君は『夜』というものをどう思っているのだろうか?
日が沈んだ半日か。
暗い外か。
月と星々が明るく照らす幻想的な風景か。
それともーーー
『妖華。そろそろ起きなさい』
「_([▓▓] ˘ω˘ )_スヤァ…」
優しい声音で身体を揺さぶる1人の女がいた。思わず2度見してしまいそうな。凝視してしまいそうな絶世の美女だ。
ウエディングドレスと鎧をミックスさせたような衣装。夜のように黒い髪。ルビーのように綺麗な瞳。
だが、ある一点において、人ではないと判断できる部分がある。
背中に生えている天使を思わせるような純白の翼。堕天使を思わせるような漆黒の翼。機械のような頭の光輪。
この世界ならば『個性』で解決するが、彼女は文字通り人では無いのだ。
『起きなさい。今日は雄英の入試でしょう?』
「うーん……分かったよ〜……起きるよ〜」
女性に促され、ベッドから起き上がる。乱れたオレンジ色の髪をかきあげ、腕時計を見た。
「ちょっ!?遅刻ああぁぁぁっ!!」
ドタドタドタと騒がしい様子で身支度を整える。
乱れた髪は綺麗に整え、前右髪を纏めてサイドに結ぶ。髪に関しては彼女からも母親からも口うるさく言われている為に早く自然に出来るようになった。
制服に着替え、小さなカップケーキを口いっぱいに頬張り、飲み込む暇もなく家を飛び出した。
「はんへほほひへふへははっはふはほ〜(なんで起こしてくれなかったんだよ〜)」
「私は何度も起こしましたよ?それでも起きない妖華が悪いんです」
「〜(ごっくん)仕方ないじゃないか。昨日『マルヴァジーア』と『ルードゲート』が容赦なく扱くから……」
『我を呼んだか?我が半身よ』
何も無い空間から現れたのは褐色の美しき女性だ。際どいデザインの花嫁衣装を着た褐色の美女。
雪のように真っ白な髪は褐色の肌に噛み合い、幻想的な美しさを演出し、無機質な黄色の瞳は威圧感を与え、怯えてしまう程の迫力。
『マルヴァジーア……何故あなたがいるのかしら?』
『お前と同じだ。ルードゲート』
マルヴァジーアと呼ばれた褐色の女性はルードゲートの問いに答える。
「俺の体質は『妖魔』を宿しちゃうのかな?」
『ああ。そなたの身体に僅かに流れた夜の力が我とルードゲートを宿らせたのだ。そのせいか我もルードゲートも本来の力の3割も出せぬぞ』
『そうですよ。私は大分マシなのですが、最初の頃はそれは大変だったんですからね』
「そうそう。最初は驚いたし、力の制御もきつかったなぁ。……そういえば、ルードゲートを倒してからあの世界から帰ってからなんだよね。俺の『個性』が出たの」
走りながらあの時のことを思い出す。
ーーーーーー
『……犠牲になりたきゃなればいい。戦いを止めたきゃ止めればいい。……だけど、それは、そう思った当事者がやればいいことだ!世界のために犠牲になる必要は無い。リュリーティスも、そしてあんたもだ!夜との戦いも、列強国の戦も、誰かひとりに押し付けるなんて間違ってる!この世界は、この世界に生を受けた、それぞれが背負うべきものだ!それが、生きるってことだろう!』
聖女を守るために戦う騎士の女性。様々な葛藤やすれ違いから喧嘩してしまうこともあった。
聖女は最初は世界の為に。親友のために犠牲を厭わなかった。本音を押し殺し、嫌われてまで親友のために戦おうとした。
そして互いに本心を知った。
騎士は『聖女』ではなく『親友』を守るために剣を取り、聖女はそんな騎士を支え続けた。
そして、決戦が始まった。
ーーーー
『まさかエージェント・アーナスがあれほどの力と意志を持っているとは思いませんでした。夜の君となった私を打ち破るなど』
『……』
ーーーーーーー
『半妖と人間。叶わぬ恋に身を焦がす魂は強く、美しいな……。我も、妖魔と人間の恋の苦しみを知り……死の味を知り……この力は強く……大きくなった』
『……!』
死を迎え、半妖として蘇った騎士は仲間と共に成長した。
かつての騎士と同じく、世界か親友かの選択を迫られ、そして世界も親友も救う為に強くなった。
そして、決戦が始まった。
ーーーーーー
「ほんと、2人とも強かったよね」
『ええ。月の女王と戦った時、何度冷や汗かいたか分からないわ』
「ルードゲートも大概だよ。俺なんてその時個性が発覚してなかったんだから」
『この世界で貴方に宿ってからよね。個性が発覚したの』
「そうそう。あの時はアーナスさんに変身したから驚いたな。俺にも個性がーってさ。母さんからは大層驚かれたっけ」
そこから家族がお祝いモードに入り、小さいながらも盛大にパーティーが開かれたのを覚えている。
「そしてようやく個性に慣れ始めた時だっけ。もう一度あの世界に行ったのは」
『そうねぇ。マルヴァジーアと初めて出会った時もそこからでしたっけ』
『ああ。我が花嫁の心臓を貫いた時に現れたな。驚いたぞ。まさか倒されたはずの夜の君が生きていたのだから』
「ルーエンハイドさんやリリアーナさんにはめちゃくちゃ驚かれたよね」
あの時の2人の反応は鮮明に思い出せる。と言うより、あの世界の事が辛くもいい思い出ばかりだ。
紅の半妖。慈愛の聖女。ホテルの支配人。2人のエージェント。蛇の妖魔。歌劇場の妖魔。初代聖騎士。夜の君。
赤い半妖。花嫁の巫女。気高き騎士。半妖の研究者。パティシエ。2人の人工半妖。蜘蛛の妖魔。月の女王。
「試験が終わったらまた写真でも見ようかな」
彼女らと一緒に撮った写真は部屋に飾ってある。勿論、コピーを取ることも忘れていない。
『妖華。思い出に浸っているところ悪いが、会場が見えたぞ』
マルヴァジーアが指を指した先には、試験会場とたくさんの受験生の姿が見えた。
これは、夜の無い国で生き続けた、1人のヒーローの物語。
キャラ設定
名前:白百合妖華
性別:男
身長:164cm
好きな物:チョコレート、甘いもの、アーナス達。
趣味:プール、お菓子作り、料理、演劇、剣術。
個性:妖魔化、変身。
容姿イメージはリュリーティス(ただし胸は無い。男だからね。しょうがないね)
本作主人公のオリ主。料理が出来てお菓子も絶品だが、何故かケーキ類は劇物と化すぞ。