この世界には神の如き地位と権力を有する者が存在する。
800年前に『世界政府』という一大組織を作り上げたのは20人の王とされており、その末裔こそ天竜人であり、世界貴族だ。
基本原則としてこの世界の者の天竜人に逆らってはならない。
手を出せば問答無用で殺されるし、その場は凌げても犯罪者になるし、何をせずとも気分次第で殺されても文句は言えない。そして、命令にはどれだけ理不尽であろうとも絶対に従わなければならないのだ。
ルフィは子供の時、ガープに『天竜人』について聞いた事がある。
『天竜人はゴミクズじゃよ』
『お前、ルフィ君の前で何を言っとるんだっ!!』
ガープは凄い不機嫌気味に断じるとその時、一緒にいたセンゴクがしばいた。
『痛いのぉっ、事実じゃろうが』
『せめて、オブラートに包まんか……っと、まあ、逆らえない存在だから、どれだけ理不尽であろうとも手を出してはいかんぞ、ルフィ君。その瞬間に犯罪者となってしまうからだ』
『まあ、そういう事じゃ』
センゴクがルフィに言い聞かせるように言い、ガープもセンゴクの意見に乗じた。
こうして、ルフィは天竜人は酷い存在だとは思っても、手を出さないようにしようとは思った。ガープにセンゴクの二人、他にもクザン達を悲しませたくはないからだ。
だが、その天竜人にルフィはシャボンディ諸島で出会った。
奴隷に対して何の愛情も無く、まるで物のように扱い、気に入らなければ銃で撃つ事もためらわない。
ルフィが想像していたよりも酷く、思わずクザンとボルサリーノがそうしないように傍にいてくれているのを理解していたのに無意識に殺しそうになったくらいだ。
「ルフィ、大丈夫?」
「よっぽど酷かったのね……」
「話には聞いていたけど……なんて理不尽……」
「世界貴族の権力はなんて……」
「う……悪いな、皆……」
天竜人の所業を見て、ルフィは瞬時に殺そうとしたのをクザンとボルサリーノに抑えられた後、物陰に行ってルフィ達は休憩を取る事にした。
何故なら、ルフィの気分が凄く悪くなったからだ。
天竜人の心を『見聞色の覇気』で見てしまったからである。
彼等は悪意を悪意と認識していなかった。だからこそ何の良心の呵責も無く、悪事を成せるのだ。奴隷に対する扱いも酷い事を思考していたし、増やす事も考えていた。
かなり質の高い『見聞色の覇気』で感受性が強すぎるのが災いして、強烈に吐き気を催す程に心にダメージを受けてしまった。
そんなルフィをウタとナミ、ビビにロビンが背中を摩るなどして介抱していた。
「本当にすみません、クザンさん、ボルサリーノさん。あれだけ言われていたのに、結局、二人の手を煩わせてしまって」
「いや、出会ってしまったのは仕方ないからな。良く踏み止まってくれたよ」
「正直、わっしもなるべく、関わりたくはないと思っているくらいだしね~。命令されたら仕方ないけど」
クザンとボルサリーノは苦笑しながら、ルフィに声をかける。
「ふう~、それじゃあ行こう。はっちゃんの教えてくれた場所に」
その後、観光を再開したルフィ達は途中、賞金稼ぎ達に握手やらファンだと言われたりしながら、シャボンディ諸島内を進んでいき……。
「いらっしゃい……って、随分と珍しいお客様たちね」
『シャッキー’S ぼったくりBAR』と書かれている看板のある店内に入れば、海賊を締めていて煙草を口に咥えて紫煙をくゆらせた妖艶な女性でこの酒場のマスターであるシャッキーことシャクヤクがルフィ達とクザンにボルサリーノを見て言ったのだった……。