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説明しよう!『絶対に風紀を乱してはいけないラッコ鍋』とは!信長が考案した、血で血を洗う女の戦いである!
「まあ、発端は沖田に借りた漫画だったんじゃけどネ?蝦夷を舞台にしたもんなんじゃが、中々興味深いものがあってのう。それがこの……」
「……ラッコ鍋、というわけですか。」
ご存じない方に説明しておくと、古くより北海道で暮らしていた先住民族のアイヌの言い伝えには、『ラッコの肉を食べるときは必ず男女同数で食べなくてはならない』というものがある。なんでも、ラッコの肉には強力な催淫作用があり、一人だと気絶してしまうほどだというのだ。作中ではそれを知らなかった野郎どもが鍋を作って食べたところ、最終的に相撲をとることで発散したというシーンがあるのだが……。
「―――無論、ワシらは相撲如きでは発散できん。当然、ケンに襲い掛かることになるじゃろうな。」
「ちょっと待ちなさい、信長。貴方の言う修羅場のない方法というのは、ただ単に集団で襲い掛かって手籠めにすることなのですか?」
「否!普段の日常生活ならばともかく、夫婦の時間まで邪魔されたら流石のワシも魔王化不可避!!お主らとて、一対一を望んでおろうが?」
そう言われて深く頷く面々。ああ、千代女だけはこくりと小さく頷いただけだ。
「じゃが、ケンの奴は無駄に意思が強いからのう。これまでも何度もモーションかけてきたが、全然なびかんもん。」
「確かに、沖田さんの同衾もガン無視でしたもんね。」
「いやお主は勝手に気絶したんじゃろ。」
沖田の横槍に律義に突っ込みながら、信長は話を続ける。
「そこでこのラッコ鍋というわけよ。ケンの理性を融かし、誘惑に負けさせる。」
「やってることただの性犯罪者ですけど、それはいいんですかね……。」
「くくく、そういわれると思っておったからのう!ワシってば頭脳明晰系美少女戦国武将なわけじゃし、そこらへんは対策済みじゃ!」
そこで源頼光を巻き込むことにより、この凌辱系漫画の竿役みたいな下衆な行為を、ゲームの範疇に落とし込むわけである。
「概要はこうじゃ。まず、ケンとわしらは部屋に入り、ラッコ鍋を調理して食す。ラッコ肉のせいで発情したケンは、ワシらの誘惑にめちゃんこ弱くなる。その結果、誰かの誘惑にのったならば、そいつに夜の権利を明け渡すというわけよ。」
「それだと、お虎さんあたりが力ずくでいっちゃいそうじゃないですか?」
「お主もうちょっとオブラートに包むとか出来んわけ?まあそれ防止の頼光よ。いくら景虎であっても、弱体化した状態で勝てる相手ではあるまい。それだけでなく、R18になる寸前のところで止めるストッパーの役割もある。この小説、一応全年齢じゃし。」
「なるほど……つまり、R18にならないギリギリのラインの誘惑を見極める必要があるわけですね。」
「うむ!ぶっちゃけケンにラッコ鍋を盛りたいけど、こうでもしないといざという時責任逃れ出来んからこういうリスクを背負ったとこある!まあ、ワシ以外を選ぶとか普通にあり得んけど!」
「ほーう……。言いますねノッブ。ですが、今度こそ私がいただきますからね。ケダモノになったケンさんに襲われ、美味しく頂かれてしまう沖田さん……。あっ、ダメです昇天しそう!」
「……まあこやつはいいとして。お主らはどうするんじゃ。ワシとしてはライバルが減って万々歳なんじゃが?」
「当然、参加しますよ。ケンは渡しません。」
「……お、お主らの手に渡っては一大事でござるからな。仕方なく、そう仕方なくでござる。」
「主殿を独占できる機会となれば、逃す手はありませぬ。」
あっという間に決まったラッコ鍋パーティー。その情報を、改めてまとめておこう。
・ラッコ鍋で判断力が鈍った状態で、女性陣がケンを誘惑する。その誘惑にのってしまった場合、ケンと選ばれた女性は一夜を共に過ごす権利を得る。
・ただし、過剰に性的なアピールを行い、R18に足を突っ込んでしまうと、源頼光からのお仕置き。
現在公開されている情報は以上である。ここから彼女たちが、どんな戦法を用いるのか?それらは、面白がって参加した彼女らに聞いてみよう。
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「さあ始まりました『絶対に風紀を乱してはいけないラッコ鍋』!実況は私レオナルドダヴィンチ!解説は、ありとあらゆる恋を網羅した女、コノートの女王のメイヴちゃんにお願いしております!」
「よろしく。ぶっちゃけ私が参加したいくらいだけれど、まあ他の女のアプローチを見るのも面白そうよね。」
「それじゃあ選手の皆がゲートインするようだから、確認していこうか!」
『ほれこっちじゃケン、はよう入れ。』
「まずはこの催しの発案者にして、戦国の覇者!織田信長の登場だ!」
「彼女はケンと幼馴染と聞いているわ。長い時間を共に過ごしたからこそわかるツボを押さえたアピールに期待ね。」
『ケンさんは沖田さんの隣がいいですよね?え、そっち?そっちは真向いだからいいですね!』
「次にやってきたのは心と一緒に恋を知った人斬りモンスター!沖田総司だ!!」
「彼女はケンが初めて落とした女だそうね。男という生き物は、どんなに小さなトロフィーでも後生大事に抱えているもの。最初の女というアドバンテージ、活かしてほしいわね。」
『ケンは私の隣ですよね?ね?』
「か、彼女は!戦国時代最強の呼び声高い、長尾景虎がやってきた!!」
「普段の強者というイメージと、そこから来る小動物的なかわいさ。このギャップをどう活かすかよね。」
『拙者はどこでもいいでござる。それよりも、早く座れ。』
「まさか彼女が来てくれるとは!まさかまさかの未亡人属性!望月千代女の登場だ!!」
「日本には、一盗二婢三妾四妓五妻という言葉があるわ。これは男が女を抱く際に、興奮する順番に並べたもの。その中でも一位に据えられているのは盗……つまり、他人の女を寝取るのが一番興奮するというわけね。恥や外聞を、どこまで捨てられるのか……。ああん、私この娘が一番昂るかも!なんかちょっと、服にもシンパシー感じるし!」
「本人が聞いたらなんか怒りそうだね!」
『ワタシは主殿の膝に座りますので……冗談ですよ。』
「戦国の世にはこいつがいたぁッッ!生きる忍法帖ッッ!!加藤段蔵だぁッッ!!」
「彼女は要はロボットなんでしょ?基本的に人間の恋の相手は同じ人間、ロボットという持ち味をどう活かすのか、見物よね。」
「以上五名が、ケンとの夜の時間を争います!改めて実況はレオナルドダヴィンチ!解説はメイヴちゃん!そして最後に、このお方を紹介しておこう!」
「超カルデア級の風紀委員、源頼光!!今日は娘さんと一緒のご登場だ!」
「娘じゃないし子でもないわ!」
「よろしくお願いいたします。それで、私は何をすればよいのでしょうか?」
「アナタにはこれから行われることが、R18かどうかを判定してもらうわ。仮にアカンと思ったら、あの部屋に突入してね。」
「はぁ……。まあこれも、我が子立香のためですものね。母は、頑張りますからね!」
「いや絶対小娘関係ないだろこれ……。」
「それでは、早速モニタリングスタートだ!!」
――――――――――――――
「さあ、始まったラッコ鍋パーティーだけど……どうやらあまり動きは見られないようだね?」
「そうね。でも、孔子の言葉にこういうのがあるわ。戦いというものは、始まる前に既に勝負は決まっている、と……。つまり、ラッコ肉の催淫作用が働くまでの時間に、いかに準備を整えられるのか。これが大事になってくるわ。」
「なるほどー。おっと、ここで鍋の一つを空にしたようです!すぐさま次のラッコ鍋がグラウンドにスローイン!」
「なんでちょっとジョンカ○ラみたいにしゃべってんのこいつ。」
「ッ!見なさい!ケンの目が少しとろんとしてきたわ!これはどうやら、仕掛け時が来たようね!」
「さあ、始めに仕掛けていくのは、誰になるのかー!?」
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ふ、ふふふ。降って湧いたこのチャンス、活かさないわけにはいきません!この中で未だ、沖田さんだけ未経験!それ故に警戒も薄いのでしょうが、この戦いにかける思いは誰にも負けませんからね!今こそ、誘惑のチャンス!
『おおっとー!?初めに仕掛けるのは、予想に反して沖田総司だ!あのうぶなMという新境地を切り開いたパイオニアが、この戦いでも一番槍!流石の斬りこみ隊長といったところか!』
『念のため言っておくと、この放送は彼女たちには聞こえていないわ。』
「ん……?」
あっ、ケ、ケンさんが私の方を見て、目をゴシゴシ擦ってます!こ、こ、これはなにか、なにかしなくては!
『お、おお?タイトスカートの裾を摘まんで?」
ち、ちらっ?
『……こ、これは?摘んでから、離したように見えるけど……?』
『……いいえダヴィンチ、よく見なさい。』
『ん~……お、おお!よく見ると3ミリほど裾が上がっている!いやでもこれ、ダヴィンチちゃんレベルの芸術家かメイヴちゃんレベルのビッ……恋愛巧者しか気づけないんじゃないかい?』
『甘い!とろけそうなほど甘いわダヴィンチ!気づくか気づかないかではないの。それより遥かに大事な意味を持つのは、沖田の顔よ。よく見てみなさい。』
―――は、恥ずかしい!!なんですかこれなんなんですか生前は全く太ももなんて見られても気にしなかったのになんならケンさんの目の前で着替えたこともあったのにていうかケンさんの目の前で生木替えとか何考えてるんですか私はああもう今すぐレイシフトして過去の沖田さんをぶんなぐって特異点修復したいです!!!
『か、顔が真っ赤になっている!これはひょっとして、彼女からしたら誘惑のつもりで……?』
『その通りよ。あまり上げすぎて風紀チェックにひっかかることを恐れたが故のチキンかと思ったけど……。これを見る限り、あれが全力ね。全力の誘惑があれだったのよ。』
『そ、そんな!それじゃ、この戦いでは圧倒的不利を迫られるんじゃ……。』
『それはないわね。その証拠に、見てごらんなさい。』
「……どうしました、ケンさん?」
「い、いやっ!!何でもないんだ……。」
……あ、あれ?なんか、想像以上に効いてませんか?ケンさん頬が紅潮して、沖田さんから目を反らして……え、い、意識!?意識されてますかひょっとして今!?
『お、おーっと!?予想に反して効果は抜群だ!何が要因なんですかメイヴちゃんさん!』
『あの娘は、誘惑において最も大事なものをわかっている……。それはズバリ“恥じらい”よ。』
『恥じらい……それはいったい?』
『女が男にアピールするところはたくさんあるわね。でも、それをたださらけ出すだけでは風紀チェックにもひっかかるし、何より芸がない。ガツガツいく女が癖ならいいけど、そうでなかった場合にはドン引きされて終わりよ。』
『でも、恥じらいがそれを解決する。もろ出しよりも大事なところだけ隠されていた方が興奮するのと同じ原理よね。』
『あくまで個人の感想だよ!』
『それに、これなら風紀チェックにもひっかからないわ。その証拠に、頼光は鯉口をカチャカチャならしているだけよ。』
『いや結構青筋浮いてない?今にも斬りかかりそうじゃない?』
メイヴちゃんの解説の是非はともかく、ケンには効果抜群のようだ。お互いに顔を赤くして目を反らす様子は、まるで付き合いたてのカップルのようで初々しい。
『ああ^~いいねぇ^~~~。初心なカップルからしか摂取できない栄養があるよね!誰か赤ワイン持ってきて!』
『こいつ本当は中身おっさんなのではないか……?』
『ええい、じれったいわね!生娘ぶるのは別にいいけど、それで何かが解決するとでも思ってるの!?さっさと○○○しなさいよ!』
『こいつマジか!?』
解説の仕事を放棄してしまったメイヴちゃんに驚愕しつつも、なんとか義元が後を受ける。
『え、えー……お、おお!次は信長の奴が仕掛けるようだぞ!』
義元の言葉通り、信長が胸を強調するというわかりやすい色仕掛けに出たが、これは実況席にはあまりウケなかったようだ。
『うーん豊胸か~。私も出来なくはないけど、今が完璧なプロポーションなわけだしねえ。』
『今更体をいじくるなんて、自分の見た目にそんなに自信がないの?20人も産んでおいてそれはないわね。』
『え、でもあいつめっちゃ釣られておるぞ。』
『なんですって!?』
その言葉通り、ケンの目はすっかり信長に釘付けだ。心なしか、息も荒くなっているような気がする。
『何よそれ!結局男なんて、胸が大きければ何でもいいわけ!?』
『人が酒や砂糖に抗えないのと同じように、男は胸には抗えないのかもしれないね。』
『聞こえてないのをいいことに言いたい放題だな。』
『頼光チェックも大丈夫そう!これはもう、信長公で決まりなのかー!?』
否!魔王の歩む覇道には、常にこいつが立ちふさがる!!
「う、うぅ……あ、頭がクラクラします……。」
「ッ!景虎様!」
『いったーー!!越後の龍、堂々推参!!』
『いやちょっと待て、あの流れだと余のパターンだったろ!信長のライバルキャラっつったらさ!!』
『そんなことより見なさい、すごい攻勢よ!!恐ろしいのは、これが景虎が狙ったものではない可能性まであるという事!単に立ち眩みを起こして、単に胸元を緩めてほしいだけの可能性もあるッ!』
『そ、そんなことが可能なのかい!?』
『普通は不可能よ……。あまりにも、幸運な偶然が重なりすぎている。でもッッ!景虎なら、あるいは……ッッッ!!』
『まあ確かにあいつなら、垂直な壁くらいよじ登りそうよな。』
『ロシアの死刑囚はともかく、景虎君には“運は天にあり”という、戦闘においてあらゆる有利な判定を受けるスキルがある!これはまさか、恋愛にも有効だとでも言うのか!』
『もちろんそうよね!恋はいつでも戦争なのよ!!』
そして、前回につながるわけである。
――――――――――――
『では改めて、現在の状況をおさらいしておこうか!ターゲットのケンは、現在ラッコ鍋をかき混ぜてその匂いをたっぷり吸いこんでいるよ!』
『その匂いが体の火照りの原因とも知らずに、呑気なものよね!』
『悪役かこいつら。いやまあ、まぎれもなく悪趣味ではあるが……。』
「……よし。やっぱり、しっかり煮えていますよ。段蔵さん、お虎さんの方はどうですか?」
「もう大丈夫ですよ。心配おかけしました。」
『ここに来て、全員横一線といったところか。この戦いは完全に振り出しに戻ったとみていいのかな?』
『ん~、まだ何もしかけていない忍2名が気になるところよね。まったく自然に仕掛けられるもの。』
(……そう、怖いのはあの二人じゃ。)
信長はちらりと横目に千代女と段蔵を見た。二人は特に大した動きはしていないはずだったのだが、そのうちの一人に視線が吸い込まれる。
(……にしても、あの忍の装束やっぱ頭おかしいじゃろ。ほんと、今すぐにでもしゃぶりつきたいほどに……!!?)
『おやあ?何故だか皆の視線が、千代女君に集中しているような……?』
『こ、これはまさか!』
(((ま、まさか……!!)))
(沖田さんたち、ラッコ鍋効きすぎて女性でもイケるようになってるーーーー!?)
『そういうことなのね!ラッコ鍋によって高まりすぎた性欲は、とうとう同性に牙をむくのね!!』
『誰が予想したかこの百合展開!こうなっては、ケン君の身が性的な意味だけでなく、物理的にも危なくなってきた!』
『百合に挟まる男は死罪と、甲州法度次第にも書いてあるからな。』
(まずいです……!沖田さんは、初めては必ずケンさんと決めているというのに!)
(このまま、このままにしておくわけにはいきません!)
((……。))
『露骨な焦りを見せる沖田君と景虎君!対して忍の二名はハニートラップはお手の物か、動揺は見て取れません!』
『そう、そこの二人はいい。でも、信長に動揺が見えないのが不穏ね。ひょっとして彼女、別にケンじゃなくてもいいのかしら?』
(いや……、信長に限って、ケン以外で満足するなんてことはありえない!)
(では、なぜ……!?)
「フ、フフフ……。ワシはぶっちゃけ、この状況を想定しておったという話よ。最初から、おかしいとは思わなかったのか?ワシがラッコ肉を手に入れたのなら、最初からケンに食わせておればよいと。」
「!!」
「ではなぜ、このような催しを開いたのか?答えは一つ、ワシがケンとしっぽりしておる最中に、百合プレイに興じるお主らを眺めて愉悦するためよ!」
「なっ……!」
『何だってえええええ!?』
『あっはははは!信長サイコー!いいこと思いつくじゃない!』
『……義元、ドン引き。』
「だっ、騙したんですねノッブ!!この鬼畜!」
「……じゃが、一つ誤算が生じた。」
「誤算……?」
信長はケンの方をちらりと見た。今彼は、沖田を見たことによって生じた雑念を座禅によって必死に振り払おうとしている。小さな声なら聞こえないだろう。
「万が一にもラッコ鍋が効かないことがあってはならんと、風声鶴唳を風魔の小僧にかけさせたな?あれの弱体耐性ダウンを狙って。」
「……まさか、そこに不正が!」
「あったはず、じゃった……。」
そう悲し気な瞳で呟く信長は、フッと小さく笑った。
「……ワシ、今めっちゃ盛っとる。なんなら沖田でもイケそうなほどに。」
「うわーーーッ!!ぜ、ぜぜぜったいダメですからね!百合乱暴反対!!」
「ほ、ほら、なんかもう、揚げ物が食いたい気分じゃけど時間かかりそうだからファストフードでいいかなみたいな……。」
「人の純潔ハンバーガー感覚で食い散らかそうと思ってんですかこの頭バーサーカー!!」
じりじりと沖田ににじり寄る信長。必死に拒む沖田だったが、彼女自身もラッコ鍋のせいで正常な判断が出来ていない。なんかすっごいイケメンフェイスだし、もうこれでよくない?と思い始めていた。ケンも、初心者よりもある程度慣れてからのほうが嬉しいんじゃない?と独りよがりな理論を振りかざしかけた、その時――――
二人の間の虚空に、一筋の稲光が駆け抜けた。
「―――今、ここから風紀の乱れる音がしました。御禁制ですよ?」
「は……」
「はい……。」
「わかればいいのです。それでは、皆で楽しく遊ぶのですよ?」
何事もなかったかの如く、すたすたと部屋を立ち去る頼光。そのあまりの早業は、音すら置き去りにしたかの如く、とても静かに行われた。
あまりの静けさに、座禅を組んでいたケンはまったく気づくことが出来なかったほどだ。沖田にしても信長にしても、一瞬にして頼光が目の前に現れたようにしか見えなかった。昂っていたはずの気分は一瞬にして冷め、冷静な思考を取り戻した。
『さ、それではどうぞ続けてください♡』
『……え、ええっと。これ媚とか売っといた方がいい奴?ま、ママ~~?』
『まあ、まあ!ええそうです、ママですよ義元!』
『この達したあとの冷めた感情をどう高めていくかというのが、連戦においては大事になるわよね。まあ私の体は一回程度じゃ味わいきれないほど至高だけど!』
『この流れでその話出来る君はやっぱりすごいなあ。』
突然の頼光の襲来により、ラッコ鍋の部屋の勢力状況は完全に塗り替わった。目の前で彼女を見てしまった沖田と信長は強制的に賢者モードに突入し、畳の皺を数え始めている。これはしばらくしなくては戦闘に入ることは出来ないだろう。つまり、残りの三人に大きなチャンスが巡ってきたのだ。
(だ、だが……動けんでござる!)
今の今まで、特に誘惑らしい誘惑を出来ていない千代女は、心の中で歯噛みした。いや、彼女自身は別にケンと自分が結ばれたいとかそういう気持ちでここに来たんじゃなくて、ただケンとは一歩一歩段階を踏みながら進んでいきたくて、わかりやすく言ってしまえば夫婦として歩んでいきたくて……と悶々と考え続けていたのがその主な要因だが、実はもう一つ、大きな理由がある。
それは、彼女の衣装が破廉恥すぎて、頼光からの徹底マークを受けていたという事。最悪たまたまでも帯が下にズレてしまえば、首が飛ぶのではないかと思うほどのプレッシャー。この中で誘惑を行うというのは、並大抵の度胸ではない。
「主殿。そろそろ落ち着かれましたか。」
「……ああ、すまない段蔵。ようやく心が平静を取り戻した。」
「左様ですか。それでは少し心は痛みまするが、お目汚し、
「それはどういう……!!」
『……バカな。ありえない。』
『……こんな、こんなことがあっていいというの?あの風紀委員の前で?』
『いきなり、脱いだ……!!』
「ばっっっ!!?な、なにやってんだお前は!?」
「何って……ただ、上の服を脱いで上半身をさらけ出しただけにござるが?」
「なんでなにも着てないんだばかあっ!」
(なっ……!!)
(なんじゃってーーー!?)
『こ、これは驚きだ!加藤段蔵、まさかのキャストオフ!あの風紀委員の行いを見て、なぜこんな暴挙に!!自殺行為としか言いようがない!!』
『……いいえ、よく見なさいダヴィンチ。目を逸らさずに、しっかりと。』
『そ、そんなこと言われても私は誰かの作品が粉々に粉砕されるというのは……おや?』
そう、おかしいのだ。加藤段蔵が露出したというのに、
(なっ、何故!?何故頼光さんは動かないんですか!?)
(賄賂!?買収!?いや、奴に限ってそれはない!では一体、何故!?)
風紀チェックに引っかからない段蔵や、いまだ手の内を見せない千代女。伏龍と化した景虎に、賢者モードの沖田と信長。彼女たちの戦いは、多くの謎を残したまま、最終局面に突入していくのであった。
「ふーっ、信長公の依頼でラッコ獲らされた時にはどうなることかと思ったでおじゃるが……なんとか納品出来て一安心ですなあ。拙者の船にあったらとんでもないことになりそうだし……」
「キャプテン!昼食の用意が出来ました!!」
「オウ!さーてさてさて、今日はマッシュポテト以外だといいなあ。」
「キャプテン、今日は珍しい動物の肉があったので、ケンに倣って鍋にしてみました。」
「ヘェ~~……って、ん?そ、その肉ってまさか……!!」