麦わら旅団 冒険記   作:自堕落無力

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五十三話

 

 

 今から数年前の出来事だがそれでも彼ら、彼女達にとってその日の出来事は今でも一つの誤りも無く、思い出せるしその度に感動と喜びは甦る。

 

 その日、『北の海』にある裕福な町、『ノーティス』での生活が退屈となっていった事で海賊として活動し始めていた『ベラミー海賊団』はジャヤにある無法地帯の町が『モックタウン』で出会えたのだ。

 

『なぁ、あんたがドンキホーテ海賊団のドンキホーテ・ドフラミンゴなんだよな?』

 

 『……だったら、なんだ?』

 

 政府に唯一認められた海賊の集団たる『王下七武海』に長く君臨していられるほどの海賊、『ドンキホーテ海賊団』を率いるドンキホーテ・ドフラミンゴに……。

 

 そして、『ドンキホーテ海賊団』は『北の海』出身の海賊団であり、よってベラミーたちにとっては誇りそのもので更に言えば憧れの海賊団であった。

 

『……良いだろう、『シンボル』なら貸してやるよ。ただし、()()()()()()()()()しろ』

 

 そうして話の末に『ベラミー海賊団』は『ドンキホーテ海賊団』の傘下になる事が出来、憧れてきた海賊団の力になる事が出来るようになったのである。

 

 だからこそ、その日は人生一番の喜びだったし幸福だったし、感動……ともかく心が躍った。

 

 そして、無論『ドンキホーテ海賊団』の傘下の中で一番となるべく、やってきた。

 

 一度でも負ければ傘下からは外される条件だが、だからこそやりがいもあったのだ。

 

 

『(あの人が負けを許さねえってんなら、負けるかよ……)』

 

 

 ベラミーは仲間たちの誰よりも一番、ドフラミンゴに憧れていたし、自らの『忠誠心』を彼なりに捧げてもいた。

 

 だが、そんな彼は今、彼の仲間たちと共に目の前に立ちはだかった者――『麦わら旅団』の団長であるルフィにその身を切り刻まれ……。

 

『っ!?』

 

 ルフィが鞘を鳴らした瞬間、意識を取り戻しながらも尻もちを着き、激しい動悸やら冷や汗やらを感じながら周囲も自分の体も確認をする。

 

「安心しろ、剣気を叩きつけただからその身には傷一つも付いていないし、血も流れていない。今の俺は酔っているから、力加減を間違えるかもしれない。だから、このまま退け、見逃してやる」

 

 

 ルフィは事実を告げた。実際、彼は自らの鞘から刀を抜く動作と同時に斬るという気配、剣気を放ってベラミーたちの心身に『斬殺』されたと強く錯覚させたのだ。

 

 

『……う、うあああ……』

 

 そして、ルフィの言葉を聞きながら『ベラミー海賊団』の者たちは声なき声を出しながら、怯える。

 

 圧倒的な力量差を体験したのもあるし、ルフィの剣気に精神を切り刻まれたからというのもある。

 

 しかし……。

 

 

「……ふ、ふざけるな。見逃すだと……舐めるのも大概にしやがれぇぇぇぇっ!!」

 

 ベラミーは意識を取り戻すと怯えもなにかも自らの意志に火を付け、炎として燃やす事で焼き尽くす。

 

 勝負すらせずに逃げるなど、ドフラミンゴの傘下として一生の恥であるしそれ以前に失格だ。

 

 無論、勝負で負ける事も同様……。

 

「勝負だ、『麦わら旅団』っ!!」

 

 ベラミーは叫びながらその身を深く深く、沈ませていく。すると両脚が変形していった。

 

 彼は『バネバネの実』の能力者であり、故にその体はバネになる。

 

 押し込めれば押し込める程に開放したときの瞬発力は高まっていくのだ。

 

 

「……良いだろう、受けて立つ」

 

 ルフィはベラミーの意志に応えて自然体で構える。

 

「いくぞぉっ、スプリング狙撃(スナイプ)!!」

 

 先程、剣気をぶつけられたのもあり、ベラミーはルフィが静かに佇んでいるのに重大なプレッシャーを感じながらも自らの意思を燃やして全力の一撃を解き放つ。

 

 バネと化し、押し込めた両脚のそれを解放、凄まじい速さで弾丸が如くルフィへと向かうと彼へ拳の一撃を放つ。

 

 それに対し、ルフィは動かないままで……。

 

 

「……ちくしょう、届きすらしねぇのか……」

 

 ベラミーはルフィの顔面に拳を炸裂させても彼に傷も、血の一滴も更にはその場から動かす事すら出来なかった。

 

 己の不甲斐なさに呟きを漏らす。

 

 

「だが、俺にとってはお前との戦いは誇るべきものだ」

 

「っ!!」

 

 ルフィはそう、ベラミーへと呼びかけると……。

 

 

「があっ……」

 

 容赦なく、拳槌によってベラミーを叩き伏せた。ベラミーは意識を失いながらも……。

 

「(俺もお前と戦えて……)」

 

 二度と抱く筈の無い憧れをルフィに対し、抱いたのだった……。

 

 

 

 

 

「おい、今すぐ遠くへ逃げろ……こうなった以上、お前らの親分であるドフラミンゴはお前らに制裁を加えようと動くぞ。海賊団は面子という物を大事にするからな」

 

「っ、なんでそれを……!?」

 

 ルフィはベラミーたちと会った時から『見聞色の覇気』で見抜いた彼らの内情を口に出し、ベラミーをサーキースたちの方へと放り投げる。

 

「良いから、しばらくは隠れていろ……ドフラミンゴに殺されたくなければな」

 

「っ、い、行くぞっ!!」

 

 そうして、サーキースはベラミーを抱えながら仲間たちと共に船に乗り、去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、と……」

 

『……』

 

 ルフィは見送り終えると振り返ったところでその場には彼の考えを呼んでいたかのようにウタたちが控えており……。

 

「皆、行きがけの駄賃を払いに行くぞ」

 

 そうして、ルフィ達『麦わら旅団』は移動を始め……。

 

 

『あ、何だお前らは?』

 

『麦わら旅団』

 

 

 今日も変わらず、嘲りの声を上げていたモックタウンに『麦わら旅団』は現れ……。

 

「この町を掃除させてもらう」

 

 ルフィはリボルバーと刀を抜きながら告げ……そうして、『モックタウン』を根城にしていた海賊にならず者たちは打ち倒される。

 

 

 

 

 

 

 

「ウィッハッハッ!! 船長、良いのかよ。こんな夜中に出航なんて」

 

「ゼハハハハ!! ああ、厄介な奴が来そうな気がしたからな。こういう時の勘は当たりやがる」

 

 『麦わら旅団』が来る前に出航していたとある海賊団を除いて……。

 

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