『ウタワールド』――それは『ウタウタの実』の能力者の歌声を聴く事で誘われる精神世界のような異世界である。
そんな世界に『バギー海賊団』の者たちは誘われた。無論、抵抗は試みたがこの世界における支配権を持ち、干渉力も強いのはウタであり、更に音楽の王もこの世界において全能に近い力を持っている。
更に体力はかなり消費するが音楽の王を現実世界に呼び出して使役する事も可能である。
ともかく、バギー海賊団はこの世界ではどうにもならないことをしっかりと理解させられ、海軍が来るまでの間、それぞれが抱いている理想的で幸せな体験をさせてくれると言われたのでそれを承諾した。
「うん、やっぱりそうだ。貴方がシャンクスの親友のバギーなのね」
バギーの特徴が酔っぱらっている時に『俺にとっては親友だ』とシャンクスが語るそれと一致したのでウタは言った。
「はあああっ!? 誰があんな奴の親友だ。派手馬鹿めっ!!むしろ、一目会った瞬間、ぶっ殺したいくらい派手に憎い相手だわ」
「……えー、でもシャンクスが……」
「大体お嬢ちゃんはシャンクスとどんな関係なんだよ?」
「私はシャンクスの娘よ」
「なにいいいいいいいいいいっ!? あ、あいついつの間に結婚してたんだぁぁぁぁっ!!」
ウタから告げられた事にバギーは凄まじく、驚愕していた。
「正確には義理の親子よ。私、二歳だった時にシャンクスたちが襲った海賊から奪った宝箱の中に入ってたらしいから」
「……あぁ~、成程……そういう事ならあいつはそうするだろうな」
ウタの過去の話に納得いった様子でバギーは語るのだった……。
そして、現実世界であり、場所は『オレンジの町』。
此処を縄張りとしていた『バギー海賊団』は全てルフィにより、無力化されて彼らの肉体は全て拘束されている。その後、しっかりと海軍に通報し、連行しに来るのを待っている間……。
「わしらの町を救ってくれてありがとうっ!!」
『オレンジの町』の町長でプードルのような髪型の老人、プードル他町民の全員が頭を下げ、礼を言う。
「いえ、『正義』を掲げる海軍関係者として当たり前のことをしただけだ。まだ、被害が出る前に対処出来て本当に良かった」
そう、ルフィは謙遜しながら言った。
「ルフィは海軍の関係者だったのね」
一瞬だが、希望を見つけた様な表情を浮かべながらナミは近づき、聞いてきた。
「正確には中将の孫ってだけで海兵では無いけどな。さっきは協力ありがとう」
「いえ、こっちこそ助けられた訳だし……ねぇ、私達、旅をするのも同じで海賊を相手にするのも同じだから、手を組まない?」
ナミは協力関係を申し込んできた。
「……」
「ちょっと、イヤそうな顔しないでよっ!! 海賊相手でも泥棒は駄目だっていうの?」
「別にそうはいわねぇよ。海賊の世界は弱肉強食みたいなものだしな……まあ、女性の一人旅を放置するのも性に合わないし、良いだろう」
「良かった……それと私は一億ベリー稼いである村を買ったら、泥棒から足を洗うからね」
「……じゃあ、その時までの協力関係だな。それと一つ……」
手を握り合いながら、ナミから絶対に目標を達成しなければならないのだという彼女自身の誓いによる覚悟を感じ、ルフィは言う。
「ん?」
「俺は助けたがりって奴でな。助けを求められればすぐにでも応じるぞ……そして、そういうときの俺は無敵だ」
ルフィも又、自分に課している誓いを述べた。
「ふふ、そう……覚えておくわ」
こうしてルフィの旅にナミも加わることが決まり……海軍が来るまでの間、バギーたちから宝を全部奪い取ったり(ナミと相談しての山分け)、ウタが町の人たちの前で歌声を披露し、ゾロは昼寝中の中……。
「そうか、主が遺した店を守り続けると決めたのか……シュシュ、お前は誇り高い犬だな」
「(もう、俺にはこれしか出来ないから)」
ルフィは主人が亡くなっても、主人が開いた『PET FOOD』の店を番犬として守っている子犬であるシュシュに『見聞色の覇気』を使う事で交流した。
因みにルフィはウタに会う前、フーシャ村には同い年の男女が一人もおらず、代わりに動物と触れ合っていた。
なので色んな動物との交流が好きだったりする。
「あんなにシュシュが心を許すなんて……」
そして、シュシュの主人と親友であったため、シュシュの性格も知るプードルはルフィに対する懐きぶりに驚くのであった。
その後、バギーたちの身柄を引き取りに来た海軍は近くの『シェルズタウン』からであり……。
「さっき、別れたばかりなのにこき使うようですまない」
「いえいえ、お役に立てて光栄です」
気まずさからルフィは謝り、海兵は苦笑しつつ声をかける。
そうして、バギーたちの身柄を海軍に渡し終えると……。
「それじゃあ、達者でなーっ!!」
プードル達に見送られながら、ルフィにウタにゾロとナミは『オレンジの町』を旅立ったのだった……。
2
『オレンジの町』を旅立ち、航海を再開したルフィにウタ、ゾロにそして、新たに加わったナミ。
中型船でナミの小型船を引き連れている形の航海だが……。
「お、島だ」
島を発見したのでルフィは呟く。
「あれは無人島よ。行くだけ無駄だわ」
「いや……一人、住んでるな。それに動物もいくつかいるようだ……というわけで行くぞ、ウタ!!」
「うん」
「ぇ、ちょっ!?」
『見聞色の覇気』で探るままにルフィはウタを抱えると姿を消した。
「あいつ、えらくはしゃいでたな……」
「い、行くしかないわね」
島へと向かうとゾロは興味ないので船に残り、ナミが船から島へと上がって森へ入れば……。
『(わーい)』
「楽しそうでなによりだ」
鶏のようなタヌキや兎のような蛇、ライオンのようなブタなど珍妙な姿をした動物たちが凄くルフィに懐いたり、ウタの歌声にノリながら踊ったりしていた。
「どういう状況よ……凄い、メルヘンだけど」
ナミは想像を超える状況に癒されながらも戸惑う。
「動物たちを楽しませてくれてありがとよ。それに箱も壊してくれるなんてルフィ、お前は良いやつだな」
ウタとナミが呟く中、ルフィの隣では凄い規模のアフロで眉毛は繋がり、髭も伸び切った小柄すぎる男が居た。
彼はこの島の住人で森の守護者をしているガイモン。
今から二十年前の事、宝の地図を元に海賊としてこの島にやってきた彼はこの先の大岩の上で宝の山を見つけたが些細なミスから落ちてしまい、そのまま、真下にあった空箱にその身がすっぽり収まってしまって以来、ずっと抜けなかったのだ。
しかし、今日ルフィによって箱を破壊される事で解放されたのだ。
「困ったときはお互い様だよ。他にも何かあるか?」
「じゃあ、もう一つだけ頼むよ。長年、夢見ていた事があるんだっ!!」
そうして、ガイモンは長年、森の守護者となりながらもこの島へとやってきた他の海賊などが大岩の上の宝箱を手に入れないようにしつつ、自分が手に入れる事を夢見ていた。
それが叶うと喜びながら、ルフィをその場へと案内して宝箱を落とす事を頼む。
ルフィは大岩の上へと飛び上がり……。
「確かにあるぞ。ガイモンさんの言う通り、宝箱が五個……でもやっぱり、こういうのは自分でやった方が良い」
ガイモンへとそう、呼びかけた。
「ルフィ……」
ウタはルフィが視線を逸らしながら、頬をかくという嘘をつくときや困った際にやる特有の癖を見て、何かあったのだと悟り……。
「え、宝箱があるなら落としてあげなさいよっ。ガイモンさん、それを手に入れたがってるじゃないっ!?」
ナミはルフィがいたずらをしているのだと思って声をかけ……。
「……いや、もう良い……ルフィ、お前は本当に良いやつだな」
ガイモンはルフィの態度に全てを察した。
「無いんだろう、中身が?」
「うん、全て空だ……残念だな」
涙を流しながら訪ねるガイモンにルフィは答えた。
しかし、こういう事は良くある事……宝の地図が存在する島において、地図を手に入れた時には宝は全て取られているというのは良くある事なのだ。
「良い旅をな、ルフィー!!」
『(ばいばいーっ!!)』
「おう、ガイモンさんも元気で」
その後、長年一緒に住んでいるので愛着が湧いていて、宝より珍妙なこの島の動物を狙って上陸しに来る者が多いので改めて守護者としてガイモンはこの島で暮らす事を決めるとこの島を旅立つルフィ達を見送ったのだった……。