九話
『音楽の国 エレジア』への航海と滞在は予定よりもかなり長いものとなったが、それでも『赤髪海賊団』は航海の拠点であるフーシャ村へと帰ってきた。
「……う、うーん」
フーシャ村へと帰ってきたルフィにとって、最大の懸念であり、問題。
海軍の中将であり、自分の祖父であるガープに自分が海賊と航海に出た事で怒られないか、殺されないかというそれはというと……やはり、長い滞在中にガープはルフィの様子を見には来た。
そして、ルフィが居ないので村長やマキノへと当然、質問したのだが皆、要約すれば『恋人と観光の旅に出かけた』と答えた事で『ほう、ルフィの奴……もう、そんな人を……流石は儂の孫じゃわいっ!!』と言いながら、ぶわっはっはっはと豪快に笑い、『それならしょうがない』と納得して書き置きを残して帰ったとの事。
その書き置きの内容は……。
ルフィへ
まさか、お前にもう恋人が出来たとは驚いたわい。次、様子を見に来たときはちゃんと紹介してくれよ
爺ちゃんより
この書き置きを見てルフィは許されたのは良かったが、なんか却って面倒くさい事になったような気がしたし、ウタの事を恋人と他者から指摘されたので気恥ずかしいし、照れてしまう。
「ふふ、私達、恋人だって……」
一緒にガープの書き置きを見たウタも又、同じようで気恥ずかしさと照れで顔を赤くしながら寄り添い、微笑んで言う。
「少なくとも、皆からはそう見えるらしいな」
ルフィはそんなウタを受け入れ……。
「好きだ、ウタ」
「私も好きよ、ルフィ」
そうして二人は口づけを交わし、エレジアでの経験もあって更に親密な関係となっていった。
そうしてフーシャ村に『赤髪海賊団』が帰還して数日後、シャンクスたちは世界中の海賊たちが集まり、航海や拠点を築いたり、縄張り争いをしている『
「シャンクス……私、此処に残るね。ルフィの傍に居たいから……」
しかし、ウタはフーシャ村に残ることを決め、ルフィと共に見送りながらその意思を伝えた。
「ああ、そう言うと思ってた。お前はお前のやりたい事をすれば良い……どんなものであろうと俺は娘であるお前を応援している」
「うん、ありがとう。お義父さん……」
シャンクスはウタに微笑むと優しく、抱き着いてきたウタを抱き留める。
そして、ある程度抱き合うとシャンクスはウタから離れて……。
「……」
シャンクスは静かに愛刀である『グリフォン』を抜き、それに自分の『覇気』であり、王の資質を持つ者だけが有する『覇王色の覇気』を纏わせ、剣より黒い稲妻が発生する。
「……」
ルフィも又、右拳を握るとそれに『覇王色の覇気』を纏わせた。トットムジカの『魔王』との闘いの中で『覇王色の覇気』が扱えるようになったのだ。
『おおおおっ!!』
そしてシャンクスは剣撃を放ち、ルフィは拳撃を放つ。すると剣も拳も直撃していないのに衝撃波が発生し……。
「ぅ……ぐっ……まだまだ遠いか」
ルフィは大きく仰け反らされた事でシャンクスとの力量差を実感した。
「そうそう、超えられたら俺の立つ瀬が無いじゃないか」
悔しがっているルフィにシャンクスは微笑み、グリフォンを鞘に納めてルフィへと近づく。
「シャンクス、俺はいずれウタと世界の皆が笑って暮らせる『新時代』を作るために海へ出るよ」
「……海兵にはならないのか?」
「その前に一度、世界を見て回ろうと思う。そうしたくなった」
最もガープには良く相談しなければならないだろうが……。
「それはなによりだ……お前になら、安心してウタを任せられる。それと」
シャンクスは常に被っている自分の麦わら帽子を取って、ルフィに被せる。
「この帽子もお前に預ける。これが似合う男になったら返しに来てくれ」
「……ああ」
ルフィはシャンクスに頷いた。
「だが、『式』をやるときは連絡しろよ。それは別の話になるからな。後、今からでもお義父さんと「行くなら、早く行けっ!!」」
続けてのシャンクスの言葉にルフィは『覇王色の覇気』を放ち、シャンクスは『分かった、分かった』と言って部下たちと一緒にウタを残し、航海を始めたのであった……。
2
シャンクス達、『赤髪海賊団』がフーシャ村を出て十年後……ルフィとウタに年上の兄二人が出来、その二人の旅立ちを見送ったり、ガープとの話合いの結果、一度、世界を見て回りたいと言った事にやはり、ガープは渋い顔をしたがそれでも『海賊』になるよりはましだと受け入れつつ、『せめて海軍として働ける下地は作らせてくれ』と度々、海軍本部にある教育機関やガープの知り合いなどに師事を受けたりなどして……。
「それじゃあ、行ってくる。マキノさん、村長……皆」
「今までありがとう」
旅立つルフィとウタの二人を見送りに来たフーシャ村の港にてマキノに村長、村人皆へと二人は言うと……。
「ふふ、こちらこそよ」
「達者でな」
『夫婦仲良くやるんだぞー』
マキノに村長、村人は冷やかしもあるがルフィたちに送り出す言葉をかける。
「爺ちゃん、我儘を言ってごめん……それと色々、ありがとう」
次にルフィは見送りに来たガープの元へ行き、旅立ちの選別として海軍製の中型船や海図、医療器具、食料に水、この世界において遠い場所でも念話により交信できる能力を有するがゆえに通信手段として用いられている『電伝虫』という生物が居るが、それをガープと個人的に連絡できるようにしたものなど色々とくれた事に対し、深い感謝を述べた。
「良いんじゃよ。お前は儂にとって誇らしく、可愛い孫じゃからのう……ウタちゃんも気をつけてな」
ガープはルフィと抱き合いつつ、ウタにも言葉をかけた。
「はい、ガープさん」
そうして、ルフィとウタは『新時代を作る』という二人の誓いを象徴する麦わら帽子に拳とマイクの絵を描いた旗に海軍関係者を表す旗を掲げた中型船に乗るとフーシャ村を出発した。
「(食ってやるぅぅぅ)」
少し海を進んでいると近海の主と呼ばれる猛獣と呼んでも良いような魚が姿を現したが……。
「止めろ、こっちは争う気はない」
ルフィは近海の主の声を聴きつつ、 軽く『覇王色の覇気』を放てば……。
「(はい、分かりました)」
威圧され、ルフィが遥かな格上だと悟ると大人しく海の中へと潜っていった。
「いよいよだな、ウタ」
「うん、一緒に『新時代』を作ろうルフィ」
ルフィとウタは海を眺めながら、寄り添い合いながら航海を続けるのであった……。