百七十三話
それは彼にとって懐かしい記憶の再生であり、だからこそ既に夢だと理解した。
彼は天竜人の聖地であるマリージョアを襲撃し、奴隷解放を成し遂げた大柄であり、筋骨たくましい肉体を有する巨漢で頭に布を巻いたタイの魚人であるフィッシャータイガーを頭に仰ぎながらジンベエ達、複数の魚人たちと共に『タイヨウの海賊団』として活動していた。
そして世界政府と戦いつつも不殺を貫いた。しかし、ある日、奴隷であった人間の少女を彼女の生まれ住んでいた島に返した時、海軍に通報されてしまっており、罠に嵌められ窮地に追いやられたのだ。
決死の奮闘で海軍から船を一隻、奪って瀕死の重傷を負ったフィッシャータイガーを救出した。
そして、流れ過ぎている血をなんとかしようと輸血を決め多賀、タイガーの血液型は特殊であり、他の魚人の中には彼と同じ血液型の者がいなかった。しかし、海軍船にストックされていた血の中には輸血できる物があった。
魚人と人間の血は同じで混ぜても問題無いのである。
だが……。
『入れるなぁっ、そんな血で生き長らえたくはねぇ』
フィッシャータイガーは人間の血を拒否した。
そうして語り出したのだ。自分はマリージョアで数年、奴隷として虐げられていた事を……だからこそ、人間の血で生きる事は出来ないと。
とはいえ、魚人と人間の因縁を変えられるのは何も知らない世代だと言い、魚人島には自分達に起きた悲劇、人間たちへの怒りを伝えるなと告げたのだ。
魚人を奴隷扱いしない心優しい人間たちがいる事をフィッシャータイガーは理解しており、死んで消えゆく者達が恨みだけこの世に残すのは滑稽とだけ叫ぶ。
しかし、フィッシャータイガーは理解はしていても、もう心は人間を憎んでいて愛せないと涙を流して叫んだ。
そうして、フィッシャータイガーは死んだ。その後、彼は魚人の怒りと称して人間への復讐を誓った。
そして彼は『タイヨウの海賊団』に入る前、魚人島にいる子供たちに対して人間の事についてあることを告げていて、その場面が映りもする。
最後にフィッシャータイガーが現れ、魚人島の場面を指差す。
「っ、タイの大アニキっ!!」
そうして、アーロンは牢の中で起き上がった。
「お前ら、俺にはやらなきゃならねえことがあるようだ。タイの大アニキが夢に出てきたんだよ」
「何をやるんだ。協力するぜ」
そうして、ある日……アーロンは牢から他の魚人たちと共に脱走し、海の底に姿を消したのであった……。