『シロップタウン』に一軒、街の雰囲気にそぐわない程に立派な豪邸が建てられている。
この屋敷の使用人であるクラハドールに扮していた『クロネコ海賊団』のクロを彼が島に密かに待機させていた部下もそうだが、無力化して捕らえたルフィはこの屋敷の主であるカヤに事情を説明しに行った。
「まさか、クラハドールがそんな……」
両親を亡くした事による精神的な衰弱により、部屋の中で寝たきり生活を送っている金髪で華奢な身体をした少女であるカヤはルフィから彼が海軍の関係者だと海軍が正式に認めた者に発行する身分証を見せられた事で信用し、話を聞かされるとショックを受けた。
「気持ちは察するよ。でもこれは現実で事実だ」
「……はい。ルフィさん、私や村を助けていただきありがとうございます」
「偶然、旅の途中に寄っただけとはいえ悪事を阻止できて良かったよ」
そうして、ルフィが仲間と旅をしている最中でこれから、海軍に連絡して身柄を引き渡すために待つ事とその時間的な都合で今日はこの町で宿泊する事を聞けば……。
「では、この屋敷に泊まっていってください。部屋はいくらでもありますし、それに色々と旅の話を聞きたいので……」
「それじゃあ、ご好意に甘えさせてもらう」
ルフィはカヤの話を受けると捕らえたクロを村人に見つからないように屋敷から『クロネコ海賊団』の者が船を停泊させていた沖まで行く。
事前に海軍には連絡していて、ウタたちも待機させている。
そうして、今日はカヤの屋敷で宿泊できることを言い、海軍が引き取りに来るまでルフィとゾロは沖で待機、ウタは町の中で路上ライブ的なものをするため、ナミは食料など必需品の調達のためにやはり、町を歩くことになった。
そして、沖での待機中に……。
「お、お前らいったい何者だ。この町に何しに来たんだっ!!」
黒いカーリーヘアーの長髪であり、長い鼻の少年ことウソップが声をかけてきた。
ルフィは海軍の関係者だという事とこの村を襲おうとしていた海賊を捕らえた事を言えば……。
「そ、そうか……俺たちの村を助けてくれてありがとよ」
ウソップはルフィ達に感謝の意を伝えた。
「旅の途中の偶然みたいなもんだけどな……ところでお前、ヤソップの息子だろ?」
ルフィはまだ、フーシャ村を拠点に活動していた『赤髪海賊団』と交流していた時、事あるごとにヤソップがルフィとウタに自分には二人と同い年くらいの息子が居る事を言ってきた事を思い出す。
『悲しい別れだったが、仕方が無かった。理由は一つ、海賊旗が俺を呼んでいたからだっ!!』
『でも、病で伏せがちな奥さんと幼い息子を置いていったんだろ。海賊としては立派でも、父親としては駄目じゃん。俺だったらぶん殴るね』
酒に酔いながら誇らしく言うヤソップにルフィはそう、きっぱり言う。因みに今もそうだが、ルフィは旅の最中に自分を物心つくときにはガープに預けた『革命軍』のリーダーであるドラゴンと出会えたら、一発はぶん殴る事を決めていた。
『ごばあああああっ!?』
『直球は止めてやってぇぇぇっ!?』
ヤソップはルフィの断言により、倒れ伏してしまい、シャンクスたちはルフィにオブラートに包んでやるよう頼むという一幕があったりした。
ともかく、ルフィからヤソップが『赤髪海賊団』の一員として元気にやっている事を知ると……。
「そうか、やっぱり親父は凄い海賊なんだな。俺も親父みたいに……なぁ、旅は楽しいか?」
「少なくとも悪いものじゃない」
「ああ、やってみれば意外とな」
そう、ルフィにゾロ、ウソップは歳が近い男同士の話をして、交流を深めるのであった……。
2
海軍へと『クロネコ海賊団』の身柄を引き渡し終えた後、カヤの屋敷へと部屋を借りて宿泊しているルフィにウタ、ゾロにナミ……食事や風呂などを済ませてルフィはウタがナミと共にカヤと所謂、『女子会』をしているそれが終わるのを待っていた。
「ただいま」
「おかえり、『女子会』とやらは楽しかったか?」
「うん、最高だったよ」
ルフィの言葉に楽し気な笑顔を浮かべ、答えるウタ。
「それはなによりだ」
ウタを抱き寄せながら、口づけするとベッドに横になりながら戯れる。宿でないし、人の家なので流石に深い交流は出来ないがそれでも一緒に軽く触れあうだけでも十分である。
そうして、共に寝て翌朝、朝食を済ませたルフィ達は『ウタさんやナミさんたちが頑張っているんだから、私も頑張ります』と部屋から見送ろうとするカヤと共に船を停泊させている沖へと行けば……。
「うおおお!?」
坂から転がり落ちてくるウソップの姿を見る。ルフィとゾロの話を聞いて旅に出る事にし、大荷物を持ったは良いが、結局転がる羽目になってしまったのだ。
「よっと」
「あ、わ、悪い」
ルフィは片手でウソップを止めてやった。
「ウソップさんっ……貴方も旅に?」
「カヤっ!? 屋敷から出て大丈夫なのか?」
ウソップは元気づけるために何度か屋敷に密かに行き、嘘とはいえ冒険譚を聞かせていたカヤが屋敷から出ている事に驚く。
「ええ、私もいつまでも寝たきりじゃダメだって思いましたから……ウソップさん、いつも元気づけてくれてありがとうございました。旅、頑張ってくださいね」
「お、おう。今度この村に来るときは嘘よりずっと嘘みてえな冒険譚を聞かせてやるよ」
「うん、楽しみにしてます」
因みにこの微笑ましいカヤとウソップのやり取りにウタとナミはにやにやしていた。
「良し、それじゃあ……」
「それじゃあ、行くか兄弟。大冒険の旅に……」
一人で旅立とうとしたウソップにルフィはそう、微笑みながら声をかけた。要は誘ったのだ。
「……行ってやってもいいけど、俺が兄貴だよな、ルフィ?」
ウソップは冒険するために海賊をしようとしたが、そもそも冒険出来れば何でも良いし、集団の方が心強いし、昨日、話す中で好感を抱いたルフィから誘われたのもあって喜びながら応じる。
「馬鹿言え、兄貴は俺だ」
こうして、ルフィの旅にウソップが加わったのだった……。
バラティエでの話は色々時系列を弄るので、出てこないキャラも居ます。