはどこからともなく手鏡を取り出し、傷のついたところを気に丹念に眺める。頬にできた切り傷はそれほど大きなものではないが、それ以外が理想的すぎるマーリンの肢体において、その傷はまるで美術品についた汚れのようで違和感があった。

 

 

「な、なんてことだ……。カルデアに来て早々災難だなあ。」

 

「だ、大丈夫?ダヴィンチちゃん印の軟膏使う?」

 

 

 心配そうに声をかける立香。彼女も同じ女子として、ルックスのことには敏感なのだ。

 

 

「ああ、ありがとうマスター!君は優しいんだね。」

 

「え、えへへ……。」

 

「……マスター、あまりデレデレするな。こいつに隙を見せるとろくなことがない。」

 

 

 立香の手を取って感謝を告げるマーリンだったが、アルトリアがすぐにその間に割り込む。冷たい目でにらみつけてくる彼女には、流石のマーリンも怯えを隠せない。

 

 

「ひ、ひぃ怖いよアルトリア!助けてケン!マイ・フェイト!!」

 

「……アルトリア、いくら何でもやりすぎだ。マーリンだってまだ何もしていないのだから、暴力はいけない。」

 

「そ、そうだそうだ!私だって、久々に会ったんだぞぅ!」

 

 

 ケンの背中にしがみつきながら、震え声でマーリンは抗議の声をあげた。だが、それを見るアルトリアの目は冷ややかだ。

 

 

「……よく言うな。キャメロットどころか、現界した時点でケンに着いて来ていたストーカーが。」

 

「……何?」

 

「あ~……そ、その話は、しなくてもいいんじゃあないかなアルトリア……。」

 

 

 途端に慌てだすマーリンだったが、ケンに手首を捕まれ動けない。その間に、アルトリアは話し始めた。

 

 

「立香。今までほんの少しでも、疑問に思ったことはないか?本人の遺髪という強力な聖遺物を以て召喚しようとした私に出来なかったケンの召喚が、カルデアに出来たことを。いくら沖田総司や織田信長といった縁のあるサーヴァントがいるといってもだ。」

 

「そういえば、確かに……。」

 

 

 カルデアの召喚というのは、基本的に拒否権が存在している。そのため戦いを忌避するサーヴァントや、マスターである立香に不信感のあるサーヴァントは基本的に召喚されない。その上、通常の召喚に必要な触媒もないため、多くの場合立香が繋いだ縁が頼りである。

 

 だが、ケンにはそれがない。触媒もなく、縁もない。だというのに、なぜ召喚されたのか。

 

「簡単なことだ。すべて、そこのマーリンが操作していた。」

 

 

 立香とケンはバッと振り向き、全員の視線がマーリンに集まる。本人は少しばかり気まずそうにえへへと笑いながらピースしている。冷たい目でそれを見たケンは、ひとまずアルトリアに視線を戻す。

 

 

「私は魔術王と同じ知見……つまり、千里眼を得た。ロンゴミニアドと共にあり、神霊に近い存在になった故にな。ベディヴィエール卿によって聖都計画から解き放たれた私は、その千里眼を使ってケンが召喚されなかった理由を探した。それまでは、考えもしなかったがな。心が薄かった私は、ケンがいないことを残念に思いながらも、恋しく思いはしなかった。」

 

「その結果、そこの女マーリンにいきついた。」

 

「ケンは転生を繰り返した果て、ある時ついに完全な死に至った。通常なら、英霊の座に登録されてサーヴァントとして召喚される条件が整う。」

 

「だが、ケンの場合はそうはいかなかった。マーリンがケンの魂をアヴァロンに持って行ってしまったからだ。」

 

 

 ケンは綺麗な二度見を行い、マーリンの瞳を見つめる。

 

 

「や、やだなあマイ・フェイト。そんなに情熱的に見つめられたら照れてしまうよ。」

 

「マーリン……俺は、人として死にたいと言ったはずだよな。」

 

「う、うわぁん!だって、だって死んでほしくなかったんだもん!ほんとに好きになっちゃったんだもん!」

 

「はぁ……。」

 

 

 大きなため息をついたケンは、アルトリアに続きを促した。

 

 

「その結果、ケンは死んでいる状態と生きている状態が混じり合って存在していることになった。肉体は何度も崩壊しているが、その度に転生して魂は生きていたわけだからな。そして最後の死を迎え、魂も消え果るはずのところを、この妖精もどきがアヴァロンに保管してしまった。故に、ケンが私に召喚されることはなかった。」

 

「その後、カルデアが召喚を試みた際に、どんな心変わりかは知らないが、マーリンは魂を手放し、カルデアと縁が結ばれるように細工した。その方法まではわからなかったが、結果としてケンはカルデアに召喚されたのだ。」

 

 

 周りはしんと静まり返っており、誰も声を発しなかった。

 

 

『……そ、そんなことが可能なのか?座のシステムを根本から揺るがしかねない偉業だと思うんだけど。』

 

「まあ、そこはなんてったって冠位を持つグランドキャスターなお姉さんだからね!あまり気に止まないでくれダヴィンチ女史!」

 

「……好きな男についてくるために冠位を捨て、クラスまでいじった女がよく言うな。」

 

「わー!恥ずかしいから言わないでおくれよ!!」

 

 

 出会い頭に殺しにかかったとは思えないほど、息の合ったやりとりをする二人。だが、マーリンの爆弾はこれでは終わらない。

 

 

「それにだ。この女、今まさに召喚されましたよみたいな顔をしているが、実際には最初からカルデアにいたからな。」

 

『な、何だって!?全然魔力反応は検知できなかったのに!?』

 

「こいつには幻術があるからな。ケンが召喚された際に、単独顕現というスキルでカルデアにくっついてきている。その後、幻術で姿や魔力の痕跡を消したのだろう。マーリンはどの未来においても死ぬことがないため、通常サーヴァントとしては召喚できない。そのため、誰の手を借りることもなく現世に現れることが出来るこのスキルが必要だったのだろうな。ケンのストーキングをするために。」

 

「や、やだなあアルトリア。これはあくまでナビの一環なんだよ?私も人理焼却という一大事に何かしないとなあと思って、ケンをサーヴァントとして送り込んだ。それだけだとケンが困るかもしれないなあと思って、私もこっそりついてきただけさ。」

 

「それなら、堂々とついて来ればよかったじゃないか。なぜ姿を隠すような真似をしていたんだ?」

 

「それは……。」

 

 

 そこでなぜかマーリンは口を閉じ、小刻みに震え出す。よく見れば、目には涙まで浮かんでいるではないか。

 

 

「ど、どうしたのマーリン!?大丈夫?」

 

「……だって、ケンが私のことを嫌うと思ったから……。私はケンの魂を独りよがりな理由で昇華させることを止めてしまったし、人類の物語が終わってしまうことを恐れて手放してしまった。こんな身勝手な女に、愛想をつかさないわけがないと、そう思ってしまったから……。」

 

 

 立香はそれを見て思った。マーリンも、ただの女の子なんだと。好きな人に嫌われたくないという、誰もが持つ欲求を持っているだけなんだと。そして、同時に確信さえしていた。あの人は、決して裏切らないと。その確信の通り、ケンがマーリンに優しく声をかけた。

 

 

「――馬鹿だな、マーリン。俺がそんなに小さい男だと思うか?」

 

「……ケン?」

 

「むしろ、感謝さえしている。お前のおかげで俺は沖田や信長様と再会できたし、こうしてアルトリアを救う事も出来た。お前がこうして、カルデアに連れてきてくれたおかげだ。ありがとう、マーリン。」

 

「あっ……えへへ、なんだか照れてしまうね。」

 

 

 そっとケンは指で彼女の涙を拭ってやると、マーリンはあどけない笑顔を見せてくれた。隣で見ていた立香がドキリとするほど可愛らしい微笑みだったが、ケンは慣れているのかまったくの平常心だ。アルトリアに至っては苦虫をかみつぶしたような顔すらしている。

 

 

「あ、そういえばさ。最初からカルデアにいたってことは、ケンさんの話も聞いてたんでしょ?今までの傾向からして、ノッブとか沖田さんと喧嘩しなかったのえらいよね!」

 

「ふふ、そうだろうマスター?私は余裕のある大人のお姉さんだからね!今更女性関係のひとつやふたつで動じはしないのさ!」

 

 

 すっかり普段の調子を取り戻したマーリンを、ケンは一安心といった風に見守っていた。

 

 

「それこそ、隣で聞いていてドキドキする話ばかりだったからね!聞いているだけでも下腹部のあたりがキュンキュンしてしまってあいたあっ!」

 

「ばっ、馬鹿たれ!!自制しろマーリン!!」

 

 

 いや、普段の調子を取り戻しすぎてしまった。ケンは手刀を脳天に食らわせた後、流れるように頭を下げさせた。

 

 

「マスター、申し訳ありません。実はこいつ、結構下ネタが多くて……。」

 

「まあ、夢魔と人間のハーフだからな。夢魔というのは淫魔……つまりサキュバスと同一だ。マスター、お前も奴のどぎつい冗句には気を付けることだ。」

 

「あと色仕掛けにもご注意を。好きなものはかわいい男の子とかわいい女の子と、公表してはばかりませんので。」

 

「いたた、今は君一筋だからそんな心配しなくてもいいのに……。あっ、ひょっとしてやきもちかい?なーんだ、なんやかんや言って、君もボクのこと大好きなんじゃないか!ボクも大好きだよマイ・フェイト♡」

 

「何を言っている。ケンが大好きなのは私だ。ケン、私も大好きだぞ。愛していると言ってもいい。」

 

 

 あまりにストレートに好意を伝えてくる美女二人に、ケンはたじたじになってしまう。助けを求めるような視線を立香に送るが、気づかないようだ。いや、正確には気づいているのであろうが、気づいていないふりを決め込んでいた。ケンの自業自得と言われれば、それはその通りである。

 

 その後、熱烈な抱擁と口づけを執拗に求めるアルトリアとマーリンによって大量のキスマークをつけられたところでマスターストップが入り、ケンはようやく解放された。そしてその後、満足げなアルトリアによってバニーになった理由が語られる。

 

 

「お前たちが退去したのち、私のいる世界は急速に閉じ始め……有り体に言えば、終わり始めた。その間に私は千里眼でさっき言った事を掴んでいたわけだが……そこに現れたのがこの女マーリンだ。」

 

「……マーリンの話は、幾多の苦難がありはするものの、最終的にはハッピーエンドに行きつく。こいつは人類がハッピーエンドを迎えるため、英霊となって力を貸してあげてほしいと言ってきた。もっとも、こいつの本当の目的はケンの女関係をさらにかき混ぜて面白くしたいというものだったがな。」

 

「だ、だって登場人物が多い方が、ドロドロのラブコメは盛り上がるだろう?」

 

「……ともかく、私はその誘いにのった。ケンに再び会えるのなら、どんな苦難も厭わない覚悟だった。」

 

「それで……バニーに……?」

 

「ああ。今の私は、単なるバニースーツを身にまとった獅子王ではない。円卓の守護者、長としての姿だ。」

 

 

 胸を張る獅子王アルトリアだが、ならなおさらバニーはおかしいだろうというツッコミが入る。それに対しても、しっかりとした理由があるようだ。

 

 

「私がカルデアに召喚されない理由は主に二つだ。一つは信仰が足りず、サーヴァントに足る霊基がないこと。もう一つは神の身になってしまったことで、座に登録されるには強すぎること。だが、この二つのうち一つは既に解決していた。」

 

「どっちの方なの?」

 

「信仰の方だ。私のやり方は間違ってはいたが、特異点にいた者たちにとっては確かな救いだった。そのため、サーヴァントになるにあたって不足はなかったが、神霊に近い私は召喚するにはスケールが大きすぎた。それを解決したのがマーリンだ。」

 

「そのとーり!私のおかげでここに来られたのに、アルトリアったらひどいよね!」

 

「話を戻すぞ。大きすぎる私の格を縮小するため、マーリンは幻霊を利用した。サーヴァントになるには小さすぎた者たちだな。」

 

『……なるほど、そういうことか!だから円卓の守護者なんだ!』

 

 

 合点がいったと手を打つダヴィンチだが、立香たちはポカンとしている。『最後まで聞けばわかる』といって、アルトリアは話を続けた。

 

 

「お前たちのよく知る円卓の騎士は13人だろう。だが、円卓の騎士は実は入れ替わりの激しい職場だ。現に、サーヴァントになっていない円卓の騎士はごまんといる。だが、弱いからといってその志は何も変わらない。その証拠に、彼らは私の召喚に応じたのだから。」

 

「えーっと、つまり……円卓の騎士を召喚しようとしたら、サーヴァントになれなかった円卓の騎士も幻霊としてついてきたってこと?」

 

「そうだ。そしてマーリンは、彼らに許可を取ったうえで私に力を譲渡させた。神霊としての格を下げ、英霊の範囲まで押し込むためにな。」

 

『結果、獅子王はすべての円卓の騎士を統べるものとしての属性を得て……ルーラークラスになったというわけか。』

 

「そういうこと!これで、アルトリアをサーヴァントに出来たというわけさ!」

 

 

 アルトリアがサーヴァントになることが出来た理由はわかった。だが、肝心なところは何も解決していない。

 

 

「あれ、でもちょっと待って!バニーは何でさ。」

 

「……それがね、アルトリアをルーラークラスにすると、何故か自動的にバニーになってしまったんだ。」

 

「ますます意味わかんないよ!?」

 

「まあ、これ以上は君たちが知る必要はない話だとも!ほら、バニーでえっちだからいいじゃないか!本人も気に入ってるみたいだし!」

 

「えー……何か気になるんだけど。」

 

「まあそれなら、後でこっそり教えてあげるよ。それよりもホラ!今日はパーティーの準備をしてるんだろう?私も手伝うから、とびっきり素晴らしいものにしようじゃないか!」

 

「そうだな。私も、円卓の騎士たちに再び挨拶をせねばなるまい。無論、禊もな。」

 

 

 なんだか釈然としないままだったが、獅子王とふたたび会えたことに比べれば些事である。そう立香は思うことにして、まだ床に伏せって“かわいい!”という言葉を反芻している沖田の看病に向かうのだった。

 

 




「気になるなあ……なんでバニーなんだろう……。」

「マスター、そんなに気になるのですか。ひょっとして、バニーはお嫌いでしたか?」

「ああケンさん。いや別に嫌いってわけじゃないけど……あそうだ、それならケンさんの方はどうなの?バニー好き?」

「……あいつの手前、嫌いとは言えないでしょう。」

「なーんか煮え切らないな~……。あ、そうだ!それじゃあさ、私がバニー着たら嬉しい?」

「マ、マスター!?嫁入り前の娘が、そんな恰好をするものでは……。」

「え~何、ケンさん想像しちゃった?私嬉しいかどうか聞いただけなのに?意外とえっちなんだね。」

「こ、これは……一本取られました。主君のバニーを想像したこと、責任をとって腹を切ります。ご容赦を。」

「わーごめんごめん!!冗談だからそんな間にうけないで!!」
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