なんでだろ?
ーーー個性。個性。個性が一体なんなのだろうか?
始まりは中国に光る赤子が生まれたことから始まった。
人間がコミックのような特殊能力を手に入れたのだ。火を吐く、巨大化する。物を操る。etc…
フィクションは現実となった。
だが、それによって生まれた弊害もある。
個性という特殊能力を用いた犯罪の多発。
個性という特殊能力の格差社会。
個性の誕生によって犯罪率は増加した。その犯罪者を総称して『ヴィラン』と言う。反対に個性を使い、ヴィランを捕まえる者を『ヒーロー』と言う。
そんなヒーローに憧れる者も少なくない。特に子供は誰よりもヒーローに憧れ、全てと言ってもいい程の人間が『ヒーローになりたい』と口にする。
そしてヒーローに必要なものは?と問うと民衆は『強い個性』と答えるだろう。ヴィランを捕まえるにはヒーローは強くないといけない。ナンバーワンヒーローである『オールマイト』やナンバーツーヒーローの『エンデヴァー』を見てもわかる通り、強力な個性を持つ=ヒーローの素質が高いと見られるのだ。ヘドロ事件の時の爆豪勝己に対する反応がいい例だろう。
個性は幼児の頃に発現し、その際には新しい玩具を見せびらかすかのように友達に披露する。そしてそれが強力な個性の場合、『ヒーローだ!』と称えられる。
そんな個性社会だが、個性を持たない者も存在する。『無個性』と呼ばれる者だ。
人口の2割に該当する特殊能力を持たない存在。個性社会の中で弱い個性の者よりも弱い立場の存在。
人間というのは自分たちとは違うものを迫害する生き物だ。それに、無個性は弱い立場な為かいじめの標的になりやすい。
個性を持っている者よりも弱い。反撃もしない。例えしたとしても弱いから直ぐに返り討ちにできる。
個性を重視する社会。個性で将来が決まる社会と言っても過言ではないだろう。
ーーーーー
『ここが雄英。圧巻ね。もしかしたら『エスフェリア皇立学園』よりも広いんじゃ無いかしら?』
『ヒーローになる為に必須と呼ばれる程の学び舎……ね……』
「アルーシェさん達と行った学園も広かったけど、ここは最早都市だからね。どこからお金出てるんだろ?」
鞄から受験票を取り出し、門を通った。
座学は比較的簡単だった。難しいものも数問あったが、それでも余裕で合格ラインには届いているだろう。
だがヒーロー科には学科試験の他に『実技試験』というものがある。それを受けるために会場へ足を運んだ。
『ほんと、人が多いわね』
ルードゲートが会場の様子を見て言った。ただでさえ広い会場に、数えるのも馬鹿らしくなるほどに人がいるのだから。これだけヒーローになりたい者が多いという証拠だろう。
受験票に書かれてある番号の席に移動する。
「なあ、あんたもヒーロー科を受けるんだろ?軽く自己紹介でもしないか?」
隣の席の女が話しかける。チラリと横目で見た後、直ぐに前を向いた。
「ちょっと?おーい」
隣の女は驚いた様子だが、無視をしてルードゲートに話しかけた。
『あらあら。ヒーロー志望が無視なんていいのかしら?』
「俺はヒーローになりたい訳じゃないよ。エージェントに近いのがたまたまヒーローだっただけさ。それより、吸血剣は持ってるの?」
『ええ。あなたが背中に背負って行こうと言った時は流石に焦ったわね』
「仕方ないだろう。カバンに入り切らないくらいの大きさなんだから」
『おい。紙が来たぞ』
「あ、ホントだ」
『あらあら、話に夢中で気づかなかったのね』
(え?独り言?なんなんだろ?あの女の子)
プリントを後ろに回し、教壇に立っているDJ風の男の説明を聞く。
どうやら市街地を模した会場で暴れ回る仮想敵のロボットを壊してポイントをゲットすればいいようだ。
「質問よろしいでしょうか!」
音の出る勢いで手を挙げたの真面目そうなメガネの男だ。
「プリントには4種の仮想敵だと記載されています!もしそれが誤記であるならば、雄英にとって恥ずべき事態!我々受験者は、規範となるヒーローの御指導を求めてこの場に座しているのです!」
(うるさっ)
あまりの声に思わず耳を塞いでしまう。そしてまじめそうな受験生はこっちを指さして来た。
「それから……そこの君!さっきから堂々と独り言を……気が散る!物見遊山ならば即刻立ち去りたまえ!我々は遊びで来ているわけではないんだ!」
先程よりも大きな声で指を指して注意する。だが、これで重要な事がわかった。今ここにいる妖魔は誰にも見えていない。
ルードゲートも、マルヴァジーアも。なんならまだ出ていない『妖魔ヴァルデロッサ』も見えないのだろう。
目を閉じ、そんな事を考えているとDJ風の男が質問に答えた。
「へいへーい。受験番号7111番。ナイスなお便りサンキュー!ソイツはポイント0の仮想敵!つまりはギミック!おじゃま虫だ!会場に所狭しと暴れまくるオブジェだぜ!マリ〇ブラザーズやったことあるだろ?そのドッスン見てぇなもんだ!」
「ありがとうございます!失礼しました!」
メガネの男はお礼を言って勢いよく座った。
「俺からの説明は以上だ!最後になにか質問はあるか?」
DJ風の男は最後に確認する。周りを見てもどうやら質問は無いようだ。
「無いようならこれから指定の会場に移動しな!最後に、我が校のリスナーに我が校の校訓を送ろう!かの英雄、ナポレオン=レオンハルトはこう言った!『Plus ultra!!』さらに向こうへってな!それでは諸君、良い受難を〜」
ーーーーーー
試験会場に着くと、そこはまさに大都市そのもの。資料に書いてあったが、ここまで大きいとは思わなかった。
「奇遇だね。同じ会場だったんだ」
声のした方に振り向くと、どうやら説明会で隣にいた女のようだ。
「なんの用?」
「いやぁ、用って訳じゃないんだけどさ。お互い頑張ろうな」
「……」
(会話が進まない……)
女はサイドテールの髪を揺らし、頭を抱えた。
『初めてこの世界の女の子に声をかけられたわね』
「どうでもいいさ。はぁ……アルーシェさん達の所に戻りたい……」
『諦めろ』
「だよな……」
ルードゲートやマルヴァジーアと会話しているが、他の受験生からは見えていないため独り言か見えない誰かと会話しているふうにしか見えていない。
可哀想な目で見るような。困惑しているような。クスクスと嘲笑しているような視線には目もくれず、愛剣を取り出した。
「ヨルド!」
剣の名を呼ぶと、空間が歪み、その中から剣が姿を見せた。
血のようにおどろおどろしい見た目。所々に血管のような模様が浮かび上がっている、恐ろしい見た目の大剣だ。身の丈程ある大きさのものを軽々と手にして構える。
そんな彼の武器をみて「ひぃ」と声を上げる者もいた。
吸血剣ヨルド。伝説となった紅の半妖が扱った大剣……のレプリカだ。
自分の血をふんだんに取り入れ、歌劇場の妖魔の助力を経て完成させた魔剣。
「な……なぁ、それ」
『ハイスタートー』
その言葉と共に彼は駆け出した。
その様子をポカーンと見る他の受験生。あまりにも突然のことに困惑してしまったのだろう。
『何やってんだお前ら!走れ走れ!実戦じゃあ相手は待っちゃくれねぇぞ!』
試験監督と思われるアナウンスでみんな我に返り、遅れてなるものかと飛び出して行った。
『目標発見!ブッコロ』
「遅い」
こちらに殴りかかってきたロボットを切り刻む。大きな音を立てて崩れ落ちた。
「大したことないな」
『そうだな。生まれたばかりの邪妖と同じくらいだ』
思ったけどさ、ルードゲート達は実体出来ないの?ほら、『セルヴァン』みたいになってさ。
『不可能ね』
「そっかぁ……(´・ω・`)」
軽口を叩きながら仮想敵を次々と討伐していく。
周囲の様子を見ながら倒していくと、仮想敵に襲われて震えている受験生を見かけた。
『どうするの?』
「……助けるしかないでしょ」
建物の壁を蹴り、アクロバティックな動きで素早く移動。仮想敵が抵抗できていない受験生を狙ったのを確認した時はそれを両断し、すぐに立ち去る。
「ねぇ、あんた何ポイント稼いだの?」
『あら妖華。あの子貴方に気があるんじゃない?』
「知るか」
「知るかって……あんたねぇ……」
サイドテールの女が頭を抱えた、そのときだった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
大きな地響きが発生する。その後、地面を突き破り、巨大なロボットが現れた。
建物を破壊し、地面に大きな穴が空いた。
絶対に勝てない。そう錯覚するほどに。
「なにアレ……」
呆然とした様子の女。1ポイントや3ポイントの仮想敵などプチりと踏み潰してしまいそうな程に大きい。
「うわあああっ!!」 「逃げろー!!!」 「こんなの勝てるわけねぇよ!」
0ポイントの仮想敵が現れてすぐ。受験生達は大パニックとなっていた。大きさというのはそれだけで武器だ。それだけで脅威だ。暴れ回る0ポイントに恐怖し、我先へと逃げていく。
そして、仮に倒せたとしてもポイントは手に入らない。正しく絶望的なギミックだった。
「……」
そんな受験生たちの様子を冷めたような表情でチラリと見る。
はぁ……とため息をつき、剣を構える。
「まさか、アレに挑む気?」
「そうだ」
何を言っている?と言いたげな顔で女を見る。
確かにアレは脅威かもしれない。確かにアレには勝てないかもしれない。
ーーーだが。
「ここで逃げたら、誰が守るっていうんだ?」
「あっ……」
『ここで逃げたら、リュリーティスやアルーシェは守れないものね』
「……アーナスさん達、この世界にいたら良かったのに……」
剣を突き刺し、個性を発動させる。
立っている地面から魔法陣が浮かび上がり、彼を包み込むように移動する。
ーーーー周囲に眩い光が発生する。
「……え?ええー!?誰!?」
光から現れたのは、銀髪の長身の女性だ。
赤を主体とした、横腹や背中を晒している露出度の高いスーツのような衣装。頭にゴーグルを装着し、両腕には分厚い篭手。丈の短いスカートにも見える茶色のズボン。白のブーツ。
『流石、アーナスを尊敬しているだけはあるわね。変身まで約1秒足らず』
「当然さ。アーナスさんは私の原点だからな」
あの世界の出来事を思い出すかのように目を閉じる。
「それがあんたの個性?」
「……そうだが?」
「あんた、独り言言ってる時と比べて圧が凄いね!……えーっと……アーナス……だっけ?」
「……アーナスさんは今私が変身している姿だ」
「あー、ごめん。丁度名前みたいなの言ってたからさ。私は『拳藤一佳』。個性は『大拳』。手を大きく出来る」
「……『白百合妖華』だ。拳藤。今すぐ私を思いっきりあそこにぶん投げてくれ」
互いに簡単に自己紹介を終えた2人。名前と個性を知ったが、それだけの赤の他人だ。
「え!?」
「あんたが鍛えているのは分かっている。個性を使えば私位簡単に投げれる筈だ」
それに……
「私の足では時間がかかる。だが、あんたが投げて直接行くことが出来れば……」
「直ぐにあの0ポイントの所に行けるって訳ね」
「ああ。その間、あんたは避難誘導でもすればいい」
「……言い方がちょっと癪に触るけど、それで行くよ!その代わり、そこまで言うのならあの0ポイントを倒しなよ!」
「当然だ」
作戦会議が終わり、拳藤は手を大きくして妖華を掴んでーーー
「それじゃあ、行くよ!」
ーーーぶん投げた。豪速球が自慢のピッチャーが投げるド真ん中のストレートのように、一直線に0ポイントに向かっていく。
「デモンフォーム!蹴散らす……!」
銀髪の美女の元にエネルギーが集まり、姿を変えた。
肌は燃え盛るような赤色に。目は色彩が反転して黒目となる。
悪魔のような模様と角。そして鋭い爪。
『デモンフォーム……。アーナスの妖魔形態のひとつ。オールラウンダーな形態で、邪妖を焼き尽くす姿』
ぶん投げられた際の風圧に、炎の推進力と火力でぐんぐんスピードは上昇する。
『目標発見!ブッコロス!』
暴れまくる0ポイントはこれを迎撃する。
思いっきり振りかぶる右ストレート。あれ程の巨体で撃ち込まれたら一発アウト間違いなしの一撃だ。
「はぁっ!!」
それをデモンフォームの鋭い爪で切り裂いた。
切り裂かれた部品は宙を舞い、炎のオーラによって炭と化す。
「さぁ、狩の時間だ」
0ポイントの腹部を殴り、サマーソルトの要領で尻尾でかち上げる。
宙を舞い、ぐるぐると回転する0ポイント。そんな機械人形に向け、巨大な火球を作り出した。
「逃がしは……しない!!」
両手で放り投げた火球は0ポイントに直撃!大爆発が起こる。
煙が晴れた時、パラパラと黒い炭を確認した。どうやら全部炭になって消えたようだ。
地面に着地し、デモンフォームを解き、アーナスの姿から元の姿に戻った。
『しゅ〜りょ〜!』
それと同時に終了のアナウンスが鳴り響く。
こうして、白百合妖華の入試は終わったのだった。
アーナス
よるのないくにの主人公。半妖と呼ばれる種族で、半分人間半分妖魔の不老の存在。教皇庁のエージェント。血の色は紫。聖女であるリュリーティスとは親友を越えた間柄。(ただし仲良し度MAXの状態で物語が始まるため、プレイヤーは置いてきぼりをくらいやすい)
続編にも登場する。
多種多様な武器を使い、フォームチェンジを使いこなす。
デモンフォーム
アーナスの形態の1つで、見た目は炎の悪魔。属性は炎。火力が高く、1番扱いやすい形態。ぶっちゃけこれで大抵ゴリ押し出来る。
ムーンラビットフォーム
アーナスの形態の1つで、ウサギのような俊敏な動きが特徴。移動速度が速く、攻撃速度も早い。チェインを稼ぐのに適している。
ファントムフォーム
アーナスの形態の1つで、サポートに特化している。自身や従魔のHPやSPを回復する司令塔のような役割。恐らく従魔にもバフがついていると思われる。
アーマーフォーム
アーナスの形態の1つで銀の鎧に豪腕が特徴。攻撃力が高く、左腕の一撃が相手に気絶状態を付与する。範囲攻撃も得意と思われる。
ナイトメアフォーム
アーナスの形態の1つで、ぶっ壊れと言っていいほど強い形態。漆黒の鎧に悪魔のような黒目。堕天使のような翼に青と赤のオッドアイが特徴。セリフも相まってめちゃくちゃかっこいい。
ちなみに緑谷くんのボソボソですが、妖華が堂々と独り言(会話)言ってるので飯田くんには聞こえていません。