≪魔王視点≫
翌日、執務室で積み上げられた仕事をみて溜息をついているとリースに呼び止められた。
「魔王様。少しお聞きしたい事がるのですが」
「なんだ?珍しいな」
「えー。戦争についてはどのような方針で進めていくのでしょうか?これまで、勝つための動きを重視していたような気がするのですが」
リースが疑問に思うのも当然で、これまで私は過去を思い出しながら、悪い手を避け、良い成果をあげた指示ばかりしていた。お陰で以前よりかは優勢となっている。
「確かに、私の目的は戦争を終わらせることだ。しかし、それは魔族の為だ。人類なんてどうでもいいとまではいかなくても、私にとっては優先度は低い。故に、私は勇者との作戦が開始できるまでは、魔族の犠牲が少なくなるようにしている」
「畏まりました。それでは、どちらかというと守備を重視すると?」
当然攻めるよりかは守る方が被害が少ない。だからこその意見だろう。
「そうだな。そうしていくつもりだ。その方が人類の被害も少なく、魔族と人類の関係改善に繋がるかも知れないからな」
「では、最後に。もし圧倒的に有利な状況になり、攻めれば滅ぼせるという状況であれば、どうなさいますか?」
いつになく真剣な顔で、リースは言う。
「…攻めない」
「承知しました。お時間をとらせてしまい申し訳ありません。私はこれにて失礼します」
リースが出て行ったのを確認してから、私は書類に手を付けた。
≪勇者視点≫
「おいリュア。寝るなよ」
「う~。でも~」
あの後あんまり眠れなかったのか、目を擦りながらリュアは教室へと移動する。
「今日は、俺はまた二刀流かな」
「私は打撃武器のやつだよ~。またね~!」
ぱっと消えたリュアを見送ってから俺も教室へと向かった。
「おはよう」
「やあおはよう」
教室の扉を開けると、先に教室へと来ていたニアとレイトが挨拶をしてきた。
二ヶ月も経てば、一人や二人は友達も出来ると言うもので、ニアとレイトは同じく二刀流を学ぶ仲間だ。二人とも剣の扱いは上手いが、レイトは特に上手い。レイトよりも圧倒的に高い身体能力を最大限活かしても、技術でいなされてしまう程だ。
「おはよう。レイト!今日は負けないからな!」
「ふふ。いいよ。全力で相手をしよう」
「待って。私が先。ライガ、倒す」
「っしゃあこいやぁ!」
いつものやり取りを終えて、先生を待つ。
数分経って、先生が血相を変えて扉を開けた。
「済まない皆!今月の実戦は私達のクラスが担当になってしまった!」
クラスが、ざわついた。