二十七話
この世界の『海』は二つある。それは海を二つに両断している『
『偉大なる航路』はこの『赤い土の大陸』に対して直角に世界を一周する航路となる。
この『偉大なる航路』に入るための方法の一つ、主に海賊たちがやるやり方としては『東西南北』の四つの海流が『赤い土の大陸』にあるリヴァース・マウンテンへと運河をかけ登って頂上でぶつかっている。
そうして、ぶつかった海流はリヴァース・マウンテンの頂上から『偉大なる航路』へと流れだすのでその流れに乗るのである。
因みに海軍がやるやり方としては偉大なる航路を挟む二本の海域、無風の海域である『
このやり方は基本的に海軍でしかできない。何故なら『凪の帯』は大型の海王類の巣であるからだ。
海軍の軍艦には底の方に『
また、『偉大なる航路』を航海するためには特殊なコンパスで磁気を記録できる『
偉大なる航路にある島々は鉱物を多く含むが故、航路全域に磁気異常を発生させていて通常のコンパスは機能しない。
また、海流と風には恒常性が無いので島と島が引き合う磁気を『記録指針』に記憶させ、次の島への進路にするのだ。
更に一度記憶させた島の磁力を失わず、永久にその島への進路を示す『
当然であるが、ルフィはフーシャ村からの旅立ちの時にはこの『記録指針』を送られているし、いざというときにマリージョアへの『永久指針』も渡されている。
ともかくルフィは今回、あくまで海軍の関係者でしかないために海賊たちが使うやり方、リヴァース・マウンテンの運河を通るやり方を行い、頂上から下っていると……。
「ブオオオオ(待ってたよ、早く来てー)」
「(随分とでかいやつがいるな)」
姿はまだ見えないが、『見聞色の覇気』で下った先に巨大な生物が誰かを待っている様子なのをルフィは感知した。
そして……。
「ブオオオオ(そんな、また違うよー)」
『鯨ぁぁぁぁぁッ!?』
下った先に超巨大な鯨が咆哮を上げる姿を目にし、ルフィ以外の者たちが驚く。そのままではぶつかるので横へと逸れつつ……。
「ブオオン(うわあぁぁん、くそおおおッ)」
鯨の頭部に夥しい数の傷跡、内心は凄まじい激情にかられ始めたのを見て……。
「ウタ、あの鯨に穏やかになれる歌を聴かせてやってくれ……俺は落ち着かせておく」
「え、うん。分かった」
ルフィはウタに指示をすると……。
「落ち着けぇっ!!」
「!?」
『覇王色の覇気』を鯨に集中させて放って鯨を威圧すると一旦、鯨は咆哮を止めて此方を見た。ルフィは次に彼の頭部へと飛び乗る。
「悪いな、お前の待っている奴らじゃなくて……だが、暴れたって何にもならないぞ。だから、とりあえず落ち着け。な?」
『見聞色の覇気』で鯨の内心から記憶と鯨の全てを深く感知しながら、頭を撫でつつ語り掛ける。
「ブオオ(あ、歌……)」
「そうだ、俺の自慢の歌姫の歌だ。とりあえず、聴いてろラブーン。音楽は好きだろ」
「ブオオオオ……」
鯨はウタの歌声に反応し、それによって鯨が回想した記憶から鯨は音楽活動を主とする海賊団と行動を共にしていて、ラブーンという名前がある事をルフィは知った。
そうして、ウタによる歌が終わると……。
「どうだ、良い歌だったろラブーン。『記録指針』の記録が溜まるまで時間はあるし、少し遊んでやるよ」
「ブオオオオ(やったあああ)」
ラブーンはルフィの言葉に喜びの咆哮を上げた。
「おい、お前たちっ!!」
するとラブーンが居るこの『偉大なる海』の入り口、双子岬の灯台守をしている額から頭頂部まで禿げ上がった白い長髪、頭の周りに花びらのようなものが生えていて、顎鬚を蓄え、鋭い目に丸眼鏡をかけた老人だが屈強そうな体つきの男が小舟で近づき、ルフィ達に叫ぶ。
「ありがとう、ラブーンを落ち着かせてくれて」
クロッカスはルフィ達に頭を下げ、そうして彼らが『偉大なる航路』へと向かうための『記録』が溜まるまで、岬へと客人として出迎えるのだった……。
二
現在、双子岬でルフィと楽しそうに遊んでいるラブーンだが、そんな彼の元へと密かに近づく二人組が居た。
「おいミス・ウェンズデー。珍しく、穏やかだなあの鯨……」
「そうね、Mr.9。狩りやすくて良いわ」
いかだに乗ってラブーンの様子を窺っているのは王冠を被った王子風の見た目をした男と青い髪を後ろで束ねた露出性の高い恰好をした女性の二人組はとある組織のエージェントである。
「ラブーンは飼い鯨みたいなもんだから、狩るのは止めろ」
『はい、そうですかって……どええええええっ!?』
二人組の気配を感知して素早く近づいたルフィからの声に答えながらもそもそもルフィがいつの間にか、居る事に驚いた。
「な、なな……何者だ、お前っ!?」
「俺はモンキー・Ⅾ・ルフィ。海軍の協力者で旅団をやっている者だ」
Mr.9からの問いに懐から海軍関係者の身分証を出しながら、名乗る。
「な、海軍の関係者が何で此処に……」
「……」
Mr.9は驚いているが、対してミス・ウェンズデーの方は何やら、希望を見つけた表情を浮かべた。
「……まずは静かにするか」
二人の全てを『見聞色の覇気』によって探るとルフィはまず、『覇王色の覇気』をMr.9にだけ浴びせて気絶させると次に姿を消し……。
「よう、随分と珍しい組み合わせだな」
『っ(えええええええ、人間が空を飛んだぁぁ)!?』
Mr.9とミス・ウェンズデーの二人組の様子を上空から窺っていた全身ずっぽりと収まる衣服を着て、サングラスをかけたラッコとラッコを乗せているのは頭にヘルメット、目には同じくサングラスをかけたハゲタカの元へと姿を現し、『月歩』で浮きながら声をかけるとラッコとハゲタカは驚愕のあまり、瞳を飛び出させ、サングラスを割った。
「俺は動物好きでな、このままお前たちがさっきまでの事を何も無かったことにして、忘れてくれるなら見逃してやるよ。そうしないなら、珍味の食材として調理するけどな……さあ、どっちを選ぶ?」
『……(何もありませんでした)』
ルフィから軽く『覇王色の覇気』を浴びせられ、逆らえば本当に食べられてしまう事を悟ったラッコとハゲタカはお互いの顔を見合わせると頷き、そして素早く去っていった。
「さて……では改めて自己紹介を……俺は海軍の協力者でガープ中将の孫のモンキー・Ⅾ・ルフィ。貴方の力にならせてくれ、アラバスタ王国王女、ネフェルタリ・ビビ様」
「っ!?」
ミス・ウェンズデーとして活動していた女性、その正体はアラバスタ王国の王女であるネフェルタリ・ビビは自分の正体を見破り、今は王族に対しての礼儀を行うルフィに驚愕するのであった……。
どっかの鰐が台パンしたくなるような状況が生まれました。