それはルフィが十歳となり、ガープの意向によって海軍本部が置かれている島、マリンフォードにある海兵教育機関に通い始めた時の話。
因みにルフィは十五歳まで教育機関に通っていたのだが、その際はシャンクスの娘であるウタを連れていくのは不味いのでその日々の際は夏休みや冬休みなどの時にウタの居るフーシャ村に戻っていた。
ともかく、教育機関に通うルフィは中将ガープの実の孫という立場をいたずらに振り翳すのは性に合わないし、人からそうした色眼鏡で見られたくないのでガープの孫だというのは隠したうえで勉強、実技において全力で励み、常に自分が属しているクラスでトップを取っていた。
人付き合いも自分なりに良好な関係を築こうと励んだのだが、結局のところ……出る杭を打とうとする者は現れる。
「お前、調子に乗ってるなぁ」
ルフィを気に入らないと考える者たちが徒党を組み、彼を痛い目に合わせようと人目に付かない場所まで呼び出すと威嚇した。
「……」
しかし、ルフィは彼らのやっている事に対して『本当にこんな物語みたいな事、あるんだなぁ』とか『海兵になろうとする者がこんな事するとかある意味、凄い』とか考え、呆れるのみである。
「おい、聞いてんのか」
「無視してんじゃねえぞ」
全く自分を気にも留めていないルフィの態度に更に苛立つ者たち。
「いや聞いてるし、無視はしてない。だが、はっきり言わせてもらうと俺にとって、あんたたちの事なんかどうでも良いんだ」
ルフィは尚、彼らに対して無関心な態度で本心を言い……。
「流石に暴力を振るわれるのは困るから、対処させてもらうけどな。だから考えてた」
「この状況で何を考えるってんだよ」
「対処法以外に何かあるとでも? 今から、あんたたちを適当にあしらうか……それとも今後、あんたたちのような奴が出ないように見せしめとして肉体的にも精神的にもとことん痛めつけるか、それを此処に呼び出されてからずっと考えてるのさ」
『っ!?』
突如、ルフィから放たれた尋常じゃない威圧感に怯む者たち……。
「もっともどっちを選ぶにしても大なり小なり、痛い目に遭ってもらうけどな。だが、それをしたところで俺にとっては何の益にもならないし、そんな事で目立ちたくも無いんだよ」
ルフィは両手を上げ、首を振りながら告げる。
「だから忠告しておく、辞めるなら今だ。ここまでやった時点であんたたちは引っ込みがつかないんだろうけどな。選ぶのはあんたたちだ……まずは考えろ」
『……』
ルフィの言葉に彼を痛い目に遭わせようとした者たちは戸惑い……。
「そこの人たち、待ちなさいっ!!」
『っ!?』
そうして偶々、この状況を見たルフィの四歳年上で先輩のたしぎが彼らに対して声を上げ、彼らは一目散に逃げ出した。
「間に合って良かった、怪我は無いですよね?」
「ええ、大丈夫ですよ。助けていただいてありがとうございます……っ!?」
心配そうに言いつつ、体にも軽く触れてルフィの様子を探るたしぎにルフィは礼を言うと、いきなり抱き締められた。
「酷い目に遭わなくて本当に良かった……」
「……」
たしぎはそのまま、ルフィの背中を摩りながら抱き締め、ルフィは年上の女性から与えられる温もりに戸惑う。
こうして度々、ルフィはたしぎが正式に海兵となる前、海兵となった後も度々、姉のように接され、実の弟のように可愛がられたりする事になる。
ルフィはそんな彼女の接し方自体に照れや羞恥心、むず痒さを感じるので彼女が苦手なのだ。
そうして……。
「ふふ、それにしても凄いですね。旅に出た途端、大活躍するなんて」
「あ、ありがとうございます」
現在、海軍本部曹長であるたしぎはルフィに『ローグタウン』で再会すると丁度、昼食を取りに行くところだったとルフィにウタ、ナミの三人を誘ってカフェへと向かい、昼食を共にしながら会話をする。
そうして、大活躍のご褒美代わりだと彼女はルフィとウタとナミの昼食の代金も受け持ち……
「今日は会えて本当に嬉しかったです。では、良い旅を……ルフィ君」
「はい、奢っていただきありがとうございます。たしぎ先輩」
そうして、彼女は海兵としての仕事である巡回を再開するために先にこの場を去っていき、ルフィは手を振り、声をかけて彼女を見送った。
すると……。
「ねぇ、ルフィ……どうして言ってくれなかったの?」
「ほんと、ほんと」
ウタがルフィの帽子を取ると、ナミと共に頭を撫で始める。
「急になんだよ」
「照れなくて良いって……お姉ちゃんがたっぷり、可愛がってあげるから」
「だから、気の済むまで甘えてくれて良いのよ」
戸惑うルフィに更にウタとナミはまるで弟を可愛がる姉のような態度で接し始める。
因みにウタはルフィより二歳年上であり、ナミもルフィより一歳年上だ。
「本当に勘弁してくれ」
ルフィは割と本気でウタとナミに懇願する。
「おお、随分とモテモテだなルフィ。ウタ以外にもう一人、居るなんて意外だが……」
そんなルフィに投げかけられる声……その声の持ち主は短い金髪の上に鍔元にゴーグルをかけた伯爵帽を被っている男。
『っ、サボォォォッ!!』
その男を見たルフィとウタはとても嬉しそうに名前を呼びながら、とても嬉しそうな表情を浮かべて抱き着く。
「ああ、久しぶりだなルフィ、ウタ」
サボと呼ばれた男性も又、ルフィとウタの二人からの抱き着きを受け止めながら、嬉しそうな表情を浮かべ、嬉しそうな声を出しながらやはり抱き締めたのだった……。
2
ルフィとウタが再会を喜んだサボという男――ルフィにとっては三歳年上、ウタにとっては二歳年上の兄というべき存在で更にサボの親友でルフィとウタにとってはやはり、兄のような存在もいるがともかく、ルフィとウタの二人がサボに出会ったのはシャンクスたち、『赤髪海賊団』がフーシャ村を去って少し経過したある日。
「クソガキども、調子に乗りやがってぇッ!!」
フーシャ村近くにあるコルボ山で当時十歳のサボと同じく十歳の彼の親友を追いかける男たち。その男たちは『ブルージャム海賊団』の手の物であった。
「まずいぞ、やべぇ奴らに手を出しちまった」
サボたちは大人に頼らず、自分たちの手で生きるため更には今後、海賊として生きるための資金を稼ぐための活動をしていたのだが、今回盗んだ相手は本物の海賊であり、しかもバレてしまった。
だから、必死で逃げていると……。
『ぐああああッ!!』
突如、地も空も関係なしに超速で駆け跳ねる影がサボたちを追う者たちへ突撃し、そして打ち倒していく。
「よう」
それはルフィであり、『ブルージャム海賊団』がこの辺りで悪事を働いていると聞いたので修行がてら討伐するためにこの場へと現れた。
「お、おう」
こうして、サボたちはルフィと彼を通じてウタと関わるようになり、まるで家族のように親しい関係を築いたのである。
ともかく、『ローグタウン』にて再会……というよりは新聞でルフィとウタの活躍を知り、再会しようと此処で待っていたサボはルフィに会わせたい人がいると人目に付かない路地裏のような場所まで案内した。
すると……
「初めましてだな……随分と大きくなっているな、息子よ」
フードを被って待っていた者がフードを取って黒い長髪に顔の左側に紋様のようなタトゥーがある素顔を晒した。
「紹介するよ。彼こそ『革命軍』のリーダーで俺のボス、そしてルフィ、お前の実の父親のモンキー・Ⅾ・ドラゴンだ」
「えっ、ルフィのお父さんがあの『世界最悪の犯罪者』のドラゴンっ!?」
「サボ、海賊じゃなくて革命軍になったのっ!?」
サボが告げた事にナミとウタは驚き……。
「あんたが俺の……親父……」
「ああ、そうだ。本当はこうして会う気は無く見送るだけにしようとしたが、サボがどうしても会えとうるさくてな」
「ルフィの方だって会いたがっていましたから……」
凝視するルフィにドラゴンは苦笑し、彼の言う事にサボも苦笑する。
そして……。
「ああ、ずっと会いたかったんだ親父……」
ルフィはドラゴンに対して嬉しそうな笑みを浮かべると右拳を握りしめ、『武装色の覇気』を纏う。
「お、おい……って、サボ。何をするっ!?」
これにドラゴンは流石に動揺すると更にサボに後ろから羽交い絞めにされた。
「すみませんが、これは俺の大事な弟であるルフィが願っている事なので」
サボは申し訳なさそうに言いつつ、羽交い絞めにする力を更に増し……。
「ああ、こうして会えたからには一発、ぶん殴らせてもらう」
拳を構えながら更に『覇王色の覇気』を纏わせ……。
「いくぞ、親父ぃぃぃぃぃぃっ!!」
「せめて覇気は止めろぉぉぉぉぉぉっ!?」
突撃してくるルフィに悲鳴を上げるドラゴン。
結果としてルフィは纏った覇気を消し、普通の状態のままに全力でドラゴンの顔面をぶん殴ったのであった……。