麦わら旅団 冒険記   作:自堕落無力

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五十六話

 

 結論から言って、この世界の空には『空島』というものはある。もっとも正確に言うならば、島というよりは国であるが……。

 

ともかく、『青海』という空島のものたちからすれば雲下の世界より上空一万mの『白々海』には『神の国 スカイピア』がある。

 

 ルフィ達麦わら旅団はその『白々海』より七千m程下の『白海』に辿り着いたのだ。

 

 そして、滅多な方法では『青海』から『空島』には行けない。

 

 『空島』に行く方法としてはルフィ達がやったように『突き上げる海流』を利用する事。

 

「なんとッ!! お主ら、あのバケモノ海流に乗って此処へ……まさか、まだそんな度胸の持ち主が……シャンディアの戦士を倒した実力も含めて賞賛に値する」

 

 ルフィ達へと襲い掛かった襲撃者の魔の手から守るつもりで現れた空の騎士であり、元は神であったガンフォールはルフィ達が『突き上げる海流』によって此処へとやってきたことに驚いた。

 

「……その口ぶり、『突き上げる海流』を使わなくてもここへ来る方法があるんだな」

 

 

「ああ、ハイウエストの頂から島を一つ二つ使うルートはある」

 

 ルフィはガンフォールの口ぶりに少し驚きながら、質問をすればガンフォールは頷き答えた。

 

「……皆、すまなかったッ!!」

 

 ルフィは一度、仲間たちの方へと向き直り深呼吸すると土下座で謝った。

 

 

『い、いやいや……』

 

 ルフィが謝った事と自分たちの状況では『突き上げる海流』を使うというルートしか無かった事をふまえて皆は苦笑して許した。

 

「ハイウエストのルートでは例えば百人で空を目指したとして、何人かが到達する。何人かが生き残るそういう賭けになり、『突き上げる海流』では全員死ぬか、全員到達するかだ。0か100の賭けに挑める者たちはそうはおらん。個人的には気に入ったぞ」

 

「ありがとう。それじゃあ、そろそろ『スカイピア』の話を聞かせてくれ。そこで寝ている者、シャンディアの事もな」

 

 ルフィは先ほど、自分たちへと襲い掛かりルフィが無力化した事で気絶し、今は縛られつつ、ウタの力によってリラックスさせられながら眠っている者を見ながら言う。

 

 仮面を外せば男であり、前髪を刈り上げ、後ろ髪を結っている部族的な風貌であった。

 

「ああ、良いだろう」

 

 そうしてガンフォールはルフィの求めに応じて『空島』の状況について語り始めた……。

 

 

 

 二

 

 

 それはとある部族においては四百年もの昔の話、ジャヤという島には『シャンドラ』という黄金郷があり、部族たちはそれを外敵者から守ってきた。

 

 しかし、シャンドラでは『樹熱』という疫病が流行っており、何の医学も持っていなかった部族たちはカシ神という大蛇に生贄を捧げるというやり方で難を逃れようとした。

 

 更に言えばその生贄はシャンディアの大戦士ことカルガラの娘でもあった。しかし、娘が生贄として食われようとしたところで待ったをかけたのが北の海からの探検船提督でシャンドラへとやって来たノーランド。

 

『お前たちの古い戒律こそ悪霊じゃないのか!! そんなに神が怖いのかッ!!』

 

 余所者であるからと昔からの風習をやり遂げようとしていたカルガラに対し、ノーランドは命をも懸けた説得を行い……。

 

『本当にお前は俺の大切な村を救ってくれるのかッ!? 村は救えるのかッ!!』

 

 『救えるっ!!』

 

 ノーランドの説得は伝わり、そうして彼の知識を元に樹熱の治療は行われ、シャンディアの人々は救われた。

 

 そうして、ノーランドとカルガラは友情を育んだが……『樹熱』の感染源となっていたのはシャンディアの人にとっては過去数百年の魂が形を成したと言われる『身縒木』という宿り木。

 

 それを伐採した事でノーランドたちは島を去らざるを得なくなった。しかしてそうした誤解は別れの日に船員からカルガラの娘を通して伝わり……。

 

『鐘を鳴らして君を待つ!!』

 

 カルガラはシャンドラを去るノーランドたちへシャンドラの鐘を鳴り響かせながら、再会の約束をした。

 

 そうして鐘を鳴らす事はシャンディア達の使命になったが……状況の変化というのは一瞬だ。

 

 黄金郷シャンドラのある場所一帯が『突き上げる海流』に乗って『白々海』にまで到達してしまった。

 

 そして、『スカイピア』の者たちは雲しかない故に『大地(ヴァース)』に強い憧れを持っていたのもあってシャンドラへと向かい、そこに居たシャンディア達を排除しようと争い合う。

 

 

 

 

『シャンドラの灯をともせェっ!!』

 

 そう叫びながらカルガラ達シャンディアは空気が非常に薄い事による大不調の中、戦い抜き敗れ生き残りたちはシャンドラより逃げ、奪還を誓いながらスカイピアの者たちと紛争を繰り広げるようになったのである。

 

「(いつか、俺が……)」

 

 シャンドラを取り戻し、カルガラが願ったノーランドへ鐘を鳴らすという誓いであり、使命を果たす事を生涯の目的としたシャンディアが一人いた。

 

「おはよう、シャンディアの戦士ワイパー……俺は『麦わら旅団』の船長、モンキー・Ⅾ・ルフィだ」

 

「何故、俺の事を……それにこれはお前の仕業か……」

 

 ワイパーはルフィが自分の名前を知っていた事と不思議な異空間であり、何故か動けず、しかも穏やかな精神状態である事について問いかける。

 

 「ああ、話というのは落ち着いてやるものだからな……まず俺たちが『空島』にやってきたのは『冒険』するためだ」

 

「それはなんとも呑気だな」

 

「海での冒険はそう、呑気じゃないぞ……ともかく、此処へと来るためにある一人に出会ったよ。お前たちは知っているだろう、ノーランドの末裔にな。これは知っているかどうかは分からないがシャンドラがスカイピアまで上がった事で国の王と共に再度、やってきたノーランドは嘘つき呼ばわりされて処刑された。しかもその一族も嘘つきという汚名を抱える事になったんだ。だが、ノーランドの末裔、モンブラン・クリケットはシャンドラが海に沈んだと信じて、体を壊すのも厭わず、無理な潜り方で探し続けたんだ」

 

「……」

 

「そして、知りようが無い限りまだまだクリケットさんは無理な潜水を続けるだろう。だから、一つ約束したんだ。もし、空島に黄金郷があれば鐘を鳴らして知らせると。それが人情ってもんだろう?」

 

「……人情か……(こいつも俺と同じ……)」

 

 ルフィのしっかりとした意思の籠った言葉を受け取りながら、ワイパーは呟く。

 

 

 

「ああ、だから提案だ。お前たちがシャンドラを取り戻すのを手伝わせてくれないか。俺たちを利用するつもりでも良いし、お前の命を奪わなかったという借りの返しという事でも良い。信用についてはこれからの俺たちの態度を見てもらうしか無いが……」

 

「……鐘を鳴らすのは俺だ。そればかりは譲らない」

 

 そうして、ワイパーはそれだけを告げた。

 

「分かった。じゃあ、一先ずは交渉成立で良いな?」

 

「ああ、だが握手はしない」

 

 ワイパーは息を吐きながらも差し出してルフィの手を取らずに言った。

 

 

「それは残念。良し、ウタ話は終わったぞ」

 

『はぁい』

 

 ルフィが告げれば彼とワイパーの意識をウタワールドへと招いた音楽の王が現れ、手を振るうと空間は歪み……。

 

 

 

「戻れたか」

 

「ああ、戻したぞ」

 

 ルフィとワイパーは話を終え、笛を鳴らせば一度だけ無料で力になると言ってウマウマの実の能力で珍妙なペガサスと化したピエールと共に去ったため、ガンフォールの居ない船の甲板にて意識を取り戻して立ち上がる。

 

 既にワイパーの拘束は解いていた。

 

 

 

「さて、後は……」

 

 そうして、ルフィは船首の方へと行き……深呼吸すると……。

 

「神エネルーッ!! 俺たちは必ず、お前からシャンドラを取り戻し、お前の支配からスカイピアの人々を解放する。この挑戦、受けて立つかぁぁぁぁっ!!」

 

 実は周囲に微弱な電流のようなものがこの『白海』にも漂っており、ルフィはその電流から自分たちを監視する意思を感じており、それがガンフォールから神の座を奪い、現在のスカイピアを恐怖をも持って、支配しているエネルという者へ挑戦を叩きつけた。

 

 瞬間、神の裁きともいうべく雷がルフィへ降り注ぎ……。

 

豪咲(ゴウショウ)!!」

 

 ルフィは『花州』による凄まじき居合の一閃が鞘から咲き放たれ、雷を切断した。

 

 

 

『……ハ、ハハハ……ヤハハハハハハッ!! 面白い、面白い青海人がやってきたものだ。良いだろう、お前の挑戦受けて立ってやるぞ』

 

 自分の放った雷を切断した事に驚愕しながら、神エネルは笑いながら、挑戦を受け入れたのであった……。

 

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