アラバスタ王国のとある場所に存在するカフェ兼酒場の『スパイダーズカフェ』にはもう一つの役割がある。それは秘密犯罪組織の『バロックワークス本社』であり、エージェントたちの集会所である事だ。
そして、バロックワークスの中でもトップのMr.0とミス・オールサンデーを除いた最上級幹部の『オフィサーエージェント』に今夜八時、『スパイダーズカフェ』への招集がかけられたのだが……。
「Mr.5にミス・バレンタイン、Mr.2の三人ものエージェントが来ないなんてね……」
八時近くとなっている夜中、『スパイダーズカフェ』の店主であるポーラとしての顔を持つ女性、パーマのかかったセミロングの青髪と官能的な厚い唇、魅力的、誘惑的な体を蜘蛛の巣をイメージしたボンテージ衣装で包んでいるミス・ダブルフィンガーが三人ものエージェントが未だに現れない事に対して不穏なものを感じながら、言う。
因みに彼女は体のいたるところから鋭い棘を出すことが出来る『トゲトゲの実』を食べた能力者である。
「……どうやら、妙な事になったようだな」
彼女に答えるのは相棒である男で丸刈りの頭、繋がり眉毛、筋骨逞しい肉体であり、その胸の中央には『壱』という字の刺青が彫られている。
彼はMr.1であり、あらゆる部位を刃物に変える事が出来る上に鉄の硬度を有することが出来る『スパスパの実』を食べた能力者だ。
「どのみち、今はボスの元に行くしかないガネ」
頭の上で髪を『3』の形に結い、眼鏡をかけているのもあって理知的なものを思わせる風貌の男であるMr.3。
彼は体のいたるところから蝋を取り出し、自在に操ることが出来る『ドルドルの実』を食べた能力者である。
「凄く働かされそうだなぁ……」
Mr.3の相棒であるりんごほっぺと三つ編みのおさげ、16才という年齢にしてはスレンダーな体型が特徴的な少女で画家の衣装を着たミス・ゴールデンウィークが本当に嫌そうに呟いた。
彼女は悪魔の実を食べていないが感情の色すら絵具でリアルに表現できるほどの絵の才能を持っていて、それによって相手に暗示をかける技が使える。
「ともかく行くよ、さぁ行くよっ」
せっかちな性格もあって超早口で喋るのは丸々とした体型に短い足、寸胴体型で目元にはサングラス、首にはクリスマスツリーを思わせるネクタイをている女性。
彼女はミス・メリークリスマスでありモグラに変身できる『モグモグの実』を食べた能力者である。
「……」
のんびりとした様子でミス・メリークリスマスの隣にいるのはでっぷりとした寸胴体型の巨漢であるMr.4であり、彼も又、ミス・ゴールデンウィークと同じく能力者ではなく、超怪力で銃以外に四トンのバットを得物としていて、名バッターの実力も持っている。
そして、彼が背負う巨大な銃は特殊な技術でダックスフントに変身できる『イヌイヌの実 モデルダックスフント』を食べさせた事でダックスフントとして、自立行動も出来るし、口から野球のボールの見た目の爆弾(時限式)を吐き出すことが出来る。
名前はラッスーだが、普段から風邪気味だ。
ともかく、三人の仲間が集まらなかった事に不穏なものを感じながらもMr.0が待つという町、『レインベース』に行こうとしていた一同だが……。
「お前たちの仲間であるMr.5にミス・バレンタイン、Mr.2が来ないのは俺が倒したからだ」
『!?』
それまで、気配も何も感じさせずに現れ、声をかけたルフィに驚き、一斉に一同はルフィを見る。
ルフィはMr.2にはウタたちを待って、内乱を鎮めるのに協力するように頼むとセンゴクに連絡して、『スパイダーズカフェ』近くで待機させるように頼み、自分も待機しながら全員が出揃うのを待ち、揃ったので倒すために姿を現したのだ。
因みにセンゴクに連絡した際、何故かガープとセンゴクの同期で中将であり、大参謀の通り名を有するつるが連絡に応じたのでルフィは混乱した。
つる曰く、『二人とも良い歳なのに馬鹿をやらかしたんだよ』との事だが……。
「そして今、お前たちも倒すと宣言しよう。せめて後悔の無いように全力で掛かって来い」
『生命帰還――
ルフィが宣言すると同時にルフィの全身の筋肉が膨張し、その上で圧縮されて引き締まる。
膨張と圧縮、矛盾した概念を有する事で各段に身体能力と身体強度を強化した肉体を顕現させたのである。
「こうも堂々と挑んでくるとはな……」
「ふふ、熱い男は嫌いじゃないんだけど……」
「何の策も無しとは、馬鹿な奴だガネ」
「やるしかないか……」
「さぁ行くよ、Mr.4」
「はぁーーーーい」
凄まじい戦意を放ちながらのルフィからの宣言、彼がとんでもない者だと裏社会での今までの活動から確信し、全員が全力で排除しようと動いたが……。
「はあっ!!」
ルフィは超越的な武威を込めた手足による打撃の絶技により、一同の抵抗を全て捩じ伏せながら全員を宣言通りに打ち倒した。
そんな中で……。
「(参ったぜ……俺も前はなろうとしたんだがな)」
Mr.1ことダズ・ボーネスはルフィにより、倒されて意識を失っていく中で想う。
元は西の海で『殺し屋ダズ』という異名で知られた賞金稼ぎであった彼だが実は彼の理想は悪を倒し、善を救う『ヒーロー』であり、『英雄』であった。
しかし、『大海賊時代』であるこの世界ではヒーローの道を進むのは容易ではなく、それに『スパスパ』の実を食べた事で人に手を差し伸べる事も出来なくなった。
『ヒーロー』を諦め、今では秘密犯罪組織のエージェントとかつての理想とは真逆の道を進んだ彼だが、そんな彼はルフィが隠しもせずに戦意と共に放っている『救うために倒す』というその意思を感じ、更には色んな人物を見てきた経験から彼が本物のヒーローになりうる人物である事を確信した。
「お……お前こそが本物だ……」
皮肉にもヒーローに倒される側になった事を自嘲しつつ、薄れゆく意識の中でルフィの姿を目に焼き付けながら、ルフィをヒーローだと認めながらそのままで在って欲しいという願いも込めながら言った。
「それで人を助けられるのなら、良いだろう」
『見聞色の覇気』でダズの気持ちを感知しながら、ルフィは頷いて告げる。
「……」
ダズは満足げな表情を浮かべて意識を失ったのだった……。