麦わら旅団 冒険記   作:自堕落無力

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三十話

 

 午後七時頃――『偉大なる航路』にあるサボテン島の町、『ウィスキーピーク』。

 

 クロコダイルに対し、Mr.5として振る舞うという一芝居をして、クロコダイルが抹殺指令を出していたアラバスタ王国のビビ王女と護衛隊長のイガラムが死亡したという事を信じさせた。

 

 その後に組織内で唯一、クロコダイルとの接触が許されている重要幹部のミス・オールサンデーとの接触はあったものの、町内へと戻るとビビと供に待機しているウタ達に合図を出して、此処へと上陸させながら負傷していたイガラムとカルーの治療をする。

 

「イガラム、カルーっ!! 大丈夫っ!?」

 

「ええ、間一髪のところでそこのルフィ君に助けていただきました」

 

「クエー」

 

 ビビはイガラムとカルーへと近づくと声をかけ、イガラムは微笑んで抱き締め合い、カルーはビビに頭を撫でられた。

 

「……で、今日から仲間になるラキとアンだ。皆、よろしくしてやってくれ」

 

 ルフィは仲間たちに軽く今までの説明をすると仲間になった元『アンラッキーズ』のラッコのMr.13、改めラキとハゲタカのミス・フライデー改め、アンを紹介する。

 

 この二匹は形から入るタイプなのかサングラスを取って、つぶらな両瞳を明らかにした。

 

 ラキ達はクロコダイルからそれなりに使われていたようで『アラバスタ王国』の『永久指針』を持っているし、更にアンに関しては鳥類の帰巣本能のようなものでクロコダイルの居るアラバスタの拠点まで飛んでいく事が出来るとの事だ。

 

 因みにラキの特技は精巧な似顔絵を描く事が出来る事である。

 

 そうして後はミス・マンデーたちの処遇だが『バロックワークス』では任務失敗者には死という結果しかなく、自分たちの事が知られれば間違いなく殺されるので『ウィスキーピーク』でしばらく身を潜めていると皆が言った。

 

 ルフィにとっても流石に百人はいる構成員を全員、連行させるのは難しいし海軍側に『バロックワークス』のスパイやらが居るリスクを考えれば協力してもらう方が良いので後からセンゴクに要請する少数部隊への協力、そしてイガラムに残ってもらい彼への協力をするなら今回は不問にするという事にした。

 

「どのみち、あんたたちを殺したら辞めるつもりだったからね……友達を殺さずに済んでよかったよ」

 

 ミス・マンデーはどこか安堵したような表情を浮かべて言い、他の者たちも長年行動を共にしていたからか同じように仲間を殺さずに済んでよかったという表情を浮かべた。

 

「ミス・マンデー……皆」

 

 ビビもイガラムも微笑みを浮かべ……

 

「いやぁ……何が何だか分からんがミス・ウェンズデーが王女だったなんてな。い、今までの非礼をお許しください」

 

「ば、馬鹿なことは止めてよMr.9」

 

 唯一、寝かされていたMr.9は事情を知るとビビに畏まった態度を取ったが、ビビに諫められる。彼は特にビビとはコンビを組んでいたのもあって、彼女を殺すくらいならばとやはり、協力を約束してくれた。

 

 ともかく、そうして後はこのままアラバスタへと直行するのではなく、ビビ王女とイガラムが死んだ事でクロコダイルが本格的に動き出すのを待つため、ルフィ達『麦わら旅団』はあえて『記録指針』を使って、航海する事に決める。

 

 無論、Mr.5として潜入するための電伝虫へクロコダイルが連絡してきたときはルフィはラキが持つアラバスタへの『永久指針』を使うし、ビビもアラバスタへの『永久指針』を持っているのでルフィが離れてもやはり、アラバスタへと向かえる。

 

 そして、航海の道中においてあまりにも『記録指針』に記録が溜まるのが遅い場合はやはり、アラバスタへの『永久指針』を使う事に決めている。

 

 イガラムは後で来る海軍の少数部隊と共にアラバスタに来る事になったのだ。

 

 

 

 

 

 そうして、ルフィは次の航路への『記録』が溜まる夜明け前にセンゴクへとMr.5として潜るために本物のMr.5とミス・バレンタインを殺した事まで含めて報告する。

 

『……そうか。気分はどうだ、ルフィ君?』

 

 センゴクは心配しながらの声を出す。

 

 ルフィは今まで、殺さずに済むならば殺さない方針であったために今回、初めて悪人とはいえ、人を殺したのだ。

 

 人の死を見る事と実際に殺す事は精神へ受ける衝撃が全然、違う。

 

「思っていたよりはなんとも……銃を使ったというのもあるんでしょうけどね」

 

 センゴクへと本心を語りながら、Mr.5とミス・バレンタインを殺す際に使ったリボルバーを眺めながら言う。

 

 

 ルフィは今日、自分がやるべきだと覚悟を決めて、命を奪った。

 

 その判断において後悔も反省も何も無い。そんな事は命を奪う事に対して正当な価値を与える事にはならないし、免罪符にもならないからだ。

 

 命というものに貴賤は無く、殺人というものは相手が悪人であれど、罪だ。

 

 その事を無視や妥協や許容してしまえば人として駄目になってしまう。

 

 少なくともルフィはそう考えている。

 

 だからこそ、二つもの命を奪ったそれを忘れないためにルフィはリボルバーを持ち歩くことに決め、これからも必要な時は使う事を決めている。

 

 

 

 

「それでも確かに俺は今日、二人の命を奪った。だから絶対にこの罪を忘れず、胸に刻んでおきます」

 

 命を奪った者としてその全てを背負って、生きるとルフィは言った。

 

『……ああ、そうするべきだ。では、又、何かあれば連絡をしてくれ』

 

 ルフィの覚悟を決めた誓いを聞くとセンゴクは後は何も言うまいとそれだけを言って、通話を切る。

 

「ルフィ……」

 

「こういうとこだけは、不器用なのね」

 

 そして、ルフィの隣で全てを聞いていたウタとナミは何も言わず、しかし率先して抱え込んでいく不器用な彼を少しでも癒すべく、それぞれ手を握り締め寄り添ったのであった……。

 

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