この世界の結末は?   作:ありくい

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最後の戦いが近づいて

 

「どうする?」

 

「決まってる。やり直しなんてしない。できるはずも無い。お前もだろ?」

 

「そうだな」

 

もしやり直したとして、それはこの世界に生きるすべてを見捨てることになる。リースを、リュアを、仲間を大切にする彼らにとって、それは許容しがたい物であり、何なら一度やり直しが発動してしまった事に、ひどく心を痛めていた。

 

「魔王。俺は、いや、俺達は死ねない。向こうが俺達を殺しに来る事も無いだろうけど、俺達が殺しに行くことは出来ない」

 

「そうだな。つまり、私達がやるべき事は獣王の足止め。余裕が生まれれば、どちらか片方が、魔獣を殲滅する。これをベースに作戦を練る必要があるな」

 

「つまり、」

 

「人類魔族全体の力をあげないといけない」

 

魔王と勇者は目を合わせ、互いに使命を果たすため動き出した。

 

 

 

≪みゅーちゃん視点≫

行ける。私はそう確信した。

 

唯一の負け筋となる勇者と魔王は、きっと私にご執心になるだろう。それが狙いだし、ここまで上手く行ったのははじめてだ。

 

「集まって!」

  

ワラワラとそこら中から魔獣が集まる。それは、これまでの魔獣を知るものには想像も出来ない光景だった。軍隊のようにきれいに並び、ただただ、主人の言葉に耳を傾ける。

 

ああ、ここまで何回世界は崩壊したのだろうか。私が覚えていない時にも、滅んでいたのかも知れない。まあなんにせよ、遂に私の努力が報われるのだ。

 

 

 

 

 

 

私が自我を持ったとき、世界は崩壊を始めていた。原因は、私に突き刺さった一本の剣。

 

剣を刺した存在は歓声をあげて、私の周りにいた獣はすべて死に絶えている。そして、大きな揺れを感じながら、私の意識は途絶えていった。

 

そして、次に目を開けた時、私の周りには何もなかった。さっきまで何かを言っていた人も、動かなかった獣も、突き刺さっていた剣も。私は立ち上がって、ただただ歩き始めた。

 

何日も、何日も何日も何日も。体が怠くなっても、空腹を体が訴えても、歩けたから歩き続けた。そうして、また死んだ。

 

数多の世界を渡り歩いて、色々な経験をして、言語を、魔獣を、人間を、魔族を知った。そして、世界について理解した時、ずっと私を助けてくれた魔獣達に、恩返しをしようと思った。

 

私達魔獣は、だいたい殺される。理由は単純、邪魔だからだ。戦争するにしても、平和にいくとしても、結局、私達は彼らの敵だ。そりゃあ私達にとっても敵だが、それは私達の住家を荒らしたり、家族を殺したりするからだ。あいつらの言葉でいう正当防衛なのだから仕方ないだろう。

 

奴等が私達にしたように、私は奴等をどんな手段を使っても滅ぼして、未来永劫、魔獣が平和な世界を作らないといけない。そのために、人に紛れて魔族の偉い人を殺して、戦争へと誘導したり、時には同族を手に掛けたり色々した。そして─────

 

 

 

遂に、予想通りとは行かなかったが、理想に近い盤面が作り上げられた。魔獣の数は予想より減っているが、それでも、人間と魔族の数は減り、人間と魔族の魔獣への理解は浅くなり、勇者と魔王は私を殺せずに足止めを喰らうことになる。

 

後は地力勝負だが、実力は一部の人間を除けば、魔獣が圧倒している。タイマンならまず負けないし、そのうえで弱い魔獣には集団行動を徹底させている。また、数ある世界で私達を脅かした化け物の多くは幼少期の内に殺した。

 

少し前回の襲撃から時間は空いたが、準備は整った。

 

「行くよ。皆」

 

遠吠えが上がり、森がざわめく。

 

「私達の未来のために、この世界じゃない私達の仇討ちに」

 

「彼等には死んでもらおう」

 

                                                                                                                  

 

 


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