魚人島における王族の一人で人魚の姫であるしらほしは厄介な状況にあった。
彼女に求婚をし、断られた『バンダー・デッケン九世』が自分が喰らった悪魔の実で『超人系――マトマトの実』の能力を使った。
その能力は触れた相手を『的』にする事が出来、距離がどれだけ離れていても何かを投げれば、『的』となった対象を投擲物は当たるまで追尾するというもの。
これにより、どこにいてもしらほしはその身を狙われるようになり、周囲にいる者は巻き込まれてしまうため、『硬殻塔』で十年もの間、インドア生活をするしかなかった。
一歩も部屋から出るわけにはいかないのだ。そして、バンダー・デッケンは執拗にいろんな物を投擲してきたのだ。
その事をルフィは聞くとしらほしが行きたい場所に行き、帰るまでの護衛を務める事にした。無論、ネプチューン王の立場としてルフィ一人だけでしらほしと一緒に行く事を許せないのも理解しているのでルフィとは別に護衛を務める精鋭の兵士たちと移動する事にした。
しかし、普通の移動は目立つので困ったが、ウタの力でしらほしをルフィと同じくらいの大きさに変化させ、可愛らしい服装も着せた状態にする。
『マトマトの実』の能力の性質では姿を変えても服装を変えても意味は無い。他の魚人や人魚たちの注目などを避けるためだ。
こうしてメガロに乗って、ルフィとしらほしは移動する。周囲には精鋭の兵士たちも控えていた。
ただし、傍にいては重要人物がいると明かすようなものなので兵士たちの衣装は動きやすい服とかそういう物だが、流石に武器は携帯していた。
「久しぶりの外の様子はどうですか、しらほし姫?」
「はい、とっても良いです……ウタ様のお力で小さくされてるのもあって、視野も広いのもありますが」
後ろにいるしらほしに外の様子を聞けば、彼女は嬉しそうに周囲の様子を見て、言った。
「おーい、ルフィちーん!!」
『サンゴが丘』という場所にある町より、声をかける女性――ケイミーであった。
「ケイミー。久しぶりだな」
ルフィはしらほしに断るとメガロにケイミーの元まで降りてもらった。
「うん、久しぶり。それにしても確か、竜宮城で『麦わら旅団』が歓迎されてるって聞いたけどどうして此処に?」
「まあ、ちょっと頼み事をされてな……あまり深く聞かないでくれると助かる」
「なら聞かないよ。後で『人魚の入り江』っていう場所に来てね。知り合いにルフィちんたちの事を紹介したいし」
「分かった。そうするよ……『お、おいなんだあれはっ!?』やっぱり、ごまかせないか」
「きょ、巨大サンゴが降って来たし、誰か乗ってるーっ!!」
ケイミーと話をしていると何かが近づいてくるのを感知し、魚人たちも又、空から飛んでくる物体を確認する。
「バホホホ、良く分からんが俺と愛し合うために姿を小さくしたんだな、愛してるぜ、しらほしーっ!!」
巨大サンゴの上にはネコザメの魚人の男で帽子を被り、外套も羽織った『フライング海賊団』の船長であるバンダー・デッケン九世がいたのであった……。