『偉大なる航路』の海域にある『冬島』に建国された数か月前までは『ドラム王国』と呼ばれた国。
彼にとっては生まれ故郷であり、王であったこの国へと帰り、再び王として返り咲こうとしたワポルと彼の側近であったチェスとクロマーリモはルフィの手によって死亡した。
「……おい、ルフィ。次からやるんだったら俺にも言え。元々、俺は賞金稼ぎやっていたから、手をかけるのには抵抗は無いんだ」
自分一人でワポルとチェスとクロマーリモを殺したルフィにゾロは真剣な表情で注意するように言った。
「まったく、本当にお前は何でも一人で抱えるんだな……そいつは悪い癖だ。早く直せよ。それに俺だっていざという時の覚悟はあるんだからな」
「分かった、すまないな。ゾロ、サンジ」
ゾロに続いてサンジも注意し、それに込められた意思も含めてルフィは感謝しながら頭を下げた。
「ルフィ君、何から何まで本当にありがとう。私が本来、しなければならない事まで……」
次にドルトンがルフィへと近づき、縁もゆかりもまったく無いのにこの国を救うために協力し、救ってくれたルフィに礼を言う。
しかも救うだけじゃなく、本来ならばワポルたちを殺すのは自分のやるべき事なのにそれまで引き受けたのだから、盛大な感謝の念と申し訳なさまであった。
「気にしなくて良い。それに前国王であったワポルの父に忠誠を尽くしていたあんただ。その息子であるワポルがどれだけ屑であろうと、手をかけるのはどうしても気が引けるし、手をかけた後は引きずるだろう。だが、俺は塵屑を殺すのには何の抵抗もないからやった。それだけだ」
「ルフィ君……」
ドルトンは何でも無い事のように言うが、実際は覚悟を決めて罪を背負った罪人のような雰囲気を纏っているルフィに衝撃を受けた。
「それと後でワポルの事を聞かせてくれ、何も最初からこんな塵屑じゃなかったんだろう。殺した者の責任として、知っておきたいからな」
「……分かった……ルフィ君、本当に君は凄い男だ」
「賞賛は受け取らせてもらうが、買い被りすぎだ」
ドルトンの賞賛にそう言いながら、ワポルたちの死体を見て何とも言えない表情を浮かべているチョッパーの方へと向かう。
「悪かったな、チョッパー。人を救う医者であるお前の前で人を『殺害』しちまってよ」
「いや、良いよ。別に……ドクターの仇だし、なによりワポル達は殺されて当然の奴らだ」
「違うぞ、チョッパー。例え悪党であっても殺されて当然、死んで当然の奴なんていない。貴重な命を奪う事を必要としちゃいけないし、正当な事にしてはいけないんだよ。本来は」
「……」
強く自分を戒めるように言うルフィにチョッパーは彼の高貴ささえ感じさせる雰囲気に衝撃を受けた。
「なぁ、お前からすれば嫌だろうが、こいつらの遺体を城の大地に埋葬させてくれないか? 俺の我儘でしかないが、それぐらいの手向けはしてやりたいんだ。頼む」
「……うん、良いよ。ルフィ……お前って優しいな」
「優しいやつは悪人を殺したりしないし、許すさ。だが、俺は自分の欲のままに平穏に生きようとする善良な者たち、何の罪も無い者たちを甚振ったり、貪ったりする塵屑を許すことは無理でな」
「……」
悪人であったワポル達に慈悲を見せるルフィに言ったチョッパーだが、次の言葉に彼の覚悟とやはり、精神の強さを感じてチョッパーはなんて誇り高い男なんだろうとルフィに対して思ったのだった。
そして……。
「皆、聞いてくれ。ワポル達はこの国へと帰ってきたが俺が殺した。だから、もうこれ以上、あんたたちの平穏をこいつらに脅かされる必要は無いから安心してくれ」
ワポル達の死体を取りに行かせた人を覆える袋で隠し、それを大きなソリに乗せてロブソンによって運びながら、ルフィは村人たちへと告げる。
『……おおおおっ!!』
ワポルの悪逆に苦しめられていた者たちはルフィの言葉に安堵し、喜び、そしてルフィに感謝を述べ、英雄扱いまでする。
そうしたものを受け取りながら、城まで行き、片隅にワポルたちの遺体を埋めて埋葬した。
「まさか、ワポル達がくたばる事になるなんてねぇ……親父さんとは知り合いだったが、これでようやくあの世にいるあいつも安心できるだろう。ヒルルクの仇を討ってくれた事も含めて礼を言っておくよ」
「……本当なら、礼を言われるような事じゃないけどな……人を殺す事が救いになるなんて事はあってはいけないんだ」
「……」
「……」
改めて自分が殺したという事実を背負うためにワポル達の墓標を見るルフィにくれはは酒を飲みながら、声をかけ、ウタとナミは彼に寄り添いながら、彼の手をそれぞれ握りしめる。
「あんたはドルトンより、生真面目だねぇ」
「戒めているだけだよ。人の命を奪った事に対して何の抵抗ももたないようになったら本当に終わりだからな」
「それはそうだ……だが、一つだけ言わせてもらう。少なくともあんたの行動はあんたが納得しないにしても間違いじゃないし、正しい事だよ。それだけの事をあの馬鹿たちはやらかしたからね」
「どうも」
くれははルフィに言葉をかけると去り、ルフィは彼女の背に対して礼をした。その後は城で借りている部屋に三人で行ったのだが……。
『Mr.5.時が来た。今から、アラバスタに来い』
ルフィが殺して成り代わっているMr.5とミス・バレンタインが持っていた電伝虫から彼らのボスであるMr.0……つまりはクロコダイルより連絡が入った。
ルフィは『了解』と告げると先にアラバスタへ自分が行く事を、決めていた手筈通りの事をすると皆へと告げる。
『麦わら旅団』の行動方針としてはルフィがMr.5としてクロコダイルたちの元へと潜入して撃破し、ビビたちは内乱を起こしている王国軍と反乱軍を説得し、平和的に終わらせる事が目的だ。
その際、ウタの力は大きく役立つので彼女もビビの元に残し……ドラム王国を出発する準備を始めた。
使う船はワポル達が海賊として使っていたブリキング号である。
「ルフィ、行ってらっしゃい」
「後でまた会いましょう」
見送りながら、ウタとナミはルフィへと口づけし……。
「ルフィさん……どうか、気をつけて」
「ああ、お前の方こそなビビ。それとこれを預かっておいてくれ」
近づき、心配そうであり、申し訳なさそうに声をかけてきたビビに言いながら、麦わら帽子を被せて預かるよう、頼む。
「俺の大事なもんなんだ。後で返してもらうから、頼んだぞ」
「はい、絶対に大事にしますから」
ビビが笑みを浮かべて言うとルフィも笑みを返し、そうしてラキとアンと共にドラム王国を出発した。
その少し後ウタたちも出発する準備をしていたが……必死な形相で……事前に包丁を投げつけられた事でソリに荷物を載せて逃げてきたチョッパーを加えて旅立った。
「うおおおおおっ!!」
見送るように放たれた上空に咲く大きな桜色の光にチョッパーは泣きながら、咆哮を上げる。
そうしてこの後、『ドラム王国』だった国は海賊旗のような国旗を掲げる『サクラ王国』という名の国へと新しく建国されるのだった……。
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