この世界の結末は?   作:ありくい

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終わりは始まり

 

男の血肉は激しく散り、小さなクレーターを生み出す。そのうちいくつかは彼等に当たり傷を作り出したが、彼等が止まることは無かった。

 

「あー。ダメか。残念だけど。これでいいかな」

 

そうして男は声を出す。

 

「【止まれ】」

 

再び彼等の動きが止まった。男はゆっくりと彼等に近づいて、勇者の腕に手を当てた。

 

ブチッ

 

「ッッッッッッ!!!!!」

 

続いて、魔王も獣王も腕をちぎられ、血と悲鳴が荒れ地に広がる。そして最後には、足もちぎって全員がだるまになり地面に転がった。

 

「これでもう何も出来ないね。じゃあもう終わりだけど、その前に教えて欲しいことがあるんだよね。僕のこれからの仕事にも関わるし、君達は負けたんだから正直に教えてほしいな。どうせ君達は全員記憶も力も失うわけだしね。あ、そうそう。君達が記憶を持っていたのは、君達に特別な力が宿ったわけでもなんでもなく、そんな世界を見たかったからってだけだよ。だから諦めて、正直に答えて欲しいんだけど…」

 

激痛に耐えながらも、射抜くような目で見つめて来る彼等へ質問を投げかける。

 

「君達の魔剣とそっちの聖剣はどうしたんだい?」  

 

そうして、旧聖剣を指差したとき、地響きが起こった。

 

「っは?まだ報告してないのにっ!あのクソ上司が!」  

 

誰かを罵倒しながら、男は慌てたように魔法を使う。

 

「ごめんね君達。もっと早く楽にしてあげればよかったよ!」

 

男は消え去り、同時に崩壊音が響く。それもそのはず、勇者達の周りの地面が次々と崩れ落ちていく。このままでは、勇者達も地面と同じように落ちていくのだろう。

 

「魔王」

 

気力をなくした声で勇者は呟く。

 

「なんだ」

 

同じく沈んだ声で魔王は応答する。

 

「魔剣を使えるか」

 

「行ける、が、それがどうした」

 

「俺は聖剣をお前に刺す。お前は俺に魔剣を刺せ

 

「…このまま死ぬぐらいなら、自決すると言うわけか」

 

「違う」

 

「なに?」

 

「前の世界での魔剣と聖剣は、男の干渉無しに世界を超えたみたいだ。さっきの質問は、そういう事だろう。だから、こいつらに俺達の力と記憶を運んでもらう。少なくとも、そっちの魔剣は知らないけど、こっちの聖剣は物を収納出来るんだ。多分記憶とかでも行けるさ」

 

「じゃあなんだ?貴様の聖剣に私のが入り、私の魔剣にお前のが入るんだな?」

 

そう言っている間に、もうすぐそこまで崩壊は迫っている。

 

「時間が無い。行くぞ」

 

「待て。腕は無いだろう」

 

「魔力で舌でも強化すればいいだろ。いくぞ」

 

「…………く」

 

「分かった。見映えは悪いが仕方ない」

 

「わ……………く」

 

「最後の力を振り絞れ!」

 

聖剣が魔王へ、魔剣が勇者へと突き刺さる。

 

「私も着いていく!!!!!!!」

 

地面と一緒に、聖剣が刺さった魔王と、魔剣が刺さった勇者、それにしがみつく獣王が落ちていった。

 

 

 

 

 


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