突如、この世界に出現した『無貌の処刑人』――その存在は世界の人々に受け入れられていた。
何故なら世界にて暴れる海賊を、国や島に蔓延る犯罪組織の者達を処刑するからだけでは無い。
「しっかし、凄い事になったよなぁ」
「ああ、『無貌の処刑人』だろ? どっかの集団か単独かは知らないが俺達の代わりに海賊を片付けてくれるから仕事が楽だぜ」
「そういう事はあまり大っぴらに言うなよ」
とある海軍支部にて海兵たちがそんな団欒をしていた。実際、『無貌の処刑人』の行動は海兵たちにとっては大助かりである。悪党の中には不正を働く政治家や海賊と手を組んでいる貴族などがいたりするが、その場合は生かしている事もある。
だが、それでも十分に痛めつけて逃げられないようにしつつ悪事を成した証拠を残しているのだ。
ともかく、団欒をしつつ休憩を止めようとした海兵たちが……。
『うぐっ、がうぁぁっ!!……わ、分かった、み、認めるっ!! 確かに私は幾つかの海賊と取引をしているっ!!』
『っ!?』
支部の基地内から基地を任された海兵たちにとっては上官の苦痛に満ちた悪事の告白が放送される。
『ほら、正直に言ったぞ。だ、だから止め……う、うわああああっ!!』
そうして上官の悲痛な叫びと共に銃声が鳴り響く。
「おい、いくぞっ!!」
当然、全海兵がその上官の部屋へと行き……。
「ぁ、は、はは……」
窓が開け放たれて何者かが去った形跡を余所に床に座り込み、放心した上官はなにやら引きつった笑いをしながら失禁しているし、垂れ下がっている指の幾つかは骨が飛び出るぐらいに折れていたりした。
そして机の上には海賊との取引の証拠が置かれていたりもする。
「……あれは空砲だったか、とりあえず、この恥さらしは治療してから詳しい話を聞く事にしよう」
そう、海兵の中での隊長が指示をした。後日、この上官は階級剥奪の上で基地の監房に放り込まれたのは言うまでもない。
このように『無貌の処刑人』は海軍もであるが、政治家、世界政府関係者や貴族に王族であっても悪事を成したなら裁きを下していた。
裁きのそれにはルール染みたものがあるようで賄賂や悪事への協力ならば証拠をばら撒いたり、そしてスピーカーや電伝虫を通して悪事の告白を周囲に聞かせるなどして捕まるようにしている。
だが、例えば非加盟国にて、人々を捕まえ奴隷としたりなど余りに非道な事をやっていた場合……。
「さぁて、次はどう稼ぐか……ん、何だこの紙?」
世界政府の関係者は自分の部屋にて次の悪事を考えながら椅子に座ったのだが、机の上に置かれている紙を見て、戸惑う。そうして手に取って、内容を見てみると……。
『後悔しながら死ね』
「だれの悪戯だ、くだらな「いや、悪戯じゃない」ぐっ、っっ~~」
静かだが冷たい声が囁かれると共に悪事を働いていた政府関係者の男は首を強い力で締めあげられ、見る見るうちに呼吸出来なくなっていく。
細いワイヤーで首を締められているからだ。そうして、ほどなくして窒息死したのであった。
こうして立場など関係無く、悪に対して制裁及び処刑をするが故に『無貌の処刑人』、あるいは『無貌の制裁者』は平和を望む者に受け入れられていったのだ。
「さて、次は……」
『無貌の処刑人』として活動するルフィは訪れた島にて『生命帰還』を利用して骨格などを変える事で変装しながら、悪を探していたが……。
「見事な追跡だが、分かっているぞ……俺に何か用か?」
「ええ、勿論よルフィ君……貴方なんでしょう、『無貌の処刑人』は?」
「……良くわかったな」
「愛する人の事くらい、良く分かるわ。勿論、女の勘もあるけどね……」
追跡の気配を感じて人気の無い場所に行って、追跡者へ話しかける。殺気が無いので用件を聞くと相手はなんとカリファであり、しかも自分の正体に気づいていたのでルフィは感嘆の息を漏らすとカリファは微笑んだ。
「此処の犯罪組織は他の海賊や組織、ブローカーと繋がっていたりする中々、厄介なところなの。仕事手伝ってくれないかしら?」
「分かった……カリファさん達には借りもあるからな」
ルフィは以前、ウォーターセブンでカリファ達、『CP9』の仕事を失敗させた上に長官のスパンダムを殺したという負い目があるのでカリファの申し出を受け入れた。
「ふふ、ありがとう。やっぱりそういう真面目で義理高い所大好きよ」
ルフィに対し、カリファは笑みを浮かべて近づき、抱き締めながら口づけするのであった……。