「さてっと」
魔獣がいなくなり、みゅーちゃんはこちらへと振り返った。
「待ってくれてありがとうね!お礼に、何か知りたいことあったら教えてあげる!」
みゅーちゃんは、ニコニコと質問を待っている。先に口を開いたのは魔王だった。
「何故こんなことをする?」
「こんなことって?」
「何故人類と魔族を殺したのか聞いているのだ!」
笑顔を崩さないみゅーちゃんに、魔王は怒りを募らせる。
「えー?そんなの決まってるよ。生き残るためだね!」
「生き残りたいなら戦う必要なんてないだろう。森の隅で うずくまっていれば寿命まで容易に生き残れるはずだ」
「種としてだよ?魔獣さんが生き残るには、人類も魔族も敵!完全に手を組まれる前にできる限り数を減らさないと、本当に滅ぼされちゃう!」
芝居がかった口調で答えたみゅーちゃんは答えた。
次に口を開いたのは、勇者。
「君と俺が最初に出会った時、君は魔獣に襲われていて、助けを呼んでいた。あれは何だったんだ…?」
勇者は、狼に囲まれ、殺意を向けられているみゅーちゃんを見ていた。それが、魔獣の長であり、勇者と魔王に勝るとも劣らない力を持つと、誰が想像できるだろうか。
「だって、おかしかったもん」
「へ?」
「勇者はあそこには来ないはずだった。あのまま、あの冒険者を始末して、未来の英雄の誕生を防げるはずだった。それに、勇者と魔王が手を組むのも。人類と魔族の戦争が終われば、次に敵として狙われるのは私達魔獣。それだけは何としても防がないと。防げなくても、それまでに人類と魔族の勢力をなんとしてでも削らないと行けなかった」
突如として、まくし立てるようにみゅーちゃんは話しはじめる。
「だからね!狼さん達に犠牲になってもらって、人の世界に入り込んだの!勇者に連れられたのなら、誰も不信に思わないしね!」
そこで、勇者はある可能性に気付いた。
「まっ、まって!みゅーちゃんのいた孤児院は?」
「…。そろそろ終わりだね!最後に一つ良いこと教えてあげる!」
「質問に答えるんじゃなかったのか?」
「…。私達は、私達同士で殺し会っちゃダメ!そんなことをしたら、世界が滅んじゃからね!」
そう言い残して、みゅーちゃんは去って行った。
残された魔王と勇者は、それぞれ、みゅーちゃんの事について考えていた。頭が整理できたのか、魔王が口を開く。
「私は城に戻るとしよう。勇者よ。覚悟して戻れ」
「は?それってどういう…」
言い終わる前に、魔王は転移で帰ってしまった。
「帰るか…」
勇者は仲間の安全を祈りながら、一度、王都に帰ることにした。