ホラー系RPGの世界で死なないように駆けずり回る 作:スマトラ諸島
転生? 憑依?
どっちかはよく分からないが、とにかく、俺はこの世界に来てしまった。
前世の俺は大学生で、歩道を歩いていたら車が突っ込んできて死んでしまった。
その事故の前日、偶々全クリをし終わったゲームが『悪魔学校 〜悪夢の降臨〜』と言う名前のホラー系RPGだった。
現代日本の学校が突然闇の結界に覆われ、異形の怪物が出現。
校内にいる怪物を倒しつつ、学校から脱出する方法を探す……というのがこのゲームのあらすじである。
……名前とあらすじから大体察せるように、このゲームは所謂シュールバカゲーの一種だ。
主人公の一味は怪物を倒せるくらい強いのにモブは数十人単位でバカバカ死ぬし、主人公達は全員生きてるのに中にいるモブごと校舎が全壊するエンドもある。
当然ゲームの中の話なので、前世の俺はゲハゲハ笑いながらプレイしていた。『ちょwwwワンパンで倒せる雑魚の一撃でモブ10人逝ったwww』という具合に。
……俺の名前は『田中 まさのり』。男。高校2年生。
ゲーム中に一度も出たことのない……正真正銘のモブだ。
二ヶ月後に起きる怪物発生事件で、生き残れる確率がゼロに等しい、名もなきモブである。
「逃げないと」
朝食の食パンを口から離し、冷静に言い放った言葉。
そこからの行動は早かった。
親と学校に何も知らせず、近くの駅へ猛ダッシュ。
とにかくこの街、この県を出たかった。他の場所で2ヶ月過ごせばあの事件に関わらずに済むのだ。学校の勉強が遅れるとか世間体がどうとか、命に比べればいくらでも取り返しがつく。
財布の切符を券売機で買う。
待ちきれないと言った焦った様子で、取り出し口に手を突っ込むと。
「は?」
出てきた切符は、シュレッダーにでも掛けたみたいにバラバラになっていた。
硬貨を入れ、同じ行き先の物をもう一枚買い、取り出し口に手を入れる。
今度はバラバラにこそなっていなかったものの、大きく赤い文字で『地獄行き』と書いていた。
「……駅員さーん」
地獄行きの切符を捨て、バラバラになった切符を駅員に見せる。
出てきた切符が既にバラバラだった、こちらに過失はない、通してほしいと説明した。
10分ほど掛けて切符を修繕。
確かにバラバラではあるものの、先ほど購入した物だと確認が取れ、改札口を通してもらった。
スマホを触りながら駅で電車を待っていると。
手が滑り、ゴトッとスマホを落としてしまう。
恐怖で手が震えていたのだろうか? そう思いつつ拾おうと身を屈めた瞬間。
頭の上を、何者かの手が勢いよく掠めた。
「え?」
顔を上げる。
手が空ぶったからか、トットッと姿勢を崩しながら、線路の方へ近づいていくスーツ姿の男性。
前のめりになりながらも、きょとんとした顔をしているその男。
「ん? 俺、何やっ」
ーーーープアアアアアアアアアッ!!
鳴り響く電車のクラクション。
何故、すぐそこまで電車が迫っていた事に気づかなかったのか。
男性は線路に向かって前のめりになっていた。故に。
時速80キロで走る鉄の塊に首から上を跳ね飛ばされ、鮮血が辺りに飛び散る。
「ぼご、がが、ぼ」
人間の体とは意外に頑丈な物だ。
彼の頭は少しへこみ、首は半分ちぎれ掛かって、ネックレスのようにブラブラと胸の前でぶら下がっていた。
口から血の泡を出しながら、頭を振り子のように三度ほど左右に揺らした後、その場に倒れ込む。
数瞬遅れ、辺りに響き渡る悲鳴。
女性がキーキーと甲高い悲鳴を上げる中、俺は顔を真っ青にして、彼の死体を見ていた。
「......あ、ぁ......」
情けない話、俺は小便を漏らしていた。
その場にへたり込み、地面に黒いシミを作るくらいしか出来なかった。
このゲームの黒幕は魔法というおっかない物を使う。
詳しい理由は省くが、大勢の学校の生徒を生贄にしようとしていたのだ。
当然、生贄にしようとしている生徒をむざむざ逃すはずもない。
よく考えれば分かったはずなのだ。『この街からは逃げられない』と。
俺は。
あの、クソみたいな校長が起こす事件を生き延びるしかないのだった。