「もしベルくんが闇堕ちしたらどんなんだろう」
と考え、この作品が完成しました。
幸せな日々が続いていた。のどかで静かで、たまに騒がしくなるけど、楽しかった日々が。
暖かい毎日がそこにはあった。ただ桑で畑を耕して、上手く育った野菜を祖父と一緒に食べて、それを見た近所のおじさんにおすそ分けして、されて。そんな日々があった、はずだった。
そんな日々は一瞬にして奪われた。たった一体の怪物によって。
その日も今までと変わらないような日々で、明日もそんな日が続くものだと思っていた。村全体が寝静まった夜にそいつはやってきた。そいつは白い翼を持っていた。そいつは血のような色の目を持っていた。そいつは恐ろしい程鋭い爪を持っていた。
そして、それは一瞬だった。
一瞬にして、村は赤く染まった。僕は祖父と逃げ惑うことしかできなかった。
そんな祖父とも燃えた家だった瓦礫によって二手に分かれて、その向こうから肉が砕ける耳を塞ぎたくなるほどのおぞましい音を聞き、祖父がもうこの世にはいないことを悟った。
村全体が燃えていることに気がついたのは、村を隅から隅まで見ることができる高台の上についてからだった。
育てていた野菜は焦げ、かつて祭りなどで賑わいを見せた広場は瓦礫と焦げた何かだけが残った。
思い出の籠もった家など粉々になっていた。その奥にいるおぞましい龍は、悲しそうな叫びをした次の瞬間飛び去っていった。
何度も吐きながら、何度も転びながら、泣き叫びながら、村の人々の名や祖父の名を呼び続けた。夜が明け、瓦礫についた火が消え、残っていたのは壊滅した村と誰かの焦げた腕一本だけだった。
その日僕は…………いや、
そこに村があった唯一の証拠である写真一枚を持って。
────ー
[とある村に関する情報]
オラリオから離れた場所に存在していた一つの村が、未確認の
[とある村襲撃直前のオラリオ]
突如として壊滅したと考えられていた
その後、その龍は……
────ー
迷宮都市オラリオ。神々が降臨する以前、つまりは現在で英雄と呼ばれていた者たちが存在していた時代に、大量の怪物達をもたらす元凶として恐れられ、魔境なんて名で呼ばれていた大穴の上に、降臨した神々が蓋としてバベルを築いたその周りに発展した冒険者の街。
現在では、未知の素材や金、名声を得られる場所でもあり、大穴はダンジョンと呼ばれている。
そして、多くの者達が地位や名声を手に入れんがために、今日もオラリオにやってくる。
そんな中、一人の少年は違った。その少年は白兎ような容姿を持っていた。だが、幼さの残るその少年の目には光はない。
ただ、一つの純粋な思いを持って少年は進んでいた。
「はい、次! おっ、君若いねえ! 名前はなんていうんだ?」
オラリオの門番をしているらしい一人の男がそう声をかける。
少年は顔を上げ、名を名乗る。
彼の名はベル・クラネル。
かつての優しかった少年は死に、今は復讐の為に生きる悲しき少年。
この物語は英雄譚ではない。喜劇でもない。彼が紡ぐのは血まみれの復讐譚。
この物語は復讐の為に走る少年とそれを止めようとする少女達と、支えつつもどうにか少年を復讐の沼へと走っていくのを止めようとする女神が織りなす、一つの悲しき復讐譚である。
今回は短めですが、基本的に3000字を目安にしていますのでどうぞよろしくお願いします。